2017年10月09日
全日空で24年間客室乗務員を務め
天皇皇后両陛下や国賓などの
トップViPをおもてなししてきた
里岡美津奈さん。
ここでは里岡さんが客室乗務員時代の
思い出をご紹介します。
里岡 美津奈(人材育成コンサルタント)
───────────────────
※『致知』2017年11月号
※特集「一剣を持して起つ」P22
───────────────────
国内線のチーフパーサーを務めていた入社6、7年目の時、
あるフライトで出逢ったお客様のことはいまも忘れられません。
離陸の際、チーフパーサーは全CAから安全の確認をもらって、
それをキャプテンに伝える。
そうすると、キャプテンが管制塔に離陸準備完了の合図を出し、
管制塔から許可が下りると離陸できるんですね。
だから、滑走路に着くまでにキャプテンにオッケーを出すことが、
チーフパーサーとしての離陸前の重要な使命なんです。
ところが、あるフライトで一人のCAから全然
オッケーが来ませんでした。
外を見たらもうすぐ滑走路に着くし、
キャプテンからもインターホンで催促されるので、
そのCAのもとに行ったんですよ。
そうしたら、ある夫婦連れの女性のお客様が
お人形と一緒にベルトをしているのでオッケーが出せませんと。
何度説明しても聞き入れてくれないと言うので、
どういうふうに説明したのか聞いたら、
「緊急の際に危険ですので、お人形は隣に置いてベルトをしてください」と。
私は事の顛末を聞き、お客様の様子を拝見した上で、こう話し掛けました。
「お客様、本日はご搭乗ありがとうございます。間もなく離陸いたしますので、
お子様を隣の空席に座らせて、ベルトをしてもいいですか」と。
そうしたら、その女性は「ああ、いいですよ」と言って、
普通にそのお人形を隣に置いてベルトをして、
ご自身もベルトをしてくれたんです。
大人の女性がお人形を手放さないというのは異様ですよね。
何かよほどの事情があるんだなってことは
誰が見ても分かると思います。
で、そのCAと私の違いは「お人形」と言ったか「お子様」と言ったかです。
後日、ご主人から手紙をいただきました。……