2018年11月08日
家業の紳士服店を世界的なカジュアル衣料品企業に育て上げたファーストリテイリング社長の柳井正さん。アパレルで世界第3位の企業へと躍進を遂げるにあたり、本田宗一郎とドラッカーから学んだことが大きいといいます。事業経営において、どのような影響を受けられたのでしょうか。
全員経営と世界一
(柳井)
僕が本田宗一郎さんから学んだのは「全員経営」と「世界一」。世界一になろうと想わない限り、絶対になれないということ。そしてもう一つは「挑戦」です。
それまではオートバイをつくって世界一になり、今度は四輪へなんて、普通考えないですよね。それもGMやフェラーリ、日本でもトヨタという巨人がいる中でですよ。でもそれに挑戦していく。しかもアメリカで工場をつくる。
経営者として常識的に考えたら、こいつは頭がおかしいのか、と思われるようなことを実行した。
一方ドラッカーは「自分の強みをより強くせよ」ということとともに「企業の目的は、それぞれの企業の外にある」と述べています。
その企業の商品を使っている人よりも、使っていない人のほうが多い、我々でいえば、自分たちの店に来てもらっている人よりも、来ていない人のほうが多いという、これはすごい現実だと思うんです。
だったら、あらゆる人を自分の店の顧客にする。そのためにはどうすればいいかを考えて実行する。その範囲が広ければ広いほど、世界一になれる可能性は高まっていく。
我々は世界中の服装に合うような、いわば「部品」としての服をつくりたいと考えています。その時に、やはり日本人ならではの品質への拘りや、すごく丁寧な売り方をするといったこと。
そういう、日本人にとっての強みを生かすことが一番重要だと思うんです。
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(本記事は『致知』2011年2月号を一部、抜粋したものです)
柳井正(やない・ただし)
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昭和24年山口県生まれ。早稲田大学卒。46年早稲田大学卒業後、ジャスコ入社。47年ジャスコ退社後、父親の経営する小郡商事に入社。59年カジュアルウエアの小売店「ユニクロ」第1号店を出店。同年社長就任。平成3年ファーストリテイリングに社名変更。11年東証1部上場。14年代表取締役会長兼最高経営責任者に就任。いったん社長を退くも17年再び社長復帰。著書に『成功は一日で捨て去れ』『一勝九敗』(ともに新潮文庫)『柳井正 わがドラッカー流経営論』(日本放送出版協会)などがある。