いつも笑顔、いつも感謝 【命の授業講演家・腰塚勇人さん】


「たぶん一生寝たきりか、
 車椅子の生活になるでしょう」


 首の骨を折る大怪我により、
 充実した教員生活から一転、
 人生の奈落に叩き落とされた腰塚勇人さん

 一時は自ら命を絶つことも考えた
 苦悩のどん底から見事社会復帰を果たし、
「いまが一番幸せ」と言い切る
 腰塚さんの笑顔の源とは――??




――――――――――――――――――
いつも笑顔でいよう
 いつも感謝をしよう
 周りの人々の幸せを願おう
 
     腰塚勇人(「命の授業」講演家)
 
      ※
『致知』2013年3月号

       特集「生き方」より

――――――――――――――――――

 

 

(腰塚)
 実は怪我をするまで、
 僕は競争が大好きな人間でした。
「常勝」が信条で、人に負けない
 生き方をずっと貫いていたんです。
 だから「助けて」なんて言葉は
 口が裂けても言えない性分でした。
 
 それが怪我ですべて人の手を
 借りなければならなくなりました。
 僕が一番したくない生き方でした。
 苦しいし、泣きわめきたいし、
「助けてっ!」
 って言葉が口元まで出かかって
 くるけど、プライドが邪魔して
 それを言わせない。
 ここで弱音を吐いたら、家族に
 余計に心配をかけてしまうと思うと、
 なおさら言えませんでした。
 
 皆に迷惑をかけた分、
 なんとかしたいって気持ちで
 いたんですが、そのプレッシャーや
 苦しさに押し潰されそうに
 なってしまって……
 僕はとうとう舌を噛だんです。
  
(――あぁ、自殺をしようと……。)
(腰塚)
 自分の未来に絶望感で
 いっぱいでした。
 
 本当は死にたくなんて
 なかったんです。
 でも首から下の動かない人生、
 生き方が分からず苦しかったんです。
 
 だけど結局、死に切れなかった。
 あとには生きるという
 選択肢しかなくなりました。
 じゃあ明日から前向きに
 生きられるかといったら、
 それは無理です。
 自分を押し包む苦しさがなくなった
 わけではありませんからね。
 
 次にしたことは将来を
 手放すことでした。
 自分の将来に期待するから苦しむ。
 だったらその将来を
 手放してしまえばいい。
 周りに何を言われても
 無反応になりました。
 
 そんなある晩、苦しくて
 寝つけないでいると、
 看護師さんが声をかけてくれました。
「腰塚さん、寝ないと
 体がもちませんよ。
 睡眠剤が必要だったら言ってね」
 って。
 その言葉に僕の心が
 反応しちゃったんです。
 おまえに俺の気持ちが
 分かってたまるかって、
 無意識に彼女をグッと
 睨みつけていました。
 その看護師さんは素敵な方でね、
 僕の様子にハッと気づいて
 すぐに言ってくれたんです。
「腰塚さんごめんね。
 私、腰塚さんの気持ちを
 何も考えずに、ただ自分の思った 
 ことを言ってたよね。
 でも腰塚さんには本当に
 少しでもよくなって
 もらいたいと思っているから……、
 なんでもいいから言ってほしいです。
 お願いだから何かさせてください」
 
 看護師さん、泣きながら
 そう言ってくれたんです。
 彼女が去った後、
 涙がブワッと溢れてきました。
 あぁ、この人俺の気持ちを
 分かろうとしてくれてる。
 この人にだったら俺、
「助けて」って言えるかも
 しれないって思えたんです。
  
 それまで僕は周りからずっと
「頑張れ」って励まされていました。
 僕のことを思って言って
 くれているのが分かるから
 決して言えなかったけど、
 心の中は張り裂けそうでした。
 俺、もう十分頑張っているんだよ……
 これ以上頑張れないんだよって……。
 だから救われたんです。
 
 あの時以来、凄く思うんです。
 人の放つ一言が、人生をどうにでも
 変えてしまうんだなって。
 だから自分は言葉を丁寧に使おう。
 言葉をちゃんと選んで、
 丁寧に使おうって。
・  ・  ・  ・  ・  ・
(腰塚) 
 泣くだけ泣いた次の朝、
 目が覚めるとベッドサイドに
 飾られていたお見舞いの花が
 ふっと目に入りました。
 その時思ったんです。
「せめて花みたいに
 生きることはできないかな」
 って。
 
 手足は動かないけど、
 顔は動きます。
 だったらできるだけ笑顔でいよう。
 口も動くんだから、できる限り
「ありがとう」って言おう。
 心も使えるんだから、周りの人が
 きょう一日元気に、笑顔で
 過ごせますようにと願おうって。
 
 そう決意したら、
 いろんなものがどんどん
 変わっていったんです。
 ドクターとも、看護師さんとも、
 リハビリの先生とも、凄く仲良く
 なって、毎日が楽しくって。
 首の神経が全て切れて
 いなかったのも幸いして、
 3週間後には奇跡的に車椅子に
 移ることができたんです。
  
 事故に遭ったという事実は変わり 
 ません。でも起こったことの見方、
 捉え方は変えることができるんです。
 
 そして生き方を
「常勝」から「常笑」に切り替えて、
 

 いつも笑顔でいよう、
 いつも感謝をしよう、
 周りの人々の幸せを願おう

 と決意したら、毎日の小さな幸せに

 気づけるようになったんです。

 

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