2017年11月17日
国民詩人・坂村真民の詩に魅せられ、
一万篇を超える詩に精通するお二人のみが語り得る
坂村真民の世界とは──。
西澤 孝一(坂村真民記念館管長)×横田 南嶺(臨済宗円覚寺派管長)
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※『致知』2017年12月号
※特集「遊」P20
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【横田】
全部で一万篇を超える真民詩の中で、
西澤館長が特に好んでいる詩は何ですか。
【西澤】
これはなかなか選ぶのが難しいんですけれども、
強く影響を受けていると感じるのは、
真民が昭和26年に最初に自費出版で出した
詩集『六魚庵天国』の巻頭に載っている
「六魚庵箴言(ろくぎょあんしんげん)」です。
「狭くともいい/一すじであれ/どこまでも
掘りさげてゆけ/いつも澄んで/天の一角を/見つめろ」
「貧しくとも/心はつねに高貴であれ/一輪の花にも
季節の心を知り/一片の雲にも/無辺の詩を抱き
一碗の米にも/労苦の恩を感じよう」
「いじけるな/あるがままに
おのれの道を/素直に/一途に/歩け」
【横田】
西澤館長はこの詩を『かなしみを あたためあって あるいてゆこう』の
最初に持ってきて、「詩人として生きる決意と、
自らの生き方を宣言した詩」と説明されていますね。
【西澤】
この詩はおそらく40歳頃につくったものだと思いますけど、
真民はこの言葉を亡くなるまでずっと思い続け、
そしてこの生き方を生涯貫き通しました。
そこが尊敬するところですし、
私も生き方の原点にしたいと思っています。
もう一つは、「しっかりしろしんみん」。
私自身、これから人生の晩年を歩んでいくにあたって、
いつも念頭に置いて生きていかなければと思っている詩です。
「しっかりしろ/しんみん/しっかりしろ/しんみん
しっかりしろ/しんみん/しっかりしろ/しんみん
しっかりしろ/しんみん/どこまで書いたら
気がすむか/もう夜が明けるぞ/しっかりしろ/しんみん」
これは89歳の時に書いているんですけれども、
80代後半から特に90を過ぎて以降、
詩記の中に「しっかりしろしんみん」という言葉が
毎日のように出てくるんです。
詩記は96歳で終わっているんですが、
最後の最後まで「しっかりしろしんみん」と
書かれています。これはすごい。
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