会社で~社内木鶏会のご紹介~ 社内木鶏会で、我が社はこう変わった

代表取締役会長 十河孝男

企業プロフィール

徳武産業株式会社
社長 十河孝男 様

社名/徳武産業株式会社
事業内容/ケアシューズ専門メーカー
創業/1957年
所在地/香川県さぬき市大川町富田西3007
社員数/85名

『致知』との出逢い

当社は、社内木鶏会を導入して11年になります。当社の歩みは至難の連続でしたが、険しい道のりの中で私が心の支えにしてきたのが20年前から愛読する『致知』でした。『致知』から得た学びと感動をぜひとも社員と共有したいと考えていた折、致知出版社からご紹介いただいたのが社内木鶏会でした。2018年に全国大会に出場して、自分たちの考えを会場にお集まりいただいた1,500名に熱く訴えて、大きな賛同の拍手を頂いたことを昨日のように思い出します。当初は『致知』の難しい内容を理解してもらえるだろうかという不安がありましたが、いざ始めてみるとしっかりと記事を読み込み、素晴らしい感想文を発表してくれた社員をとても誇らしく思いました。気がつけば導入から早11年。多忙な業務の合間に『致知』を読み、感想文を書くことは決して容易なことではありません。しかし難しいことに挑戦してこそ人は成長できる。私はこのことを11年の実践を通じて実感しています。

1cmでも2cmでも前へ前へ

ピータードラッガーの名著「現代の経営」のことを昨年(2021年)の「致知3月号」で知りました。このことをキッコーマン名誉会長 茂木友三郎氏が語っています。それは企業の重要な役割の一つは、人々の持っている欲求を有効需要に変える、需要を創り出すという教えであります。そこにはこう述べています。
「企業の目的として有効な定義は一つしかない。すなわち、顧客の創造である。市場は、神や自然や経済によって創造されるのではなく、企業によって創造される。(略)実際には、企業の行為が人の欲求を有効需要に変えた時、初めて顧客が生まれ市場が生まれる。」 

これを読んだ時に自分の経営者人生はこれに尽きると思いました。社長業31年、会長業7年はこの役割を果す為に神様が私に天職として日本で初めての介護シューズに挑戦させて下さったと心より感謝しています。日本の靴業界の非常識に向う見ずに次々と実行して、手痛い失敗も数多くありました。神様は、私達に多くの試練、苦難を次々と浴びせてきましたが、その度に歯を食い縛って、社員と共に、時に地を這いずりながら、1㎝でも2㎝でも、前へ、前へと進みました。そんな私達を見ていた多くの人達が、手を差し伸べてくれ、やっと 泥水から抜け出したことも、いっぱいありました。社員と共に、諦めずに、お客様に寄り添い、感謝と真心の経営を実践し続けたことが、今の徳武産業に繋がっていると思います。

徳武産業は、綿手袋縫製工場として、家内の父が、昭和32年創業しました。常に時流に合わせてイノベーションをしてきました。創業以来、5回も企業の顔を大きく変えてきた歴史があります。私が、社長就任時は学童用シューズ大手メーカーの下請け縫製が売上の95%を占めていましたが、その体制に将来性はないと判断。社内の反対を押し切ってOEMビジネスに挑戦し、67年後に旅行用スリッパ、ルームシューズは日本一のシェアを達成。
しかし、OEMビジネスは、担当者によって商品の販売戦略に大きく差がありました。

弊社の製品を気にいってくれた時、その逆の時によって業績が大きく上下することで、仕事量、売上高が安定しないことで転換を決意しました。

信念を貫き世の中になくてはならないものを作る

そんな時に、私の友人で老人施設の園長より、入居しているお年寄りが床の環境を変えても転倒すると話がありました。転倒の原因はスリッパ・サンダル・学童シューズを履いていたことによる転倒でした。その園長に私は、我が社に来る前に他で売っているだろうと聞くと、彼は、「施設に入居している高齢者用の靴を大阪や東京で足が棒になるほど探したが、どこにもない。子供靴は山ほどあるのに!!」と怒っていました。そして、是非頼むとのこと。しかも弊社は、靴の製造技術も経験もないことから相当難しいことへの挑戦でしたが、誰も手を付けてないことにやり甲斐と、OEMビジネスの、脱却のチャンスだと感じて決断しました。
そこで、当時社長の私と、専務の家内と2人でこの靴づくりをスタートすることを決め、 当時の徳武産業を支えていた事業である「旅行用スリッパ」「ルームシューズ」「ファッションポーチ」を若手社員3人に任せて、市場調査をスタートしました。お年寄りにどこが不自由で不満であるかを、連日、香川県下の介護現場に行き、床の状態や歩行している様子を見て、たくさんの入居者に話を聞き、ニーズの要約ができました。それは、「軽い」「明るい」「かかとがしっかりしている」「転倒しない」「安価」でした。その後、神戸よりベテラン技術者に指導を受けて試作を開始し、約2年間で500人のお年寄りの声に耳を傾け、試着に協力を頂きました。
また、介護の現場を見てみると、お年寄り一人ひとりの症状によって、既製品の靴ではうまくフィットしないことがありました。はれ、むくみ、病気による変形などで左右の足の大きさが違ったり、履く靴がないという足の悩みを抱えている状況を目の当りにし、転倒の原因が靴である可能性に気付きました。また、麻痺によるすり足や装具利用などにより片方の靴だけが極端に傷んでしまうなどの発見が、靴業界の常識を覆した「片方のみ」「左右サイズ違い」販売へと繋がりました。
私達は連日、老人施設を訪問し、お年寄りの状況を把握。左右サイズ違い販売の必要性を強く感じて靴職人に話をすると、猛反対されました。左右サイズ違い販売をすると1足組から片方を抜くために売れない片方だけの在庫になり、それが経営を圧迫する。「絶対やめておけ。会社がつぶれるぞ」「私は、神戸で約30年間靴会社を指導してきたが、誰もどこの靴会社もそんなことをしなかった。考えなかった。」「神戸3000社の靴会社がしていないのに、素人靴会社ができるわけがない」と強く迫られました。もっともな意見であり、反論は出来ませんでした。しかし、あのお年寄りの人達の寂しそうな顔が何度も頭をよぎりました。

動機善なりや、私心なかりしか

お年寄りの切実な願いである、左右サイズ違いを何とか実現してあげたい。
足腰の弱い高齢者の靴を作る為に左右サイズ違い、片方販売をしたい。
悩み苦しむ毎日でした。反対するベテラン技術者からOKをもらった私達は、左右サイズ違いの靴をおばあさんに届けました。早速履いてもらうと “よさそうね”。少し歩いてみて、“何年ぶりに左右ピッタリの靴を履けた。最高よ。歩くことが楽しくなりそう”と目を細めて喜んでくれました。
私達の2年余の苦しみの中から、商品が誕生しました。1995年の5月に念願のあゆみシューズが発売になりました。どれほど、この日を待ち焦がれていたか、全社員の喜びと期待に私は胸おどる心境でした。
香川県高松市の弁理士の先生に、商標・意匠・特許・実用新案等の相談、手続きをやってもらっていました。
いよいよ発売が近づいた時に、日本の業界初の左右サイズ違い販売、片方販売は日本全国靴メーカー12,000社どこもやっていない。特許申請をビジネスモデルとして申請すべきである。後から来るライバル会社の対抗策でもある。それが、ビジネスの常識であるとも言ってくれました。
私は、悩んだ末に、徳武産業だけの利益を得る利己主義ではなく、業界や利用者の為にも損得ではなく善悪判断で申請を止めました。現在競合は15社ありますが、大手数社は左右サイズ違い販売、片方販売を数年後に始め、今では介護シューズ業界の常識になっています。あの時の判断は正しかったと確信しています。

逆境が教えてくれたこと

念願の発売はしましたが、販売が伸びなくて本当に苦しみました。夜寝られない日が続きました。

そして、2年間、靴開発にトップの2人が没頭してい為に、私の管理不足によりそれまで会社を支えていた 「旅行用スリッパ」「ルームシューズ」「ファッションポーチ」の売上が大幅ダウン。その期は創業以来の大赤字に転落。銀行より借入不可で資金不足に陥りました。 暗い会社のムード、ボーナスゼロ、昇給ゼロの中、有望若手社員が会社に失望して次々と退社していきました。今も経営者として、深い後悔として今なお残っています。そんな中、売り上げが何とか目途がつき、毎日注文を頂けるようになったある日、販売した靴の靴底剥がれが発生。発売早々で信用不安につながることも覚悟して、全取引先にそのことを通知して、全商品を回収依頼。お詫びし、交換しました。すべては靴作りの経験、技術不足が原因でした。さらに、靴の中に針が入って、店の人がケガとの報告。その店のある横浜へその日のうちに飛行機に飛び乗り、社長である私自らお詫びに行きました。先方はその早さと、社長自らが来たことで誠意をくみとって頂き気持ちよく理解していただきましたが、苦い思い出です。
現在おかげ様で1日の出荷数は5,000足~6,000足。月間15万足、年間180万足を出荷しています。その中で定番商品に甲高、幅広用のワイドタイプ(5E,7E,9E,11E)、左右サイズ違い、片方のみ等特別対応アイテム は25%、困った人に毎日お届けしています。年間では約45万足にもなっています。発売以来27年間で累計販売数2,000万足ですから、特別対応は 500万足になり、お客様から喜びと感謝の声がたくさん届いていますことは、私達の大きな励みになっています。

ケアシューズを手に思いを語る十河孝男さん

あゆみシューズが叶えた10年来の夢

今から約15 年前、愛知県の安城市から、筋ジストロフィーという難病の青年が、お母さんと知人の女性と会社に来られました。

 あゆみシューズの縁で、どうしても、その青年が弊社に来たいと、強く希望したそうです。雑談をしていて、ふと車イスの彼の足元を見た時、靴下のままステップに足を置いていました。
 私は「お母さん、彼はいつから、靴を履いていないのですか?」と問いかけました。お母さんによると、「この子は、小学校低学年で筋ジストロフィーに罹り中学校では車いすに乗っていました。何度も靴専門店へ行って探しましたが、変形のひどい、この子の足に合う靴がなくて、もう10 年近く靴を履いていません」とのことで、この答えに、私は驚きました。

 私は「彼の足に合う靴を作らせてもらっていいですか?」と聞き、 お母さんの「本当に出来ますか?」という問いに、「絶対に作ります」と答えました。
 担当者を呼び、家内を中心に採寸、足の状態をチェックして、何度か足合わせをした結果、約 1 時間で靴が出来ました。 その靴を履いた彼は、満面の笑顔で、担当者と握手をしてお礼を言い、私と手を握り合った時は、彼の目から大粒の涙がこぼれていま した。「社長、ありがとう、社長、ありがとう」と、何度も言っている彼の姿を見ていたお母さんは、外へ飛び出して行き、号泣していました。落ち着いて、部屋にかえって来たお母さんは、「社長、私はこの子と一緒に、難病と闘ってきました。この子の気持ちは、すべて分かっていたと思っていました。でも、この子が靴を履いた瞬間、輝くような笑顔を見た時に、初めて気が付きました。今まで 10 年間、私と外出する時に、この子は、私には分からない、痛いほどの冷たい視線を、他人から浴びていたのですね。そんなことに気付かなかった私は、母親失格ですね。徳武産業に来て、本当に良かったです。この子は、もっと外出好きになると思います。ありがとうございました。」
 そう言ってくれました。その顔は、とても穏やかでした。それから 1 ケ月が経った頃、小包が届きました。5 冊の本、童話の本でした。「作者・本田桂吾」と書いてあり、あの青年は、その童話の作者だったのです。読んでみると、動けない自分をカタツムリになぞり、多くの物語を書いていました。そして、1 枚の絵が入っていました。「僕の履ける靴が見つかったよ」と、笑顔の桂吾君。足元には、あのあゆみシューズが輝いていました。その絵は、私達の大切な宝物として、玄関に飾っています。

『致知』が変えた社風

当社はもともと風通しのよい社風ではありましたが、異なる部門間でのコミュニケーションは必ずしも十分とはいえませんでした。しかし、社内木鶏会を通じて、部門の壁を越えてお互いを知る努力を重ねることで、会社の一体感は格段に向上しました。本社から離れて一人奮闘する営業社員もリモートで参加し、本社の社員との絆を深めてくれたことはとても有益なことでした。さらに嬉しかったのは、社内木鶏会を導入した年に入社した重度知的障碍を負った社員の成長です。自ら社内木鶏会への参加を希望した彼女は、ご家族の助けを借りながら一所懸命に『致知』を読み、見違えるほどしっかりした感想文を書けるようになりました。障碍にコンプレックスを持っていた彼女が、『致知』で自分以上に厳しい境遇の中で懸命に生きる人々の姿に目を開かれ、「自分は何て幸せなんだろう」と発表してくれた時の感動はいまも忘れられません。
会社の成長の源は、かけがえの無い社員です。その社員の位置づけを経営理念の柱にしています。徳武産業の経営理念は「全社員の物心両面の幸せを追求し実現する」としたのです。 それは、給料・ボーナス・福利厚生・社員教育を通して、働き甲斐、生き甲斐を見出し、社員が人間的成長を実感する、ということです。 経営者は、そのことを常に、最重要テーマとして、意識して真剣に行動する必要があります。売上を最大にし、経費を最小にして、社員の 3 倍働き、公私のけじめを、社員が驚くぐらいつける覚悟が必要だと思っています。 そして、社員を甘やかすことではなく、むしろ厳しいぐらいが、丁度良いと思っています。 私は、会社の力は、決算書にある財務諸表より、むしろ帳簿外にある社員力、お客様からの信頼、期待、地域の人達からの応援である と考えていて、特に社員力は最も大切だと思います。
社内木鶏会は会社の成長に不可欠な学びの場と考える当社は、コロナ禍でも感染防止に万全を期して開催を続けています。社員もこの逆境を前向きに捉え、コロナ禍が示唆するものを真剣に考えてくれており、社内木鶏会を11年続けてきた成果を実感しています。当社は今後とも「感謝と真心」を柱とする寄り添いの経営を貫き、会社の在り方として、大きくなくても良いが、小さくても時流に合った経営に変化させて、世の中に無くてはならない感動のオンリーワン企業を目指して頑張ります。


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