2026年04月30日
~本記事は月刊誌『致知』2026年6月号 特集「人間を磨く」に掲載の対談(己を磨いた分だけ人を育てることができる)の取材手記です~
己を磨いた分だけ人を育てることができる
2000年を超える歴史の風雪に耐え、リーダーたちの間で読み継がれてきた東洋古典『大学』。そこには人の上に立つ者の心得として「己を修め、人を治める」ことの重要性が説かれています。人は己を修めた分だけ、人を感化し育てることができる、ということでしょう。
ここにスポーツの世界において、それぞれ長年にわたり数々の選手やチームを育成してきた名指導者がいます。井村アーティスティックスイミングクラブ代表理事の井村雅代さんと今治.夢スポーツ会長の岡田武史さん。
井村さんは「鬼コーチ」「メダル請負人」「シンクロの母」の異名を取り、愛に溢れた厳しい指導で選手の可能性を最大限に引き出し、これまでナショナルチームのヘッドコーチとして五輪出場10回、計16個のメダルをもたらしてきました。また、2023年の世界選手権では日本の絶対的エース・乾友紀子選手のソロコーチとして二人三脚で歩み、2大会連続2冠、計4個の金メダルへと導きました。何と今年はコーチ歴53年目だといいます。
岡田さんはサッカーワールドカップで2度にわたり日本代表の指揮を執りました。1998年のフランス大会ではそれまでクラブチームの監督経験もない中、前監督の更迭により突如として抜擢され、悲願だった史上初のワールドカップ本選出場を果たし、2010年の南アフリカ大会では母国開催以外で初めてグループステージ突破、ベスト16入りを掴みました。昨年、FC今治のオーナー就任からちょうど10年の節目で、J2昇格を決めています。
共通点が多く、互いに尊敬するお二人が軽妙かつ本音で語り合った「リーダーのあり方」「チームづくりの要諦」とは。
人間学を学ぶ月刊誌『致知』2026年6月号特集「人間を磨く」に、井村さんと岡田さんの対談記事が掲載されています。タイトルは「己を磨いた分だけ人を育てることができる」。

それぞれ12年と22年の歳月にわたる愛読者
この対談を企画した発端は、井村さんと岡田さんがそれぞれ12年と22年の歳月にわたって月刊『致知』を愛読し、応援してくださっていることがきっかけです。
20年以上前から親交があり、共に結果を出し続けてきた名指導者同士に対談していただくことで、素晴らしい化学反応が生まれ、「人間を磨く」というテーマに関して学びと感動溢れるお話を賜れるのではないか。
そんな思いから双方に依頼をし、過密スケジュールの間隙を縫って、4月3日の午前9時から大阪市内のホテルで対談取材がセッティングされました。
対談取材を通して感動したことは数多くあり、すべては語り尽くせませんが、事前準備をしている時に気づき、驚嘆したのはお二人の共通点の多さです。
大阪市立住吉中学校の教師と生徒――何とこれがスポーツ界の名伯楽として知られる井村さんと岡田さんのご縁の始まりでした。共通点はそれだけに留まりません。
まず大阪出身。誕生月が8月。各々の競技を始めたのは中学生の時。日本代表を指揮したこと。中国やドイツでの指導歴。そして『致知』を長年にわたり愛読し、人間力をベースに人を育ててきた点です。
そんなお二人が豊富な経験や実績をもとに培ってきた指導哲学と流儀は、本誌対談記事でたっぷりと語られていますので、ぜひお読みいただければと思います。
ここでは本誌対談記事より、『致知』を読み続ける意義と理由について語り合っているところを抜粋します。
〈井村〉
最近は若い人はあまり本を読まないですが、『致知』は若い人こそ読むべきだと思います。誌面に登場される方々の生きざまや考え方をシェイクし、自分に必要なものを心に刻んでいく。そういう読み方が大切ではないでしょうか。
人生で行き詰まった時に、次への行動のヒントを感じ取ることができるのが魅力です。
〈岡田〉
いまから20数年前、駆け出しの監督だった頃、答えのない問いを繰り返し、非情の決断にもがき苦しんでいました。そんな中で『致知』を読んでいると、目から鱗うろこが落ちるように本質が見えて背中を押してくれたこと、問いの答えよりも深い先達の教えが説かれていて新たな気づきを得られたことが何度もあったんです。
経営者となったいまも、僕にとって『致知』は道を教えてくれる大切な人生の師ですね。
功成り名を遂げてこられたお二人が、いまもなお謙虚・素直に学び続ける姿勢に感銘を受けると共に、編集者冥利に尽きる思いがします。
「リーダーのあり方」や「チームづくりの要諦」が凝縮
お二人の2時間に及ぶ白熱の対談取材をギュッと凝縮して誌面10ページにまとめました。主な見出しは下記の通りです。
◇勝負事に関して小善を断ち切れるか
◇本気で向き合えばどんな子にも通じる
◇相手に気づきを促す3つの叱るコツ
◇目に見えない余韻やオーラを残す
◇信頼関係を築く選手との関わり方
◇私心やエゴは全部見抜かれる
◇両者が『致知』を読み続ける理由
◇最後は素の自分で戦うしかない
◇最悪の状況下で選手に開口一番伝えたこと
◇遺伝子のスイッチがオンになった瞬間
◇結果を出せるのは結果を決めているから
◇勝利の神様は細部に宿る
「お二人の出逢いと交流」や「人として、指導者として、お互いの印象や魅力」に始まり、「大阪市立住吉中学校時代を振り返って」という原点から、「いかにして己を磨き、人を育ててきたか」として「特に影響を受けた人や本、その教え」「日々意識してきたこと、実践してきたこと」「己を磨いてくれた最大の逆境・試練、飛躍への転機」「人を育てる醍醐味、忘れ得ぬ思い出」、さらには「チームづくりの要諦」をテーマに、「強いチーム、勝つチームの共通点」「伸び続ける人と途中で止まってしまう人の差」「一人ひとりの主体性を発揮させるために何が大事か」に至るまで、約1万4000字の記事の中に、一冊の書籍になるほどの内容が満載です。
本誌未収録エピソード「日々欠かさない習慣」
ここで、紙幅の都合上、本誌では割愛せざるを得なかったエピソードをご紹介します。
「自分を磨き高める上で、日々欠かさない習慣はありますか」との問いに対するお二人のお話がとても印象的でした。
〈岡田〉
いまから20数年前、横浜F・マリノスの監督時代に曹洞宗大本山の総持寺へ必勝祈願に行っていました。ある時、老師の方に「岡田さんも一回坐ってみられたらどうですか」と言われて体験したのを機に坐禅にハマって、いまでもずっと続けています。
その坐禅の師匠に「岡田さん、掃除はしますか」と聞かれて「いや、しません」と答えると、「掃除はね、あなたの心を掃くんです」とおっしゃったので、「僕そんなに汚いですか」って(笑)。それから家の玄関を掃除するようになって、隣近所の前までやっていたんですけど、「うるさい」と怒られたので、これはもうやっていません。
〈井村〉
私は一日が終わったら寝る前に「きょうのやり残しはないかな」って必ず振り返ります。やり残したことがあったら、すごく嫌なんです。それで「明日はこうして、こうして、こうしよう」って考える。書いたりはしない。書くと残るので、後日見返した時に却って辛くなって、ネガティブな方向に引っ張られることもあるんです。だから、頭と心の中で一日を振り返る時間を必ず取っています。
〈岡田〉
すごい。日々のリフレクション、振り返り。これは成長するのに一番大事で、その日のうちにやったほうがいいって言われています。でも、僕はそれができないんですよ。夜はだいたい酔っ払っているので(笑)、翌朝にやっています。
あと、もう一つ師匠に言われたのは、「あなた、人に頭下げないでしょ」って。「あんまり下げませんね」「仏壇や神棚は家にありますか」「ないです」「何でもいいから買ってきて日に一回、頭を下げなさい」と言われて、家にいる時は毎朝仏壇にお線香を上げて手を合わせるようになりました。
〈井村〉
偉いですね。手を合わせて何か唱えるんですか?
〈岡田〉
頼み事をするのは嫌だったので、前日の出来事を思い出しながら、「ありがとうございます。導いてください」と。メンターの田坂広志先生のアドバイスもあって、感謝の言葉を述べるんです。もうかれこれ15年以上は続けていますが、そのおかげか、運を掴めることを実感していますね。
「人生は習慣の織物」といわれるように、日々の小さな習慣の積み重ねが、最終的にその人の人格や運命をも創り上げていくことを、お二人の実践談から教えられます。
最後に、「人間を磨く」ことに関して、とりわけ深く心に響いた言葉を一つずつ挙げたいと思います。
当たり前のレベルを上げることが人間を磨くことに繋がっていく――井村雅代
人間を磨くとはエゴを削ぎ落としていくことだと思います――岡田武史
一流の名指導者同士が語り合う、体験や学びを通して掴んだ人生と仕事を好転させる「心身の習慣」「成功の法則」「珠玉の金言」には、私たちの日常生活に生かせるヒントがちりばめられています。お二人が織り成す人間学談義に興味は尽きません。
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