2026年04月10日
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「和敬清寂」の心を大切に、約500年にわたって代々その道統を守り継いできた千利休居士を祖とする茶道家元の裏千家。第十六代家元の千宗室氏はいかにして修行を積み、先師からの薫陶を受け、道を深めてこられたのか。その歩みと共に、氏が生涯の目標に掲げる〝無事是貴人〟について語っていただきました。対談のお相手は、臨済宗円覚寺派管長の横田南嶺氏(写真:右)です。
(本記事は『致知』2026年4月号対談「無是貴人 先師に導かれていまがある」より一部を抜粋・編集したものです)
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「無事是貴人」は一生の目標
<千>
きょうは、老師から以前いただいた「無事是貴人」の軸を床の間に掛けさせていただきました。私が一番好きな言葉ですし、この軸を掛ければ、話がうまく進むのではないかと思いましてね。
これは若い時に提唱で教わって私が消化したことですから、南嶺老師にお叱りを受けるかもしれませんが、無事というのは「要らんものを捨てる」こと。貴人というのは、偉い人ではなくて、「おまえ、それを捨てたら元の自分に戻れるで」と言ってくれているんじゃないかと受け止めています。
<横田>
お家元はあまり講演をお好みでないと言うんですけれども、ありがたいことに平成27年に円覚寺の夏期講座でご講演いただきました。私はお家元に自分の下手な字を差し上げるほど厚顔無恥な人間ではありません。
ところが、夏期講座の講師への御礼品はこの書と決めているのです。それで恐れ多くも紛れ込んでしまった。ここは私の書を掛けるような場所ではありません。
<千>
淡交会青年部の研修会や裏千家学園茶道専門学校の開校式などで私が話をする時には、この軸を掛けて重宝しております。
<横田>
もうお恥ずかしい限りで、きょう引き取って帰ろうかと(笑)。
<千>
いろんな考え方があるかもしれませんが、私は老師に一度お伺いをいたしました。
「非常に分かりやすい字を書いてくださるので、それこそお茶の道に入ったばかりの若い人たちなんかは、読めるので大変嬉しいという気持ちを抱いているようです」と申し上げましたら、その時の老師のお返事が「読めない字を睨んで呻吟するのも修行であったけれども、読める字を読んで呻吟するのも修行だ」と。特に昔は全く読めない字の前で、そこに近づくこともできないくらいしんどかったともおっしゃいましたね。
<横田>
ええ、その通りです。
<千>
私はそういうものばかりじゃなくて、時にはこういう読めるものを見て、一瞬油断して近づけるわと思って近づいて、でも近づいているはずなのに、近づけば近づくほど、どんどん遠ざかっていく言葉があってもいいんじゃないかと思っています。
私も自分で書くことがございまして、依頼をされて書く軸の中で1割近くはこの「無事是貴人」でしょうね。でも書く度に、書いている自分がこの言葉になれんな、ならないかんなと思いながら書いています。昔から本当に好きで、めざしている限りは同じ距離なのに、なんでどんどん離れていきよるんやろうなと思う言葉なので、一生の目標ですね。
<横田>
仏法という尊い宝のような教えがどこか遠くにあるのではなくて、一人ひとりがそのまま仏なのだと気づき、外に探し求める心がなくなった姿を指して「無事是貴人」と臨済禅師は説いています。ただ安閑として無事というのではなく、求めて求めて求め抜いてこその無事である。本当に奥の深い言葉です。
(本記事は『致知』2026年4月号対談「無是貴人 先師に導かれていまがある」より一部を抜粋・編集したものです)
↓ 対談内容はこちら!
◆つい数日前の新たな発見と感動
◆風のような家元蛍のような管長
◆人をお出迎えする時の絶妙な心遣い
◆「無事是貴人」は一生の目標
◆一日の始まりは利休堂のお参りから
◆弟子の成長を見るのが何と言っても楽しみ
◆「春になれば治ります」と答えた修行僧の覚悟
◆2人の師匠からいただいた宝物の言葉
◆分かったふりをしてはいけない
◆家元としての重圧にいかに向き合ってきたか
◆師匠からの最期の言葉「更に参ぜよ三十年」
◆慙愧の心こそが感謝の原動力である
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◇千 宗室(せん・そうしつ)
昭和31年京都府生まれ。同志社大学卒業。臨済宗大徳寺管長・僧堂師家の中村祖順老師のもとで参禅得度、斎号「坐忘斎」を受く。祖順老師没後、妙心寺の盛永宗興老師のもとで参禅。平成14年12月裏千家家元継承。今日庵庵主として宗室を襲名。
◇横田南嶺(よこた・なんれい)
昭和39年和歌山県新宮市生まれ。62年筑波大学卒業。在学中に出家得度し、卒業と同時に京都建仁寺僧堂で修行。平成3年円覚寺僧堂で修行。11年円覚寺僧堂師家。22年臨済宗円覚寺派管長に就任。29年12月花園大学総長に就任。著書に『禅の名僧に学ぶ生き方の知恵』『十牛図に学ぶ』『臨済録に学ぶ』『無門関に学ぶ』(いずれも致知出版社)など多数。
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