〝コンクリートのように固かった〟社風を一変させたもの|ジェイ・ポート社長 樋下 茂氏

去る2025年6月21日、「第13回社内木鶏全国大会」が東京プリンスホテル(東京・芝)で開催されました。全国から集った総勢1,150名の聴衆の前で、各地で木鶏会に取り組まれている5社の代表者(社長、社員様)による渾身の発表に拍手喝采が沸き起こりました。
 *木鶏会とは:『致知』をテキストにした勉強会。全国約1,380の企業や学校で導入されています

さて、毎回参加者の投票によって選ばれる、注目の「感動大賞」に輝いたのは、産業廃棄物処理業を営む株式会社ジェイ・ポート(大阪市)。樋下 茂社長と、実妹で社員代表の樋下香織常務のご発表では、3K職場のイメージが強く、凝り固まっていた会社の風土を懸命に変えてきた苦悩と喜びの歴史が語られました。本記事では、参加者に大きな感動を与えた、樋下社長の発表文をご紹介いたします。

家業に入り、自分の存在意義を見失った若き日

私の原点は、幼い頃に起きた出来事にあります。

ある日、父親が交通事故で左足に大怪我を負い、トラックを運転できない体になりました。一人で廃棄物業を営んでいたため、事業継続は「もうダメ」と思ったその日、親戚、アルバイトの人がすぐに駆けつけ、ドライバーを引き受けてくれました。母親がいつも繰り返し言っていた言葉があります。「社員のおかげやで。感謝しなあかん」。この言葉が、私の人生の指針となりました。

大学卒業後、私は夢を追いオーストラリアに旅立ちます。その後、30歳を目前に突然、父親から一本の電話が入りました。「新工場建てたいねんけど、銀行さんが『息子さんが継ぐんやったら貸します』って言いはる」。その言葉を聞いて、私は無性に親孝行がしたい、自分が逃げ続けてきたものと向き合う時が来たと感じ、家業に戻る決意をしました。

ところが、待っていたのは、冷え切った職場でした。当時、父親が社長として強く君臨し、社員は6名。挨拶はなく、先輩社員からは「俺はお前に雇われてんのとちゃうで。勘違いするなよ」とひと言。さらには、お客様からのクレームの嵐。父親も社員たちを庇(かば)う一方で、独断で設備投資をし、私が保証する借入金だけが膨らんでいく。

「自分って一体何なんだ」と思いながら、資金繰りが苦しくなるたびに、私は妹に八つ当たりをして彼女を泣かせていました。

罵倒を受けながらも貫いた信念

ある日、若手社員と何気なく窓の外を見ていると、隣の会社の駐車場で和気藹々(あいあい)と社員の皆さんがお祭りをしている様子が目に飛び込んできました。

「いつかうちの会社も、社員みんなであんな風なお祭りがしたい」。そんな他愛のない言葉が、私にとって切なる願いとなりました。

日々悶々としながら解決策を模索する中、2008年に『致知』と出逢いました。

「いま目の前で起こっている出来事はすべて、必要・必然・ベストなタイミングで起こっている」
「そして、それはすべて自分が選択して決めてきたこと」。

その気づきが、被害者として生きてきた私の人生を大きく変えました。

2010年に開催された第1回社内木鶏全国大会で、私は大きな衝撃を受けます。「木鶏会はホワイトカラーだからできるもので現場社員には絶対無理」と思っていた私の固定観念を打ち砕くものでした。現場社員さんが笑顔で輝き、語り合う姿に私は心を動かされました。

「あんな会社になりたい」。会社の支柱だった父親が亡くなったいまこそ木鶏会が必要だと確信し、すぐに導入を決めました。第1回目はほぼ全員が参加。コミュニケーションがなかった会社で初めて懇親会まで行うことができ、私は社員皆の前で感激のあまり号泣しました。しかし、それは最初だけでした。

2回目以降、参加者は激減。社員の素行も相変わらずで、古参社員からは「お前ら木鶏会やっててこれか!」と罵倒もされました。社内はイザコザが絶えず、私の心は荒みそうになります。

ある時、ふと気づいたことがあります。それはみんなから信頼されない私が改革をどんどん進めることで、古参社員を不安にさせ、居場所を奪っていたのではないかということでした。

気づいて、やめるか。気づいて、進むか。しかし、ここで怯んではいけない。「全国大会で見たあの会社のようになりたい」。私は、どんな批判があろうとも進むことを選びました。

「一燈照隅」の精神で人の心も、地球も美しく

まず私が信頼される人間になるために『致知』を読み続け、心を綺麗にして日々自己改善をする。そして倦まず弛まず木鶏会を行っていく。そのうちに、まず一番反対していた妹が最大の協力者になり、次第と支持してくれる社員も出だしました。

木鶏会は劇的に何かが変わるわけではなく、漢方薬みたいなものでジワっと体質改善されていくことを感じ始めました。やがてコンクリートのように固かった会社の地盤が砕け、新工場の落成式に合わせて念願だったお祭りを社員とともに実現できた時の感激はいまでも忘れません。

人が育つ土壌になり新卒採用を始めたのは8年前(2025年時点)のことでした。いまでは正社員の半数以上が20代です。若者は失敗をします。が、私はこの言葉を胸に抱いています。「父子親有り(ふし しんあり)」。親は子を無条件に愛す。私は子供には恵まれませんでしたが、社員を我が子と思えば、どんな失敗も愛しく思える。

社員の成長は、会社の成長です。現在、全社員が木鶏会に参加してくれるようになり、昼の時間帯にはパートさんが加わる昼木鶏会も開催しています。


私には使命があります。子供の頃、誇りを持てなかった廃棄物処理業のイメージを変えることです。

この仕事は、環境問題を解決する〝未来の産業〟です。未来を担う若者たちが誇りを持って働く業界にする。そう強く願っています。そしていま、世界は人間の飽くなき欲望によって、有限な資源やエネルギーが枯渇し、争いが生まれ、地球環境さえ破壊されようとしています。そんな時代に『致知』で心のあり方を学ぶジェイ・ポートの素晴らしい仲間と共に、自然と共に生きる社会、そして世界平和の実現を目指し、「一燈照隅」の精神で、心も、そして地球も、美しくしていきます。


(本記事は月刊『致知』2025年9月号に掲載されたスピーチを転載したものです)

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