世界初のカップ麺「カップヌードル」誕生秘話〈日清食品創業者・安藤百福〉

48歳で世界初の即席麺「チキンラーメン」を、61歳の時に世界初のカップ麺「カップヌードル」を生み出した日清食品創業者・安藤百福氏。氏はいかにして20世紀を代表する発明を成し遂げたのか。安藤氏の側近として20年以上行動を共にした筒井之隆氏に、カップヌードル誕生秘話を語っていただいた。
(本記事は月刊『致知』2026年1月号 特集「拓く進む」より一部抜粋・編集したものです)

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かくして世界初のカップ麺は誕生した

創業時から世界市場に強い憧れを抱いていた安藤さんは1966年、チキンラーメンを世界に広げるためにアメリカへ視察に出掛けました。現地のバイヤーに試食を依頼すると、麺を2つに割って紙コップに入れ、お湯を注ぎフォークで食べ始めました。これを目にした安藤さんは、「アメリカ人は箸とどんぶりでは食事をしない、即席麺を世界食にする鍵は食習慣の違いにある」と気づいたのです。

アメリカでの経験に触発された安藤さんは、麺をカップに入れてフォークで食べる新製品の開発に取り掛かります。開発上の最大の課題は、上が広く底が狭いカップ容器に麺を収めることでした。

麺を容器よりも小さくすれば底に落ち、輸送中に麺が壊れてしまう。そこで容器の底より麺を大きくして、容器の中間に固定する中間保持のアイデアを思いつきます。しかし、いざ麺を容器に収めようとするとゆがんだりひっくり返ったりしてうまくいきません。

考えて、考えて、考え抜いたら、ふとした瞬間にアイデアが降りてくるのでしょう。ある晩、布団に横たわって考えていると、突然天井がぐるっと回るような感覚に陥りました。その時、「そうか、容器に麺を入れるのではなく、麺を伏せて上から容器を被せればいいんだ」と着想を得たのです。

この逆転の発想によって大量生産が実現。他にも容器の蓋や具材、麺の揚げ方といった課題を自ら解決していき、「カップヌードル」は誕生しました。1971年、61歳の時でした。

安藤さんは「いつも心の窓を開けておけ。すると他の人には見えないものまで見えてくる」と語られたように、日常からアイデアを掴み取られました。自分の周囲に好奇の目を向けていたことが、時代を切り拓いたのだと思います。


~本記事の内容~(全5ページ)
◇〝世界の食を変えた男〟の謦咳に接して
◇周辺を見渡すと事業のヒントはいくらでも見つかった
◇発明は閃きから 執念なきものに発明はない
◇立派な仕事とは新しい事業構造を組み立てること
◇かくして世界初のカップ麺は誕生した
◇人生に遅すぎることはない

20世紀を代表する発明を果たした安藤氏ですが、47歳の時には無一文になるなど、度重なる逆境に直面してきました。氏はいかにして再起し、時代を切り拓いてきたのか。その波瀾万丈の人生の全貌は、ぜひ本誌をお読みください。

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◇筒井之隆(つつい・ゆきたか)
昭和19年大阪府生まれ。42年同志社大学卒業後、読売新聞大阪本社入社。60年日清食品入社。秘書室長、広報部長、宣伝部長、マーケティング部長、常務取締役を歴任。平成23年安藤百福発明記念館横浜(カップヌードルミュージアム横浜)館長就任。令和3年退任。著書に『転んでもただでは起きるな! 定本・安藤百福』『鎌倉ジャズ物語―ピアニスト松谷穣が生きた進駐軍クラブと歌謡曲の時代』(いずれも中央公論新社)など。

◇安藤百福(あんどう・ももふく)
明治43年台湾生まれ。大正13年高等小学校を卒業後、祖父の経営する織物業を手伝う。昭和9年立命館大学専門学部経済科修了。23年中交総社(現・日清食品)創業。33年世界初の即席麺「チキンラーメン」を発明、日清食品に商号変更。46年世界初のカップ麺「カップヌードル」を発明。平成14年勲二等旭日重光章受章。19年96歳で逝去。著書に『魔法のラーメン発明物語 私の履歴書』(日本経済新聞社)『食欲礼賛』(PHP研究所)など。

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