2025年09月14日
9月14日、名古屋のIGアリーナにてボクシング世界王座の3度目の防衛戦に挑む、WBO世界バンタム級王者・武居由樹選手(写真 右)。同日メインイベントを飾るのは、武居選手と同門で、日本ボクシング史上最高傑作とも称される世界スーパー・バンタム級四団体統一王者の井上尚弥選手です。井上選手の強さの秘訣はどこにあるのか。大橋ボクシングジム会長・大橋秀行氏(写真 左)と語り合っていただきました。
(本記事は『致知』2025年9月号 対談「どん底から2つの世界一へ」より一部を抜粋・編集したものです)
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強さの秘訣は不動心
<武居>
尚弥さんは僕にとって圧倒的すぎる存在で、ボクシングの技術はもちろんのこと、人として見習わなきゃと思うのは遅刻をしないことです。
<大橋>
ああ、そうだね。
<武居>
あれだけの実績を上げていれば多少のことは許されるというか、自分のペースで遅れて来ても誰も文句は言わないと思うんですけど、尚弥さんはルーズなところが一切ない。
自分に厳しく、時間をきっちり守る。むしろいつも約束の時間の何十分も前に入られているので、そういう日常の練習の姿勢を学ばせていただいています。
<大橋>
井上はうちのジムに来て13年になりますが、世界4階級を制覇し、史上2人目の2階級での4団体統一王者になったいまも、天狗にならない。これは本当にすごいですよ。13年前のほうが生意気だったかもしれない(笑)。
例えば、挨拶の仕方一つとっても、練習の帰りに一人だけ大きな声で「ありがとうございました!」って必ず言う。
<武居>
確かに言っていますね。
<大橋>
子供たちが練習しているところに井上が来て、スパーリングをやって見せたり。そういう謙虚さを失わずにいる。また、全世界から研究され、その座を狙われているのはものすごいプレッシャーだと思うんですけど、逆にそれを楽しんでいる。
<武居>
試合前もピリピリした雰囲気は全くなくて、普通にお子さんと遊んでいたりしますよね。
<大橋>
以前、「木鶏」の逸話を井上に話したことがあるんです。その時はあまり意味を理解してなさそうでしたけど、どんな試合でも緊張しているでもなく、興奮しているでもなく、まるで木鶏のような姿勢で臨んでいますね。
<武居>
木鶏って何ですか?
<大橋>
普通は強い相手と対峙すると、動揺したり威嚇したりするんだけど、木鶏とはまるで木で彫った鶏のように何があっても全く動じない。横綱・双葉山が69連勝して敗れた時に、「我、未だ木鶏たり得ず」と言った。
井上は木鶏の如ごとき不動心を持って心の底からボクシングを楽しんでいる。だから強いんです。
(本記事は『致知』2025年9月号 対談「どん底から2つの世界一へ」より一部を抜粋・編集したものです)
↓ 対談内容はこちら!
◆2度目の王座防衛は自分の心との闘いだった
◆ギリギリの状況で勝ち切れた2つの要因
◆世界チャンピオンが欠かさない日々の習慣
◆単親家庭、育児放棄、虐待……育ての父との運命的な出逢い
◆負けた時にどう練習に取り組むかが勝負所
◆心を入れ替え20歳でK-1世界チャンピオンに
◆大橋ジムの修学旅行で知覧を訪れる理由
◆親即恩――産んでくれただけで感謝
◆ボクシング転向の機縁になった大橋会長との邂逅
◆世界戦初勝利を掴んだ知られざる感動の舞台裏
◆井上尚弥選手が最強たる所以ここにあり
◆世界のトップに立つ条件~才能よりも心の持ち方~
◆人生とは決断と挑戦の連続である
◇武居由樹(たけい・よしき)
平成8年東京都足立区生まれ。10歳でキックボクシングを始め、足立東高校時代はボクシング部でも活躍。26年11月にKrushでキックボクシングデビューし、29年4月に第2代K-1 WORLD GPスーパーバンタム級王座を獲得。23勝(16KO)2敗の戦績を残し、令和2年12月に王座返上とボクシング転向を発表。3年3月のデビュー戦を1回TKO勝利で飾る。6年5月6日、WBO世界バンタム級王者ジェーソン・モロニーに3-0で判定勝ちし、日本ボクシングコミッション公認の日本ジム所属100人目の世界王者となる。ここまでの戦績は11戦11勝(9KO)。
◇大橋秀行(おおはし・ひでゆき)
昭和40年神奈川県生まれ。小学生の時、兄からボクシングの手ほどきを受け、中学生からジムに通う。高校時代にアマチュアの全日本タイトルを獲得。大学時代、ロサンゼルス五輪の代表選考試合に決勝で敗れ、プロに転向。アマ通算44勝(27KO)3敗。60年プロデビュー。その後世界タイトルに2度挑戦するも敗退。平成2年3度目の挑戦で世界チャンピオンとなり、日本人の世界挑戦連続失敗を21で止めた。6年引退。プロ戦績は24戦19勝(12KO)5敗。同年大橋ボクシングジムを開設。これまで輩出した世界チャンピオンは最多タイとなる5人に及ぶ。
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