「すべての女性の駆け込み寺を目指して」——不徹寺住職・松山照紀の思い

300余年の歴史を紡ぐ兵庫県姫路市の尼寺、不徹寺。住職を務める松山照紀さんは〝すべての女性の駆け込み寺〟を目指して、年中無休の無料電話相談、懐石料理やお香、写経の教室をはじめ、様々な活動を行っています。そのご活動に懸ける思いを伺いました。
(本記事は『致知』2024年8月号 連載「第一線で活躍する女性」より一部を抜粋・編集したものです)

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心のゴミは本音を喋ることで整理され、手放すことができる

──松山さんは兵庫県姫路の尼寺にて、多くの人々の悩みに耳を傾けているそうですね。

〈松山〉
私が25代目住職を務める「不徹寺」の成り立ちは、1688年に遡ります。俳人であった田ステ女により、女性のための修行道場として姫路に創建されました。

一時的に男性が継いだ時期もありますが、尼僧によって代々守られてきた、恐らく日本で唯一のお寺だと言い伝えられています。

このような流れを汲みまして、2016年に住職に就任した際には、女性のために何かしたいという漠然とした思いがありました。ただ、1年考えてみたものの、名案は浮かびません。ではとにかくやってみようということで始めたのが、お寺でのお悩み相談でした。

──女性の悩みに寄り添いたいと。

〈松山〉
私も悩みを一人で抱え、死んでしまいたいと塞ぎ込んだ時期がありましたから……。心身共に追い詰められた女性たちの最後の砦になりたいと思ったんです。

つい先日も、朝7時に80代のおばあちゃんが訪ねてきました。「どこからですか」って聞いたら、「香川から来ました」と言うので驚きです。ひと息ついてから詳しくお話を伺うと、嫁姑問題で飛び出してこられたんですね。

息子さんから連絡がありましたが、帰りたくないとおっしゃるので、暫く泊まっていただくことにしました。静かなお寺の中で、日頃の恨みつらみを話すにつれ、少しずつ気持ちが軽くなり、生きる力が湧いてきたのでしょう。2日後には「すっきりしたから帰る」と言い、笑顔で帰られました。

私は実体のない恨みや悩みを「心の粗大ゴミ」と呼びますが、心のゴミは本音を喋ることで整理され、手放すことができる。そうすると何をすべきなのか、自ずと見えてくる。何事も吐き出すことが大切なのだと思うんです。

──本音を打ち明けることで、心のゴミを取り除くことができる。

〈松山〉
訪れる女性は旦那様への文句が募った方から、がんを患った恐怖で夜も眠れない方まで千差万別です。そうして悩みに耳を傾けているうちに、いつしか年中無休の無料電話相談、懐石料理や和裁の教室なども運営するようになりました。昨今は1日1件以上電話が掛かってきますし、お寺に訪れる方は月40名を超えています。

難しい禅の言葉なんて私は分かりません(笑)。でも常々実感するのは、女性が元気じゃないと、男性も活躍できない。女性が明るく生きることが世の中のため。だから「美味しい・楽しい・美しい」の三本柱で、すべての女性の駆け込み寺を目指しているんです。


すべての女性の駆け込み寺を目指し、様々な活動に取り組む松山さん。しかし、現在の道に至るまでには学生結婚、20歳での出産、父との別れ、離婚、生死を彷徨った大病など、様々な困難がありました。本記事では松山さんの波瀾万丈の半生を振り返っていただき、自分らしい人生を生きるヒントを探りました。

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◇松山照紀(まつやま・しょうき)
昭和37年福岡県生まれ。大学生だった20歳の時に妊娠、学生結婚するも、離婚してシングルマザーに。手に職をつけるべく看護師を志す。医療の限界や迷いを感じていた37歳の時に坐禅と出逢い、48歳で出家。平成28年より現職。「すべての女性の駆け込み寺」を目指し、無料の電話相談などに取り組んでいる。著書に『駆け込み寺の庵主さん:心のモヤモヤ「供養」します』(双葉社)がある。

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