国家の見識とは「人間の見識」である〈石原慎太郎×渡部昇一〉


政治の混迷が深まり、先行きが見えない中、日本の国家としての見識が強く求められています。石原慎太郎さんと渡部昇一さんが、日本よ、かくあれと熱く語り合った弊誌2010年4月号の対談を一部ご紹介します。
(本文は掲載当時のものです)

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国の見識は 一人ひとりの自覚から

〈渡部〉
石原さんが運輸大臣の時に、上の人間が「俺が責任を取る」と言えば役人も動くんだとおっしゃったことがありましたね。しかしいまは、「俺が責任取るからやれ」っていう人がいない。

〈石原〉
新しいことを言うとわりとついてくるんですよ。ところがいままでのことを変えようとすると、先輩のやったことを傷つけてしまうからという変なおもねりがあって固辞してしまう。
 
ただ、そういうものを超克していくのが政治家の責任でしょう。

〈渡部〉 
だから、俺が責任を取るというのは見識がないと言えないですね。
 
大久保利通という人は、冷静な人というイメージが定着していますよね。ところが明治七年に沖縄の漁師が台湾で殺された時は、北京まで乗り込んでいった。向こうはうるさがって賠償金を払って済ませようとしたけれども、大久保はそんなものよりも謝れと食い下がった。

結局、謝らせた上に50万両もらって帰ってきたんです。日清戦争の20年前ですから、日本の国力など取るに足らない頃です。人間的な迫力でそれを成したわけですよ。
 
日本がこの混迷を切りひらいて真の繁栄を手にするためには、こうした大久保のような人物が求められるところです。

〈石原〉 
私も大久保は本当に好きですね。怜悧で、度胸があって、責任感があって。西郷さんの割りを食って随分損していると思うけれども、新しい日本の礎をつくった彼の功績はもっと評価されるべきだ。渡部さんがおっしゃるように、彼のような見識のある人間が、いまの日本には求められます。

国家の見識は、政治の見識です。そして結局それは、人間の見識というところに行き着く。

見識を育むものといったら、やはり国に対する愛着でしょう。その愛着は国の歴史を知るということから生まれてくるものです。

我々は今後その認識に立って、一人ひとりがしっかりとした見識を養わなければならない。それこそが国の真の繁栄に繋がる道だと私は思います。


(本記事は月刊『致知』2010年4月号 特集「発展繁栄の法則」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇石原慎太郎(いしはら・しんたろう)
昭和7年兵庫県生まれ。一橋大学卒業。31年同大学在学中に執筆した『太陽の季節』で芥川賞受賞。43年参議院全国区に出馬。史上初の300万票を得てトップ当選。47年衆議院に転じ、以後環境庁長官、運輸大臣を歴任。平成7年衆議院辞職。11年東京都知事選挙に出馬、当選。主著に『化石の森』『生還』(いずれも新潮社)『弟』(幻冬舎)『国家なる幻影』(文藝春秋)など多数。共著に『「NO」と言える日本』(光文社)がある。令和4年逝去。

◇渡部昇一(わたなべ・しょういち)
昭和5年山形県生まれ。30年上智大学文学部大学院修士課程修了。ドイツ・ミュンスター大学、イギリス・オックスフォード大学留学。Dr.phil.,Dr.phil.h.c. 平成13年から上智大学名誉教授。幅広い評論活動を展開する。著書は専門書のほかに『これだけは知っておきたいほんとうの昭和史』『渡部昇一の少年日本史』『渋沢栄一 男の器量を磨く生き方』『国民の見識』など多数。平成29年逝去。

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