拝む——願うよりもまず、この一年に感謝の気持ちを込めて〈南蔵院住職・林覚乗〉


一年を納め、新たな年を迎えるこの時期。初日の出を拝む人に比べ、大晦日の夕日を拝むという人は少ないのではないでしょうか。説法を通じて心の豊かさを説き続ける南蔵院住職の林覚乗氏に、新年を迎える前に心得ておくべきことを教えていただきました。
(本文は1998年掲載当時のものです)

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拝むなら大晦日の夕日を

豊かな心を持ち、よりよい人生を送るために心掛けるべきことは何でしょうか。

やはり常に感謝の念をはぐくみ育てることが大切だと思います。

私は友人から、「君はすぐ『ありがとう』って言うね」とびっくりされるくらい頻繁に「ありがとう」を口にします。

電車内で掃除の方がゴミを集めに来てくださったら「ありがとう」、ゴルフでキャディーさんがクラブを渡してくれたら「ありがとう」。無意識に口をついて出てくるのですが、ほんの些細なことに対しても言うので、周りの人は少し奇異に感ずるようです。

しかし、感謝の心をはぐくむためのひとつの訓練として、「ありがとう」を意識的に相手に与えることも、大切なことだと思います。それを繰り返すことによって、次第に自分の心が豊かになっていくはずです。

それから、感謝の心は形で表すことも大切です。

私はいつも名刺大の紙を持ち歩いていて、会社を訪問してお茶を出していただいたときなど、その下にさりげなくその紙を差し込みます。その紙には、

「今日はおいしいお茶をありがとうございました。元気でお仕事を頑張ってください。南蔵院 林覚乗」

と書いています。片づけに来た人がそれを見て、「ああ、自分たちの仕事もこうやって見てくれているんだなあ」と喜んでくれたら、と思うのです。

そのメッセージを読んだ方々から、これまで私はたくさんの感謝のお手紙をいただきました。小さな心遣いが回り回って、結局は良き縁を広げることにつながっていくのです。

毎年1月1日に初日の出を拝む人はたくさんいます。お宮参りの人で日本中が大混雑します。

しかし、12月31日の夕日を拝む人は、どれくらいいるでしょうか。

一年間、振り返ればいろいろなことがあったけれども、こうして無事に大晦日を迎えることができる幸せ。そこに思いを寄せることができれば、自ずと感謝の気持ちが湧き上がってくるはずです。

毎年大晦日の夕日を眺め、

「お天道様、今年一年ありがとうございました。今年出会った方々、ありがとうございました」

と、感謝することのできる人。

そんな人こそが、豊かな人生を送ることができるのではないでしょうか。


(本記事は月刊『致知』1998年10月号 特集「感謝する」より記事の一部を抜粋・編集したものです)

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◇林覚乗(はやし・かくじょう)
昭和28年福岡県生まれ。51年高野山大学密教科卒業。同年より53年まで高野山真言宗ハワイホノルル別院駐在開教師。 55年南蔵院住職就任。福岡いのちの電話副理事長、福岡刑務所篤志面接委員、アジア刑政財団評議員を兼務。著書に『自分が好きですか』『心ゆたかに生きる」等がある。

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