「誠実、正直」——讃岐うどんの本場・香川県で120年間うどんをつくり続ける石丸製麺の〝創業の原点〟(石丸芳樹社長)

本記事は月刊『致知』2024年7月号掲載記事を一部編集したものです~

飛躍の原点は誠実、正直なものづくり

〈石丸〉
当社は明治37(1904)年、良質な小麦の産地であり讃岐うどんの本場として知られる香川県高松の地で、曽祖父・好太郎によって創業されました。石丸家は代々地主、農業を生業としていたのですが、日露戦争の勃発などで食料需要が高まっていく中、農地で穫れる小麦に事業の可能性を見出した曽祖父が製麺業と水車による製粉業を始めたのです。

しかし事業は順風満帆ではなく、二代目の義雄が若くして急逝し、昭和23年に父・芳孝が僅か15歳で三代目を継承することに。経験も資金も人手もない、さらに大手はどんどん参入してくる……厳しい状況に直面した父は、製粉業を廃業して製麺業に特化することを決断。そして母というよきパートナーを得た父は、地場の小麦にこだわった理想の麺作りを二人三脚で追求していくと共に、取引先とも日夜研究開発を続け、昭和59年、ついに日本初の機械による手打ち式乾麺の商品化に成功します。

この独自技術により従来の乾麺にはない味やコシを実現し、手打ち式乾麺のシェアで全国トップとなるなど事業を飛躍的に伸ばしていったのでした。それも偏に父と母が誠実、正直に高品質にこだわった麺作りを貫き続けたからに他なりません。

製麺業で日本、世界に貢献する

〈石丸〉
お父さんが過労で倒れた――大学卒業後、総合商社に勤めていた私のもとに母から連絡が入ったのは平成元年、28歳の時でした。そして長男の自分がなんとかしなければという「義務感」から、家業に戻ることを決めたのでした。

しかし、父の傍で仕事を学んでいく中で、取引先の方々から「石丸製麺は本当にいい商品をつくる」と激励され、両親の誠実さが会社を支えているのだと改めて実感。またある暑い日、母が乾麺を茹でて食べさせてくれたのですが、感動で震えるほどおいしく、私はこの時に「この味を守っていくんだ」と本当の意味で後継者としての覚悟を固めたのでした。 

その覚悟を試すかのように、平成13年に第二工場が漏電で全焼。私は新工場の建設計画を前倒しにして、必死に工場再建に奔走し、取引企業からの多大なる協力もあって短期間で完成させることができました。その姿を認めてくれたのか、平成16年に43歳で父から事業を継承したのです。

父と同様に、私も妻の協力のもと香川県産小麦ブランド「さぬきの夢」を使った商品や各種新製品の開発、社内木鶏会の導入による社風づくりなど様々な取り組みに注力。特に製麺工場に見学コースを設けたことは大きく、原材料がどのように製麺されていくのかを見ていただくことで生産者の方々とのご縁が深まると共に、新たな出会いやビジネスが生まれていきました。私はこれを「融業」と呼んでいます。

家族経営で始まった当社も創業120年を迎えたいま、売り上げは約27億円、社員も160名に。そして「国産小麦」「融業」「海外販売」の3つの軸を掲げて挑戦を続けていますが、根本にあるのは誠実、正直によいものを追求し続けるというDNAです。これからも一期一会の出会いを大切に、製麺業を通じて日本、世界に貢献する企業を目指してまいります。


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