2024年10月27日
◎最新号申込受付中! ≪人間力を高める2025年のお供に≫ご売上5兆円超の巨大企業・JFEホールディングス社長をはじめ、NHKや東京電力、その他数社の上場企業の経営にも参画してきた數土文夫氏。財界きっての読書家としても知られる數土氏が、長年経営の指針としてきたのが東洋古典の教えであり、中でも『管子』『論語』『孫子』を東洋古典三部作とひそかに位置付け、熟読してきたといいます。『徳望を磨くリーダーの実践訓』はその數土氏の初となる著書。企業経営のバイブルになるとともに、多くの人が古典の面白さに目覚めるきっかけともなるはずです。數土氏による「はじめに」の文章をご紹介いたします。
各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。
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幼少期に親しんだ東洋古典
私の生家には、日本や世界の文学全集から東洋古典まで、多くの本がありました。故郷の富山は雪深くて外で遊べない日も多いため、私は家にあった本に自然に接する機会が多くなりました。東洋古典では『史記』『十八史略』『資治通鑑』『論語』『孫子』『宋名臣言行録』『貞観政要』といった書物に、中学・高校生の頃から読み浸りになりました。
当然、学業は疎かになりました。が、両親は黙認してくれていました。
大学卒業後は川崎製鉄に入社し、最後の川崎製鉄社長としてNKK(日本鋼管)との経営統合によるJFEスチール設立を進め、2003年に初代代表取締役社長(CEO)に就任。2005年にはJFEホールディングス代表取締役社長(CEO)に就き、経営の舵取りを行ってきました。他に短い期間ですが、NHKや東京電力に加え、いくつかの上場企業の経営にも参画してきました。そんな中、経営の指針としてきたのが、数ある東洋古典の教えです。
中でも『管子』『論語』『孫子』の三書を、「東洋古典三部作」とひそかに位置付け、企業経営の指針としてきました。『論語』と『孫子』は広く読まれているものの、ここに『管子』を加えていることに意外な印象を受ける方もおられるかもしれません。しかし私は以前から、21世紀のリーダーが分野を問わず心得とすべきは『管子』の教えではないかと考えてきました。それほど『管子』には、現代人が生きる上で重要な知恵と知識が詰まっていると感じてきました。
『貞観政要』を通じて、あるいは直接『史記』や『菅子』を通じて管仲に学んでいたのは、徳川家康であると思います。徳川幕府の「士農工商」制度、「五人組」制度の原点は2700年前の管仲の制度そのものです。
詳しくは本文にて触れますが、家康と、信長・秀吉との違いについては、いろいろな見方があるものの、私は彼らが歴史・古典を読んでいたか、いなかったかに尽きるのではないかと感じています。
事業経営の生きた実践訓となる三つの書物
私が『管子』を初めて読んだのは40代の頃ですが、何度も読み返しているうちに、孔子と孫武がいかに管仲の影響を受けていたかを痛感させられました。しかも、管仲が生まれたのはいまから約2700年前、孔子と孫武は約2500年前で、二人は同時代の人物ですが、二人の間には接点はありませんでした。『論語』と『孫子』を読めば読むほど、『管子』の影響を深く受けていたことがよく分かります。
私自身は数ある東洋古典の中で、『管子』こそ中心に位置すべきだと考えていました。そうした考えを前提にこの三書を読み、経営に当たったほうが、経営はよりうまくいくに違いないと思ってきました。そしてそのことを、機会があればぜひ皆さんにもお伝えしたいと考えていました。
致知出版社の藤尾秀昭社長から、「社長の『徳望を磨く』人間学塾」で古典の講義をしていただけないかというお話をいただいたのは、そんな折でした。本書は2022年10月から2023年3月まで全六回にわたって行われた「古典に学ぶリーダーの条件 ~『管子』『論語』『孫子』に学ぶ~」の講義をまとめたものです。
『管子』と『論語』と『『孫子』。この三つの書物を併せて読むことによって、いままでの二倍にも三倍にも勝るヒントが得られることを私は確信しています。本書が、激動する時代において日々事業経営に当たっておられる皆さんの生きた実践訓となることを心より願います。
本記事の内容は、『徳望を磨くリーダーの実践訓』(數土文夫・著)より抜粋しています。
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◇數土文夫(すど・ふみお)
JFEホールディングス名誉顧問。昭和16年富山県生まれ。39年北海道大学工学部卒業後、川崎製鉄入社。常務、副社長を経て、平成13年代表取締役社長。最後の川崎製鉄社長として、NKK(日本鋼管)との経営統合によるJFEスチール設立を進め、15年初代代表取締役社長(CEO)就任。17年JFEホールディングス代表取締役社長(CEO)。22年相談役。23年日本放送協会経営委員会委員長、24年東京電力ホールディングス社外取締役、26年より同会長の要職も歴任。川崎製鉄では冶金技術者として多くの論文執筆と特許出願でも貢献。東洋古典に造詣が深いことでも知られる。令和元年旭日大綬賞受賞。
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