「だっでん、 良うなからんとでけん」——物流一筋で設立70年を迎えた柳川合同の〝創業の原点〟

福岡県柳川市に本社を構え、関東や関西を含めて11か所に営業所を擁し、グループの売り上げ約80億円を記録する物流会社・柳川合同。今年設立70周年の節目を迎えました。2020年より同社を率いる代表取締役の荒巻哲也さんにこれまでの足跡、同社の創業の原点を伺いました。

物流一筋、70年の歴史を歩み来て

私ども株式会社柳川合同は、福岡県柳川市に本社を構える物流会社で、2024年4月28日で設立70周年を迎えます。1954年、地元でトラック運送を手掛けていた4人が現物出資して始めた小さな会社も、現在では関東、関西を含めて11か所に営業所を構え、グループの売り上げ約80億円、約420名の従業員を擁するまでになりました。

設立登記から19年後の1973年、それまで個人で運送業を営んでいた父・稔が事業を譲り受けました。当時小学1年生だった私は、専業主婦の母が事務所に働きに出てしまい、構ってもらえなくなったのを覚えております。

そういう私を慰めてくれたのが何より大好きなトラックでした。子供の頃は助手席に乗せてもらうのが楽しみで、高校生になると積み込みや荷下ろしを買って出るようになりました。父に跡を継ぐように言われたことはありませんが、トラックが大好きだったこともあって、いつの頃からか後継者としての自覚が芽生えていったように思います。

大学を出て家業に就いたのは1989年。しかし、その数年後にはバブル崩壊の煽りを受けて当社の業績は下降線を辿り、父が塞ぎ込む姿を見せることも度々でした。35歳で社長のバトンを受け継いだ時、社員は60名ほどに増え10億円以上の売り上げがあったものの、いま考えると実際には預金が底をつきかけ倒産予備軍にまで陥っていたと思います。

日々の営業努力で幸い業績は少しずつ回復できましたが、2006年、39歳の時に再び大きな危機に直面しました。当社が工場(製造部門)を請け負っていた老舗の漬物会社が民事再生を申請したのです。連鎖倒産の噂はすぐに広がり、取引停止を申し出る企業も出てきました。加えて社内に労働組合ができ、オルグが押しかけては団体交渉を迫りました。

社業に関わるすべての人たちを幸せに

文字通り四面楚歌の状態でした。しかし、一方でそれは私自身の目覚めのきっかけでもありました。いかに社員の声に耳を傾けることをしない傲慢な経営者だったかを、この苦しみは私に思い知らせてくれたのです。思えば私もかつては一人のドライバー。膝を交えて社員と対話を重ねる中で気持ちが通じ合い、笑顔で語り合えるようになりました。解雇せざるを得なかったドライバー、漬物工場のパート社員一人ひとりの悲しみに満ちた表情と家族の姿が目に浮かびました。

私の意識が大きく変わったこの頃から、当社の潮目も変わった気がします。2008年からは本格的に物流倉庫業に進出。関東や関西を視野に入れた在庫業務と輸送を一体化した流通システムの構築は業績を大きく伸ばす契機となりました。2020年には再建の途上にあった老舗漬物会社の経営を自分が引き継ぐ決断もしました。

「だっでん、良うなからんとでけん」(誰もが良くないといけない)、「でんかなる」(どうにかなる)。この柳川弁が私の口癖です。「私たちは会社、社員が物心ともに豊かになるとともに、協力していただいている全ての方々を豊かにすることを誓い実践します」。新たなこの社是を胸に、今後も社業に精励する覚悟です。


(本記事は月刊『致知』2024年5月号掲載記事を一部編集したものです

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