戦国最強の武将・武田信玄が説いた「国を滅ぼすリーダー」の条件

戦国最強の騎馬軍団を率い、甲斐の虎と恐れられた武将、武田信玄。混沌窮めるいま、その生き方やリーダーとしてのあり方が再び注目されています。歴史哲学の視点から日本の思想や文化を研究する明治学院大学教授・武光誠さんに、信玄の遺した言葉を紐解きながら、すぐれた将に共通する心構えを語っていただきました。
 ※記事の内容・肩書きは掲載当時のものです

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国を滅ぼす大将の3条件

信玄の元には知謀と武勇にすぐれた家臣が育ったといわれますが、これは信玄独自の人材活用術によるものです。

信玄は家臣の性格を見抜き、気の短い者は長い者と、動きが遅い者は行動の早い者と組み合わせるなど異なる資質の人間がお互いに切磋琢磨しながら組織力が向上できるような仕組みをつくったのです。

信玄は逆に国を弱体化させてしまう将の条件についても言及しています。それが「利巧すぎる大将」「強すぎる大将」「臆病なる大将」です。

どのようなものか、信玄に聞いてみましょう。

「利巧すぎる大将は、自分の才智に自信をもって驕りやすいが、何か一つうまくいかないと必要以上に意気消沈する。このような大将は、自信過剰になって高僧などの有益な言葉にろくに耳を貸さない」

「強すぎる大将は、自分の武芸の腕に対する自信によって、気性が激しく癇が強くなりがちだ。そのため、家臣たちが主君の機嫌を損ねるのを恐れて諫言しなくなり、おべっか者ばかりが主君の周りに集まってくる。おだてられて自分の力を過信し、勝ち目のない強敵に戦いを挑んで滅びる」

また「臆病なる大将」は、例えば次のような条件を持つ人だといっています。

「気性が愚痴っぽく、人をそねみ、金銭欲が強く、お世辞を言われることを好み、物事を深く考えず、無慈悲で細かい心配りができない。人を見る目がなく、機敏さに欠け、融通が利かず、時に重臣を悪しざまに罵るなどの常人として守るべき礼儀に欠ける行動をする」

人を動かすには、これらとは反対に、正しいことをやり抜く「信念」、様々な立場の者の気持ちを理解する「度量」、先を読む「洞察力」の3つが不可欠です。

この3つは長い社会経験の中で徐々に身についてくるものですが、信玄の場合、幼少期の躾や教育、さらに成長してからの修養によるところも少なくなかったと思われます。


(本記事は月刊『致知』2012年1月号 特集「生涯修業」より一部を抜粋したものです)

◉『致知』2021年12月号 特集「死中活(しちゅう かつ)あり」では、武田信玄の菩提寺・恵林寺(えりんじ)住職を務める古川周賢さんがご登場。武田信玄の生き方を通して、先行きの見えない現代社会を生き抜くリーダーの条件や心構えを語っていただきました。人生・仕事の軸を定めるヒントが満載の『致知』2021年12月号は致知電子版】にてお読みいただけます。

◇武光 誠(たけみつ・まこと)
昭和25年山口県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学院博士課程修了。文学博士。現在明治学院大学教授。専門は日本史。歴史哲学の視点で日本の思想、文化を研究。著書に『歴史を動かした名言』(ちくま新書)『昔、日本人は「しつけ名人」だった』(サンマーク出版)『日本人なら知っておきたい神道』(KAWADE夢新書)など多数。

◇武田信玄(たけだ・しんげん)
大永元(1521)年~元亀4(1573)年。戦国時代の武将。名は晴信。信玄は法名。実父・信虎を国外に追放して甲斐の守護となり、信濃一円を制し、上杉謙信などと激戦を繰り返す。京都進出を企てて三方ヶ原で徳川家康を破り、三河に入ったが、病が悪化し53歳で病没。

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