開き直りから生まれた「はやぶさ」

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は22日、探査機「はやぶさ2」が地球から約3億キロメートル離れた小惑星「りゅうぐう」へ着陸したとみられると明らかにしました。

月刊『致知』には、初代「はやぶさ」のプロジェクトマネジャーを務めた 川口淳一郎さんがご登場。開発までのご苦労をお話しいただきました。

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「はやぶさ」プロジェクトも、 言ってみればある種の 開き直りから 始まったことだったんです(笑)。
 
僕がこの計画を形にして提案したのは 1990年代ですが、 検討を始めたのはそのずっと前からです。

その頃、既にアメリカやソ連は 月に行ったり、 火星や金星などの惑星に行くためのプロジェクトを動かしたりしていて、
日本の宇宙科学は 相当遅れていたんです。 NASA(アメリカ航空宇宙局)との差は 歴然でした。
 
それで僕たちはNASAと一緒に 勉強会を重ねながら 「小惑星ランデヴー」を 一つの目標として掲げました。 要は探査機が惑星の 近くにい続けることです。

それだけでも我われにとっては 大きな進歩だと思っていたんです。 ところがNASAは いきなり自分たちだけで プロジェクトを立ち上げて、 それを実現してしまう。

これはとても辛いことでしたね。 僕はアメリカのやりそうなことをやって、 つまみ食いされて二番煎じに 甘んじるのはどうしてもいやでした。 やっぱり我われが本当に目指すべきゴールは 誰もなし得たことのない 「小天体のサンプルリターン」 (小天体の地表のサンプルを採取し 地球に持ち帰ること) だと改めて確認し合いました。

アメリカのやろうとしないものをやる。 その開き直りから「はやぶさ」のミッションは生まれたんです。


 

(本記事は月刊『致知』2017年9月号 特集「閃き」から一部抜粋・編集したものです。いまの時代に求められるのは「人間力」――人生や仕事、人材育成のヒントが見つかる!月刊『致知』のご購読はこちら

川口 淳一郎 (かわぐち・じゅんいちろう)
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昭和30年青森県生まれ。53年京都大学工学部機械工学科卒業。58年東京大学大学院工学系研究科航空学専攻博士課程修了。同年旧文部省宇宙科学研究所システム研究系助手に着任し、平成12年教授に。「さきがけ」「すいせい」などの科学衛星ミッションに携わり、「はやぶさ」ではプロジェクトマネージャを務めた。著書多数。

 

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