2020年08月08日
『致知』特別企画 ≪社員が語る「致知と私」Vol.19≫
社員に致知出版社への入社のいきさつ、『致知』への想い
本日は、副編集長の藤尾允泰を紹介いたします。
ぜひ、ご覧くださいませ。
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「人間は誰しも天から一通の封書を授かって生まれてくる。その封書を開けたらあなたはこういう生き方をしなさいと書いてある」
この森信三先生の言葉を思うにつけ、致知と私の出逢いを遡ると、私が生まれた時から既に出逢うことは定められていたといえるでしょう。あるいは、産婦人科医・池川明氏の「子供は親を選んで生まれてくる」との説に依拠すれば、自らが求めて、出逢うべくして出逢ったのかもしれません。
いずれにせよ、この命は私の意志を超えたところに宿ったものです。幾多の災害や戦争を乗り越えて、先祖からの命のバトンが1回も途切れず連綿と続いてきたこと。その厳然たる事実を噛み締めると、大いなる力によって生かされているとの思い、自らの使命を果たしていきたいとの思いが沸々と湧いてきます。
藤尾社長は私に「致知出版社に入社しなさい」「後を継ぐように」とおっしゃったことは一度もありません。高校3年生の時に、「大学生になったら致知出版社でアルバイトをしなさい」とだけ言われました。1年次は管理部で、2年次から書籍編集部でアルバイトをしました。幼少期に『論語』や『修身教授録』の輪読会を家族全員で開いてくれたり、伝記シリーズが書棚にあったりしたため、本を読んだり、文章を書くのはもともと好きでした。ゼロの状態から1冊の本が創られていく過程に携わる中で、編集の仕事の面白さ、奥深さにどんどん魅了されていったのです。
とはいえ、その頃から父親の会社に就職しようと考えていたわけではありません。転機が訪れたのは、月刊『致知』の創刊30周年記念式典に参加した20歳の時のこと。全国各地から集う1000名以上の読者の方々と触れ合う中で、月刊『致知』に対する熱量や愛情を強く感じたのです。
近くにいるとその存在の価値に気づかないとはまさにその通りで、私は生まれて20年、父親が会社の社長をしていることは知ってはいたものの、どれだけ世のため人のためになる尊い仕事をしているのかは、全く認識していませんでした。その時に初めて、読者の方々から、自分の父親の偉大さ、致知出版社の役割や期待の大きさを教えられ、進むべき道が明らかになったのです。
大学3年生となり、就職活動がスタート。当時はまだ新卒で致知出版社に入るか、他の会社で何年か修業を積んでから致知出版社に入るか、迷っていました。周囲からは「ちゃんと就職活動をして、社会の荒波にもまれたほうがいい」と言われ、いくつか会社説明会や採用試験を受けていました。
しかし、ある時その迷いは消え去りました。新卒で致知出版社に入ろう。そう決めたのです。藤尾社長の思いを受け継ぎ、次世代の『致知』を担っていくのが私の使命である。致知出版社に一生骨を埋めるのなら、最高の師匠である藤尾社長と一緒に働く時間、直接ご指導いただける時間をできる限り長く持ったほうがいいと思い至りました。
この時の体験から、人生で何か決断に迷った時、一方が正解、もう一方が間違いということはなく、自分が信じた道、自分が決めた道が正解であり、また自分の選択、決断に後悔することのないよう、それを正解にすべく努力を積み重ねることが大切なのだと感じています。
最後に、いま私の心に強く響いている森信三先生の言葉を紹介します。
「道の継承は少なくとも三代の努力を要せん。したがって、継承者は師に劣らぬだけの気迫と精進が必要である」
現在、入社10年目、取締役兼副編集長という大変責任ある立場(人爵)を与えていただいています。今後も共に働く仲間のため、社長のため、読者のため、人生を真剣に生きるすべての人のために、月刊『致知』の編集・普及業務に邁進すると共に、これまで藤尾社長が経営者として培ってこられた不易の部分を継承すべく、天爵を修めてまいります。