【第11回】佐藤勝人 快刀乱麻を断つ 仕事と人生に役立つ実践的問答 ——「年賀状に込める〝経営の哲学〟」

栃木県内に商圏を絞り、「地域一番化戦略」で圧倒的シェアを誇るサトーカメラ。同社副社長の佐藤勝人さんはビジネス書作家として12作目を出し、商業経営コンサルタント、Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」と情報発信を含め、全国各地の商工会議所で講演やセミナー、さらに企業や商店の現場へ出向いて個別支援をし、経営者育成塾「勝人塾」も主宰されています。

本連載ではそんな佐藤さんに、現代ビジネスマンから寄せられた悩みや胸の内の葛藤、さらには社会情勢までも「勝人節」でズバッと答えていただきます。

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中小企業だからこそできる「心の経営」

兄弟でサトーカメラ事業を展開し、従業員を雇い始めて38年になります。それ以来、毎年欠かさず続けていることがあります。それは、全従業員に私自身から年賀状を送ることです。

いまの時代、年賀状など古いという声もあります。メールやLINEの方が本人に早く、便利で、コストもかかりません。けれども、私はそれを「ビジネスパーソンとしてのマナー」だと考えています。

なぜなら、年賀状というのは“本人”だけに届くものではないからです。そのハガキは、従業員の家族の目にも必ず触れます。そして、そこに書かれた言葉を通して、会社という組織がどんな価値観で人を大切にしているかが伝わるのです。

毎年この時期になると、私は社員全員分の住所録を前にしながら、一人ひとりの顔を思い浮かべてペンを取ります。会社全体に向けた抱負や理念は印刷していますが、 必ず手書きで一言を添えるのが私の流儀です。

「大きなプロジェクトをよくやり遂げたね」「お子さんの入学おめでとう」「体調に気をつけて、また一緒に頑張ろう」 ——そんな一言を、その人の1年を思い出しながら書き添えます。

もちろん時間も手間もかかります。100人を超える従業員の一人ひとりに書くわけですから、それだけで年の瀬の貴重な時間が丸一日消えることもあります。しかし、私はそれを「無駄」だと思ったことが一度もありませんでした。むしろ、経営者としての「原点に立ち返る時間」だと感じています。

想像してみてください。もし、あなたのご家族が勤めている会社の社長から、年賀状が届いたとしたら。しかも、印刷された文面だけでなく、手書きで「よく頑張ってくれました」と添えられていたら、家族はどう感じるでしょうか。

「うちの子を見てくれている会社なんだな」と、きっと誇りを感じるはずです。そうした「誇り」や「安心感」は言葉ではなく、姿勢でしか伝わりません。そしてそれこそが、組織の信頼の土台をつくるのです。

私はいつもこう考えています。経営とは「人を動かすこと」ではなく、「人の心を動かすこと」だと。人の心は、効率や利益の言葉だけでは動きません。それを動かすのは、「この人と働きたい」「この会社で成長したい」と思える関係性と信頼です。そしてその信頼を築くのは、日々の小さな行為の積み重ねなのです。

年賀状とは、まさにその象徴です。1年の締めくくりに、社長自らが手を動かし、社員とその家族に“感謝”を形で伝える。それは大企業ではなかなかできないことです。中小企業経営者だからこそできる、成せる業なのです。

私はこの38年間で、何千通もの年賀状を書いてきました。社員の成長を見守り、結婚や出産の報告を受け、時には退職した元社員からも年賀状が届きます。そこに「社長からもらったあの一言が忘れられません」と書かれていると、この習慣を続けてきて本当によかったと思います。

デジタルの時代だからこそ、人の手による「ひとことの温度」が、心に残る。その積み重ねこそが、人と人、心と心を繋ぐ〝経営の本質〟なのだと思います。
これからも私は、1枚の年賀状に心を込め、人を想い、組織を育て続けていきたい。それが私の〝心の経営〟の原点です。 Dont miss it


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◇佐藤勝人(さとう・かつひと)
サトーカメラ代表取締役副社長。日本販売促進研究所.商業経営コンサルタント。想道美留(上海)有限公司チーフコンサルタント。作新学院大学客員教授。宇都宮メディア.アーツ専門学校特別講師。商業経営者育成「勝人塾」塾長。(公式サイト)
栃木県宇都宮市生まれ。1988年、23歳で家業のカメラ店を地域密着型のカメラ写真専門店に業態転換し社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念のもと、栃木県エリアに絞り込み専門分野に集中特化することで独自の経営スタイルを確立しながら自身4度目となるビジネスモデルの変革に挑戦中。栃木県民のカメラ・レンズ年間消費量を全国平均の3倍以上に押し上げ圧倒的1位を獲得(総務省調べ)。2015年キヤノン中国と業務提携しサトーカメラ宇都宮本店をモデルにしたアジア№1の上海ショールームを開設。中国のカメラ業界のコンサルティングにも携わっている。また商業経営コンサルタントとしても全国15ヶ所で経営者育成塾「勝人塾」を主宰。実務家歴39年目にして商業経営コンサルタント歴22年目と二足の草鞋を履き続ける実践的育成法で唯一無二の指導者となる。年商1000万〜1兆円企業と支援先は広がり、規模・業態・業種・業界を問わず、あらゆる企業から評価を得ている。最新刊に『地域密着店がリアル×ネットで全国繁盛店になる方法』(同文館出版)がある。Youtube公式チャンネル「サトーカメラch」「佐藤勝人」でも情報発信中。 

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