『二宮翁夜話』が説く、世の中の悩みを救う道

江戸時代、徹底した合理主義と類い稀な行動力で荒廃した600余村を再建し、代表的日本人の1人と称えられる二宮尊徳。その尊徳の身辺で4年間暮らした門人・福住正兄が翁の言行をまとめた不朽の名著『二宮翁夜話』が、報徳記念館初代館長・佐々井典比古氏の読みやすい現代語訳となって甦りました。本書の中から、「わが身に徳を積む」、「世の中の悩みを救う道」の2つの教えをご紹介します。

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わが身に徳を積む

翁のことばに、若い者は、毎日よく勤めはげむがよい。それは、わが身に徳を積むことなのだ。

なまけ怠るのを得だと思っていたら、大きな間違いだ。徳をつめば、天から恵みのあることは目に見えている。

いま、雇い人をたとえにすれば、あの男はよく働いてまじめだから、来年はおれの家に頼もう、といわれたり、よく勤めたら婿にもらおう、といわれるようになるものだ。

反対になまけ者だったら、ことしは取り決めたからしかたがない、来年は断ろう、というようになるのは眼前のことだから才知の乏しい者でも、よく気をつけ、よく反省して、身に過ちのないようにせねばならぬ。

過ちはわが身のきずになるのだ。

古語(孝経)に、「身体髪膚これを父母に受く。あえて毀傷せざるは孝の始めなり。」とある。

ひとは、過ちをすれば身のきずになることを知らないで、けがさえしなければよいと思っているが、それは間違いだ。

過ちは身のきずになるばかりでなくて、父母兄弟の顔まで汚すものなのだ。慎まずにいられようか。

世の中の悩みを救う道

翁のことばに、からだで1箇所悩むところがあれば、全身がそのために悩むのは、だれでも知っていることだ。

脳でも胃でも肺でもみんなそうで、はなはだしいときは死んでしまう。

これは、からだが一体だからだ。国でも家でも同じことで、一家に借財があれば家ぢゅうそのために悩むし、一国が凶作なら国ぢゅうがそのために悩むことも、だれでも知っていることだ。

そこで、一身でも一家でも一国でも、悩むところがないようにしようとするのを、衛生といい勤倹といい、また泰平を祈るという。

ところで、一家に借財が多ければ、家人の身に及んで、神経を悩ますようになるが、これまた、だれでも知っていることだ。

当今の世の中は驕奢の風が盛んなため、この悩みが多い。

この悩みがはなはだしくなれば、家を失い身を失うようになる。まことに哀れむべき限りだ。

これを自業自得といえばそれまでの話だけれども、自業自得は家長ひとりのことで、老幼婦女はその相伴をするのだ。いたましいことではないか。

そこでこれを救う道を考えてみると、私の立てた報徳金貸付の道が第一だ。

どうしてかといえば、この報徳金の貸付は、太陽の神徳と同様に、功徳の広大なものだ。

それというのも私が数年心を尽して考え、数年みずから取り扱って経験した方法で、天地が万物を生育したもうて恵まぬ所とてない、その天地の徳に範をとったものだからだ。

本記事の内容は、『二宮翁夜話』(福住正兄・原著、佐々井典比古・訳注)より抜粋しています。
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報徳仕法という独自の理論によって600を超える村々を窮乏から救った農政家・二宮尊徳(金次郎)。他に類を見ない財政家であり思想家、土木技師でもあった尊徳だが、その存在は日本人の間から次第に忘れられつつある。「倦まず弛まず」の言葉の如く、常に率先垂範で農村改革を推進した尊徳に私たちが学ぶべきものは多い。その歩みや信条を二宮総本家当主・二宮康裕氏と、弊誌にて「二宮尊徳 世界に誇るべき偉人の生涯」の連載を始めた作家・北 康利氏に語り合っていただいた。【詳細・購読は下記バナーをクリック↓】



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◇二宮尊徳(にのみや・そんとく)
1787年相模国栢山村(現・神奈川県小田原市)に生まれる。1811年小田原城下で武家奉公する。1822年桜町領(現・栃木県真岡市)仕法開始。1842年幕臣に登用される。その生涯に600余村の復興にあたる。1856年死去。

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