「働くとは傍(はた)を楽にすること」──『古事記』が示す日本人の魂の原点

日本の歴史や伝統文化に精通し、教育を通じての国づくりに尽力してきた自由民主党の参議院議員・山谷えり子さん。激動の時代を生きる中で、私たちがいま立ち戻るべき原点──『古事記』に記された日本古来の精神を紐解いていただきました。
 ※記事の内容は掲載当時のもの

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日本建国の三大精神

『古事記』には日本人のアイデンテイティがよく表れています。

例えば「働く」という点についても、神々は嬉々として機織りや稲作に取り組んでいます。その根底には「働くとは傍(はた)を楽にすること」という価値観があり、労働を苦役と捉えた『聖書』とは大きく異なります。この違いは現代でも日本人と欧米人との労働観の違いに繋がっていると思います。

そもそも天照大神は孫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が高天原から豊葦原瑞穂国(とよあしはらのみずほのくに)の高千穂の嶺に降臨する時、三つのお言葉を与えています。それが日本建国の「三大神勅(しんちょく)」です。

一つは「天壌無窮(てんじょうむきゅう)の神勅」です。

「豊葦原瑞穂国は、私の子孫が中心となって治める国です。孫であるあなたが行ってまず治めなさい。あなたは、天の神の御心を地上に実現する貴い使命があります。天の神の子としての誇りをもって、この国を素晴らしい国にしなさい。その貴い御位も、天の子孫を中心とする国柄も、これからどこまでも栄え、天地とともに永遠に続くでありましょう」

瓊瓊杵尊のひ孫が神武天皇にあたるわけですが、天壌無窮の神勅は日本は「万世一系」で継承発展していくことを意味するのではないでしょうか。

二番目は「斎庭(ゆにわ)の稲穂の神勅」です。「稲を地上に植えて、この国を実り豊かで安定した国にしなさい」とおっしゃって、稲作に励むようお伝えになりました。

三番目は「宝鏡奉斎(ほうきょうほうさい)の神勅」です。常に心に鏡を持つこと、それは常に自らを省みることを意味します。

この三大神勅は、言ってみれば日本建国の精神です。フランスがフランス革命で打ち立てた「自由、平等、博愛」や、アメリカがイギリスからメイフラワー号でやってきて、「自由と独立」を掲げたのと同じ。その精神がなくなったら、その国をその国たらしめているものがなくなるのです。

日本にとって「天皇の万世一系」は、単に世襲制ということではありません。稲作も単なる米づくりではないのです。

現在、女性宮家を創出して女系天皇を認めていこうという動きやTPP問題などもありますが、建国の三大神勅に照らし合わせたら自ずから答えが見えてきます。いま『古事記』の存在を忘れてしまっているから、方向性が見えなくなっているのではないかと思います。


(本記事は月刊『致知』2012年6月号 連載「意見・判断」より一部を抜粋したものです)

◉月刊『致知』2022年1月号では、山谷えり子さんと高千穂神社宮司の後藤俊彦さんに、日本古来から伝わってきた神話をより深く紐解きながら、日本人の精神・生き方の源流について語り合っていただきました。皇紀2681年、統一国家として世界最古の歴史を有する我が国の原点、私たちの魂の故郷、日本人が日本人たる所以とは何かを気づかせてくれる対談です。記事詳細はこちら

山谷えり子やまたに・えりこ
昭和25年東京都生まれ。48年聖心女子大学卒業後、新聞記者、テレビキャスター、コラムニストとして活躍。平成12年衆議院議員初当選。16年参議院議員(全国比例区)当選。第一次安倍内閣では総理大臣補佐官(教育再生担当)として60年ぶりの教育基本法改正に尽力。第二次・第三次安倍内閣では、国家公安委員会委員長、拉致問題担当大臣、海洋政策・領土問題担当大臣、国土強靱化担当大臣、内閣府特命担当大臣(防災)として入閣。著書に『新しい「日本の歩き方」』(扶桑社)など。

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