子供との会話で意識すべき3つのポイントとは?<高山静子×成田奈緒子>

現在の日本では親と子を巡る悲惨な事件や教育現場での不祥事が後を絶たちません。どうすれば子供たちの明るい未来をつくることができるのか――。長年、子供の教育のあり方、親子が抱える問題に向き合ってきた東洋大学元教授の高山静子さんと小児科医で文教大学教授の成田奈緒子さんに、具体的な子育ての実践を交えて語り合っていただきました。
(本記事は『致知』2025年8月号 対談「言葉の質と量が子供の明るい未来をつくる」より一部を抜粋・編集したものです)

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子供の脳を育てるフルセンテンス言葉

<成田>
脳科学的に見ても、特に幼児の時には、耳から入ってくる音が心地よいから聞くんですね。一方、不快な音、刺激であれば脳は本能的にブロックするようにできているんです。

ですから、子供に伝える言葉も、基本的には心地よいものでなくてはいけません。

要するに、高山先生がおっしゃった会話、言葉のキャッチボールが成り立つことが大事で、例えば同じ言葉でも、強い口調で「あんた宿題やったの?」と問い詰めると子供も「うるせえ!」と反発しますが、「宿題、やったの?」と優しく問いかければ、「いま別のことをやっているけれど、後でちゃんとやるから」と、言葉の届き方が全然違うんです。

ちょっとした違いですけれども、アクシスに相談に来られる親御さんたちに実践してもらうと、本当に親子関係、子供の態度が変わってきます。

<高山>
私が研修などでお伝えしている子供との会話のポイントは、①子供の言葉をよく聞く②応答的に会話をする③子供がたくさん話せるようにする、の3つです。

例えば、公園で子供が遠くの犬をじっと見ていたら、「大きな犬がいるね。わんわんのところに行ってみる?」と尋ねます。すると、ゼロ歳の子供でも、「あー」とか「うー」とか、必ず何かしらの反応をしてくれますから、それにきちんと耳を傾けて、また「そうだね」「わんわん、走るの速いね」などと応答してあげるんです。

幼稚園児や小学生であれば、その日のお風呂や寝る前にきょうの出来事を聴く時間をつくってもいいでしょう。親子の毎日の会話の積み重ねの中で、子供は言葉を覚えて、会話できるようになっていきます。残念ながらテレビやタブレットでは言葉は増えないんです。

<成田>
本当にその通りです。私も「親が一方的に子供に話しかけるのではなく、子供の言葉を引き出すことが大事ですよ」と、親御さんたちによく伝えています。

<高山>
その他、子供との会話で大事なのは、生活のルールや社会のルールを伝えること。また日々の生活についてもできるだけ丁寧に説明することです。

子供とお出かけする時でも、「きょうはどこどこに行くよ」「〇〇駅から〇〇駅まで電車に乗るよ」と説明し、駅でも「これから改札に入るよ」「この車両は混んでいるからもっと後ろの車両に乗ろうね」ときちんと言葉で状況を説明する。子供が電車で大声を出してしまったら、「静かにしなさい!」と叱るのではなく、「電車の中では小さな声でお話ししようね」と、どのような行動をとればよいのかルールを何度も繰り返し伝えます。
この中で子供は自分の中にたくさんの言葉を蓄積していき、周りの状況やルールを理解して行動できるようになっていくんです。

ですから、それがなかなかできない親御さんには、「我が子が海外から来た王子様だったら」と考えてくださいと(笑)。王子様に対してなら、必ず何事も礼儀正しく丁寧に教えていくでしょう。

<成田>
全く同感です。私は「フルセンテンス言葉」と言っているんですけれども、自分の子供にもゼロ歳の時から、「きょうはお出かけをするので、いまから駅に行って、電車に乗って、3つ目の駅で降ります」みたいに何でもきちんとフルセンテンスで会話、説明していました。でも、それを日常で実践している親御さんは本当に少なくて、だいたい一言、二言の会話で済ましてしまっています。

<高山>
大人が豊かな言葉を使おうと意識していないと、子供が何か話しかけてきても、「上手ね」とか「すごいね」とか一言、二言を返して会話が終わりになってしまいがちです。これでは語彙力も高まっていきません。

<成田>
機嫌よく遊んでくれるからと、もう一歳くらいの子供にスマートフォンやタブレットを持たせている親御さんをよく目にしますが、これも子供の発育にとって本当によくないことだと思います。

<高山>
ええ、我が子にしっかり育ってほしいと願うなら、電子ベビーシッター(スマホ等)に子守をさせないことです。

人間の脳は会話を含めて人との関わりの中で発達していきます。一方的に高速の視覚情報が届けられるスマホの映像を見続けていると、視覚を処理する脳の部位だけが発達し、語彙力もコミュニケーション能力も育ちません。経験の量に比例して能力は育ちます。親よりも子供時代の経験が少ない子供は、残念ながら親よりも運動能力も学力も低くなることが予測されます。


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◆子育ての問題・課題に向き合い続けてきた2人
◆人生を変えた1冊ルソーの『エミール』
◆子供の症状の裏に隠れている家庭環境
◆大人の言葉の量と質が子供の語彙力を決める?
◆子供の脳を育てるフルセンテンス言葉
◆家庭環境を整えることで子供の心と体も安定する
◆子育ての基本は食事・睡眠・運動
◆変えられるのは自分自身と未来だけ

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◇高山静子(たかやま・しずこ)
昭和37年静岡県生まれ。自身の出産・子育てを機に保育士の資格を取得し、保育園に勤める。その後、地域の子育て支援に携わり、九州大学大学院に進学。平成25年4月より東洋大学ライフデザイン学研究科教授。令和7年退職、主に現在は保育者向けの研修活動に尽力。著書に『0~6歳 脳を育む親子の「会話」レシピ』(風鳴舎)など多数。訳書に『3000万語の格差―赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』(明石書店)がある。

◇成田奈緒子(なりた・なおこ)
昭和38年宮城県生まれ。神戸大学医学部卒業、医学博士。米国セントルイス・ワシントン大学医学部、獨協医科大学、筑波大学基礎医学系を経て、平成17年より文教大学教育学部特別支援教育専修准教授、21年より同教授。26年子育て支援事業「子育て科学アクシス」を設立、代表に就任。著書に『誤解だらけの子育て』(扶桑社新書)、共著に『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SB新書)『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(講談社)など多数。

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