【取材手記】元専属広報が語る長嶋茂雄の素顔

~本記事は月刊『致知』2025年9月号 特集「人生は挑戦なり」掲載記事(長嶋茂雄 その努力と挑戦の人生)の取材手記です~

安岡正篤先生の著作を愛読していた長嶋茂雄さん

『致知』9月号の特集テーマは「人生は挑戦なり」。6月3日に逝去された元読売巨人軍監督の長嶋茂雄さんの人生は、まさにその言葉通り挑戦に次ぐ挑戦の人生だったといってよいでしょう。この特集にて長嶋さんの人生を取り上げることは編集部の全員が納得するところでした。

さて、では誰に長嶋さんの人生を語っていただくのか。長嶋さんをよく知る野球界の大御所の方、野球評論家の方、親しく指導を受けた野球選手やOBの方、いろいろなアイデアが出ましたが、約半世紀、公私ともに長嶋さんと行動を共にしてきた元専属広報の小俣進さんが最も適任ではないかということになり、早速取材を依頼。長嶋さんの逝去後、取材が殺到していたとのことでしたが、快く依頼に応じてくださいました。

取材場所は横浜の中心部のとある喫茶店。ご挨拶し店内に入ろうとすると、小俣さんが開口一番、「致知出版社さんは安岡正篤先生の本をたくさん出されていますよね。実は長嶋監督は安岡先生の本をよく読まれていたのですよ」。この一言で長嶋さんとの距離感が一気に縮まるのを感じました。

「監督は間違いなく努力、挑戦の人だった」

小俣さんは巨人軍入団後、1軍の中継ぎ投手として活躍。現役を引退してからは巨人軍の打撃投手を経て第2次長嶋政権(1993~2001年)から長嶋茂雄監督専属広報となり、その後、スカウト、終身名誉監督付き総務部主任などを歴任されました。取材内容は、長嶋さんと小俣さんとの出会い、約半世紀行動を共にする中で学ばれたことや忘れがたい思い出、長嶋さんの願いなど多岐に及びました。

小俣さんのお話は長嶋さんのお人柄が伝わるとても興味深いものばかりで、世間ではあまり知られていない逸話も紹介されています。詳細はぜひ『致知』でお読みいただきたいと思いますが、心に響いたのは小俣さんの次のひと言でした。

「監督について世間の人たちは『感性の人』『天才』などの言葉で表現しますが、私に言わせれば間違いなく努力、挑戦の人です」

その一つの例として中心選手だった松井秀喜さんの熱血指導ぶりを挙げられていました。

「マンツーマンによる特訓を(私は)間近で見たことがありますが、監督は松井さんが振るバットの音に真剣に耳を傾けながら、その出来不出来を判断していました。驚いたのは、バットを振る松井さんだけでなく、松井さんのバットの音を集中して聞く監督もまた汗だくだったことです」

長嶋さんの挑戦の人生は監督を退いた後も続きます。

それを何よりも物語るのが、2004年、68歳の時に脳梗塞で倒れた後の驚くべき執念だったと小俣さんは語ります。その頃、終身名誉監督付総務部主任として監督の秘書的な立場にあった小俣さんは、長嶋さんが倒れて4、5日間、病室前のソファーでボディガードを兼ねて寝泊まり。主治医の診断は「重症で、歩くことはおそらく困難でしょう」というものでした。ところが、僅か4日目にはベッドから起き上がり、一か月ほどで歩けるまでに。「それは奇跡とも言うべき回復力だった」と小俣さんは述懐されています。

「リハビリも単なるリハビリではなく、重しで負荷を掛けてグッと引き上げるというトレーニングそのものでした。強い痛みが伴うものですが、監督はそれに耐え抜いたのです」

小俣さんは監督と共に歩んだ半世紀を振り返りながら、最後に次のように語られています。

「監督と共に歩いた日々を振り返ると、毎日が緊張の連続でした。緊張といっても決して怖い存在だったわけではありません。接していると常にいろいろな新しい発見があるのです。選手、監督時代も、そして闘病して苦難の時期を過ごしている時も、監督は常に挑戦のオーラを放っていました」

本記事を通して、長嶋さんの本気のオーラに触れてみてはいかがでしょうか。本号では長嶋さんをはじめ、スポーツ、経営、医療など様々な分野で活躍される方々の挑戦の人生をご紹介しています。それぞの人生の中から、心の糧となるものを得ていただけたら、編集者として何よりの喜びです。

本記事の内容 ~全4ページ~
◇長嶋監督がやり残したこと
◇「逃げるな、しっかり勝負して打たれろ」
◇取材には真剣に応じる
◇闘病時の驚くべき執念
◇常に挑戦のオーラを放っていた

『致知』2025年9月号 特集「人生は挑戦なり」
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