「一球一球にベストを尽くす」——〝卓球の鬼〟平野早矢香の原点

全日本卓球選手権3連覇を含む5度の日本一に輝き、2012年のロンドンオリンピックでは卓球女子団体戦で史上初の銀メダルを獲得した平野早矢香氏。世界の強豪と死闘を繰り広げてきた氏は、いかに己を高め、その才能を開花させたのでしょうか。鬼気迫るプレースタイルから〝卓球の鬼〟との異名を取った氏の原点となった、学生時代の挑戦と葛藤を振り返っていただきました。
(本記事は月刊『致知』2025年6月号 連載「二十代をどう生きるか」より一部抜粋・編集したものです)

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苦節10年で掴んだ日本一の頂

私は〝卓球の鬼〟と呼ばれていたからか、世間の人々にはメンタルが強い印象を持たれています。しかし、自分のことをメンタルが強いと思ったことは一度もありません。試合前にはトイレに2回行くほど、緊張しがちの性格でした。

特に学生時代は弱いメンタルが顕著に表れ、トップ選手が小学生の時から大舞台でも動じずに日本一を掴む一方、私は中学3年間も日本一には届きませんでした。両親の反対を押し切り、恵まれた環境で卓球にのめり込んだにも拘らず、大事なところで勝ち切れない。私は日本一に縁がないのかなと、心の片隅で考えていました。

その考えが大きく変わったのは2000年、高校1年生時の全日本選手権ジュニアの部です。準決勝の最中、腕を痛めてしまったのです。何とか決勝まで駒を進めたものの、準決勝が終わった直後はバッグさえ持てない状態でした。

それまでの私は勝利への欲求が強すぎる余り、自分がしなければいけないプレーをできずにいました。しかし、幸か不幸か腕を痛めたことで、もうやることをやるしかないと、目の前の相手と目の前の一球に意識を向けられるようになりました。持てる力をすべて出し切ろう。その一心で自らを奮い立たせ、治療を受けて決勝戦の舞台に立ったのです。

がむしゃらに、一球一球にベストを尽くす。痛みを堪えながらで思うような試合運びはできませんでしたが、渾身の力を込めて腕を振り、最後の一球まで追いかけ続けました。その一方で、対戦相手は何度も優勝経験を持つ実力者です。この試合に勝てば、世界選手権に出られるとの考えが少なからず脳裏にあったのでしょう。試合の後半は、ミスを恐れた消極的なプレーが目立っていました。

この意識の差が勝敗を分けたように思います。試合の結果ではなく、自分のやるべきことに意識を向け最後まで戦い抜き、初めて日本一のタイトルを掴み取りました。

一つの目標を達成するために、10年の歳月を懸けて真摯に向き合い、全力を尽くした経験は、長い人生で考えると大きなプラスになったと感じています。


~本記事の内容~(3ページ)
◇夢を追いかけ続けた二十代
◇苦節十年で掴んだ日本一の頂
◇「絶対に逃げるな!」
◇日本卓球界初の栄光の舞台裏
◇いい結果に繋げるために

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◇平野早矢香(ひらの・さやか)
昭和60年栃木県生まれ。5歳で卓球を始め、仙台育英学園秀光中学校・仙台育英学園高等学校に進学。平成15年高校卒業後、ミキハウスに入社。18歳で全日本卓球選手権・女子シングルス初優勝。その後19年から全日本選手権3連覇達成、通算5度の日本一に輝く。24年ロンドンオリンピックでは団体戦で銀メダルを獲得。28年4月に現役引退。現在はミキハウススポーツクラブアドバイザーとして後進の指導に務めている。

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