2025年09月08日
情報通信業界のリーディングカンパニーとして知られるフォーバル。日本を代表する人材教育コンサルティング企業のアチーブメント。それぞれの会社を創業した大久保秀夫さんと青木仁志さんは15年来の親交があり、お互いに尊敬し合う関係です。共に波瀾万丈な少年時代を過ごし、裸一貫で起業。幾多の試練を乗り越え、今日の発展の基礎を築いてきたお二人の原点にあった母の愛とは――。(本記事は月刊『致知』2022年8月号 特集「覚悟を決める」より一部抜粋・編集したものです)
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不遇な家庭環境をバネに
<大久保>
これまで何を原動力に生きてきたのかなと思ったら、僕は常に怒りなんですよね。何かおかしい、変だなと思うことに対して、見て見ぬふりができない。正義感というか、許せない気持ちが自分の行動に繋つながってきたんだなと。裏を返せば、皆が幸せになってほしいということでもあるんです。
そんな僕の性格や考え方を築いたのはやっぱり母だと思います。
<青木>
お母様の影響ですか。
<大久保>
実は僕、5歳の時に車に轢(ひ)かれて死にかけているんですね。交通事故に遭った時、「息子さん、即死です」という電話が母に入ったそうです。駆けつけた救急隊員も病院までもたないだろう、医者も手術はできないと諦めた。
けれども母が縋(すが)るような思いで病院の先生に懇願し、大きな病院に転院して手術をすることになったんです。そうしたら奇跡が起きまして、小さい身体では耐えられないだろうと思われた大がかりな手術に耐え、何とか生還することができました。
その後、医者から「一生歩けない」と言われたにも拘かかわらず、6年間、懸命にリハビリを続けたことで歩けるようになりました。中学では陸上部に入って激痛に耐えながら日々練習に励み、3年次には陸上で有名な私立高校からスカウトされるまでの選手になったんです。
<青木>
驚異的な回復力ですね。
<大久保>
そんな過酷な少年時代の中で、母がいつも言っていたのは「あなたは一回死んだのよ。でも神様が特別に命をくれた。だからこれからは、世のため人のために生きなきゃいけない」と。
<青木>
心に沁みる言葉です。
<大久保>
事あるごとにしつこいくらい言われるものですから、喧嘩になることもありましたが(笑)、「世のため人のために生きる」ということが嫌でも染みついちゃったというのが本音ですね。それが僕の原点です。
<青木>
いま大久保さんの話を聞いていてすごく共感するというか、相通じるんだなと思いました。
私の原点は、3歳の時に両親が離婚し、父の再婚相手から非常に厳しい〝訓練〟を課されたことです。義理の母に鍛えていただいたおかげで、「不満足な人間関係に起因するあらゆる不幸をこの世からなくしていきたい」と志すようになりました。
私は子供の泣き叫ぶ声、いじめだとか虐待だとか理不尽なことが大嫌いなんですよ。あと、肌の色で差別する。うちの会社には現在、在日の韓国人や中国人もいれば、親がフィリピン人という社員もいます。その人本来の素晴らしさがあるのに、色眼鏡で見て人を裁くことはすごく嫌いです。そういう意識は子供の頃から強かったのだと思います。
また、貧しい家庭でしたから、パンの耳を10円で買って食べるという生活を余儀なくされ、小学生の時から新聞配達をしていました。北海道函館市に住んでいましたが、冬でも毛糸の手袋をした記憶なんかない。薄い軍手です。でもいまは感謝しています。
貧しかったから豊かになりたかったし、人間関係で苦しめられたから理不尽をなくしたかったということですね。
<大久保>
ご自身が幼少期に辛い体験をしたからこそ、よりよい社会をつくろうと。素晴らしい志です。
<青木>
いま日本の社会にある様々な不幸の原因というのは、不満足な人間関係が引き起こしているんです。ハーバード大学の研究でも発表されているんですけど、年収が800万円以上あれば、あとは身近な人との良好な人間関係が幸福の鍵であると。
批判する、責める、文句を言う、ガミガミ言う、脅す、罰する、目先の褒美で釣る。こういう苦痛を与えるマネジメントは人間関係を破壊します。家庭や学校や職場、あらゆるところでこの間違った手法が蔓延している。
そうではなくて選択理論という心理学に基づき、傾聴する、支援する、励ます、受容する、信頼する、尊重する、意見の違いについて常に交渉する。これが人間関係を構築していくんです。
<大久保>
冒頭、社会に出て今年で50年とおっしゃいましたので、僕より社会人歴は上ですね。
<青木>
私は17歳の春に高校を中退して家出し、アルバイトで貯ためたお金をポケットに入れて青函連絡船に乗り込みました。先ほど言ったような家庭環境に育つ中で、東京で暮らす実母に会いたいとの気持ちが募っていったんです。
八王子の鉄工所に住み込みで働き始めたところ、その年の夏に、ある女性が私を訪ねてきました。何と実母だったんですね。私が八王子にいると知って、市内にある鉄工所を一軒一軒捜し歩いて見つけてくれたんです。
<大久保>
お母様の深い愛情が伝わってきます。
<青木>
もしこの時、母の愛を知ることができていなければ、全く違う人生になっていたと思います。
◎『致知』2025年10月号 特集「出逢いが運命を変える」に青木さんがご登場!!
ナポレオン・ヒル財団CEOのドン・グリーンさんとアチーブメント会長兼社長の青木仁志さんの対談は、今年3月に東京・六本木の国際文化会館でアチーブメントのスタッフによる通訳を介して行われました。生まれ育った国は違えども、お二人には貧しい幼少期を経て、ヒル博士の本との邂逅を機に一念発起し、運命が大きく好転、事業家として実績を上げた共通項があります。洋の東西を問わない普遍の成功哲学談義に興味は尽きません。
本記事の内容 ~全9ページ(約13,000字)~
◇ナポレオン・ヒルを通じた運命的な出逢い
◇驚くほど多い二人の共通点
◇アジア人初のゴールドメダル受賞に至った舞台裏
◇全世界1億冊を突破 愛され続ける所以
◇どん底だった23歳で『成功哲学』に巡り合う
◇よい情報に触れることが豊かな人生の扉を開く鍵
◇16歳の貧困少年が図書館で見つけた1冊の本
◇ヒル博士の哲学を生かし最年少支店長からCEOへ
◇経営危機に陥っていた銀行をいかに再建したのか
◇これだけは伝えておきたいヒル博士の言葉と教え
詳細はこちら▼▼
◎アチーブメント・青木仁志社長から『致知』へのメッセージ◎今の日本に求められているものは、如何に生きるかという目的意識をもった指導者の存在だと思います。月刊『致知』は人間学を学ぶことの出来る日本で最も優れた月刊誌であると考えています。良質な情報と出会うことによって、人生の質は間違いなく向上していきます。一人でも多くの方がこの月刊『致知』の購読を通して、より良い人生を生きて頂けることを祈っております。
◇大久保秀夫(おおくぼ・ひでお)
昭和29年東京都生まれ。52年國學院大學卒業後、婦人服メーカー、外資系教材販売会社を経て、55年25歳で新日本工販(現・フォーバル/東証プライム市場上場)設立、社長就任。63年日本最短記録、史上最年少(共に当時)で店頭登録銘柄として株式を公開。平成22年より現職。公益資本主義推進協議会代表理事、東京商工会議所副会頭など、様々な要職も務めている。著書多数。最新刊に『勝ち続ける社長の教科書王道経営8×8×8の法則』(ビジネス社)。
◇青木仁志(あおき・さとし) ◎各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。※動機詳細は「③HP・WEB chichiを見て」を選択ください
昭和30年北海道生まれ。10代からセールスの世界に入り、国際教育企業ブリタニカ、国内の能力開発&人材開発コンサルティング研修企業を経て、62年32歳でアチーブメント設立。平成22年から3年間、法政大学大学院政策創造研究科客員教授として「経営者論特講」の講座を担当。著書は35万部のベストセラーとなった『一生折れない自信のつくり方』シリーズをはじめ62冊ある。最新刊に『経営者は人生理念づくりからはじめなさい』(アチーブメント出版)。