〈取材秘話〉羽生善治×小林研一郎 三十年の交流が生んだ魂の呼応

『致知』2023年4月号「人生の四季をどう生きるか」には、目下、藤井聡太氏との王将戦で日本中が注目する将棋棋士の羽生善治氏に表紙を飾っていただきました。対談のお相手は、世界的指揮者の「炎のコバケン」こと小林研一郎氏。お二人に共通しているのは、一つの道で頂点を極めながらも、なお無限の前進を続けられる姿でした。ここではその取材秘話をご紹介します。

芸術家と勝負師、異分野の二人が語る時

両氏が対談されることになったそもそものきっかけは、昨秋、小林研一郎氏を本誌連載「二十代をどう生きるか」で取材させていただいた折、小林氏が大の将棋ファンであると聞き、30年来の交流がある羽生善治氏との対談企画が、編集会議にて持ち上がったことです。

小林氏はいくつかの大きな演奏会を、羽生氏は藤井聡太氏との王将戦を間近に控えていて、とてもお忙しい時期でしたが、快く依頼に応じてくださいました。

昨年末、都内のホテルで行われた取材では、お互いに顔を見るなり「この度の王将戦出場、誠におめでとうございます」「小林先生こそ、お元気で何よりです」と久々の再会を喜び合い、終始和やかな雰囲気で進行しました。

音楽と将棋。分野こそ異なるものの共に一つの道を極めてきた方だけに、共感される部分も多くありました。自分のことを語るよりも、相手に謙虚に学ぼうとされる姿勢が印象的で、一流の人は決して偉ぶることがないと教えられました。羽生氏は日本中が注目する対局前にもかかわらず、気負いを全く感じさせないほど、どこまでも自然体。そこもプロたるゆえんなのでしょう。

それぞれが味わった人生の四季

もうすぐ83歳になり「世界のコバケン」と仰がれる小林氏が、いまもなおベートーヴェンの世界を追い求めながら呻吟される姿からは、他ならぬ自分自身との闘いを続けられている様子が伝わってきました。

羽生氏は前人未到の七冠や、通算1500勝を達成するという、将棋界でもずば抜けた実績の持ち主。飄々(ひょうひょう)としたお人柄から垣間見られる勝負師の顔は厳しいものでした。

〝ベートーヴェンの行間の宇宙が何を物語っているか、それを読み解くのは果てしなく苦しい道で、それはこれからも続きますが、自分の人生はそれでよかったのではないか。そう思うのです〟――小林氏

 

〝棋士にとって一番大切な課題は、やはり負けた時にどう気持ちを切り替えられるかでしょうね。結果は人のせいにはできないし、自分が選んだ手は完全に自分の責任なんですね。将棋に偶然性というものはありません〟――羽生氏

どちらもプロとしての生き方が滲み出てくる言葉ではないでしょうか。

この対談では、小林氏の音楽の本質を鋭く突いた羽生氏のひと言に、小林氏が思わず感激する場面もあります。それは小林氏が希求し続けた音楽の世界でした。その様子はぜひ誌面でお読みください。

他にも、年に60回の演奏会でタクトを振る小林氏の力の源泉や、指揮者としてオーケストラをまとめる上での心得、羽生氏が理想として追究する棋士の姿、棋士に求められる資質等々、お二人が人生の四季を味わう中で掴み取った、『致知』でしか読めない興味深い人生観、仕事観が満載です。


 

【全10ページ】人生の幸不幸、勝ちと負け……様々な四季を味わう二人に学ぶ

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