AI時代に求められる「学び」と「働き方」をサポートする——イーディーエル社長・平塚知真子さんの挑戦の軌跡、事業に懸ける思い

Google のクラウドアプリ群を活用し、AI時代に合った様々な働き方を提案するイーディーエル株式会社。社長の平塚知真子さんは主婦から会社を設立し、今日まで多くの企業の生産性向上などに力を尽くしてきました。ITに不慣れな人が Google 活用の喜びを知ることでエキスパートに成長、社の発展に貢献した例は少なくないといいます。今日までの歩みを辿りながら、事業に懸ける思いをお話しいただきました。

専業主婦からのスタート

〈平塚〉
AI(人工知能)時代のいま、それに相応しい「学び」と「働き方」が求められています。当社は2006年に創業。生産性向上、業務効率改善など、お客様が抱える様々な課題をクラウドの活用とチームワークによって解決するIT教育を生業にした企業です。いまも全国にいる約20名のスタッフが日々お客様のサポートに当たっています。

私はもともと専業主婦でした。1990年代、二人の子供を育てる中で「子育て中の今」だからこそ母親自身の手で自分たちの子育て環境を少しでも良くしようと、育児情報誌を発行するNPO活動(特定非営利活動)に仲間と共に取り組みました。

筑波研究学園都市の優秀な女性たちを巻き込んだこの活動は地元で注目を集めるようになり、私は子育て支援事業をより深く理解するために都内NPO法人に就職。そこで出会ったのが当時、国立情報学研究所の教授だった数学者の新井紀子先生です。

新井先生は、専門スキルがなくても安全に効率よく組織の情報発信と共有ができる環境が必要だと「ネットコモンズ」というシステムを開発されました。実際、それを活用するとITが苦手でも簡単に情報共有ができるのです。いま思うと新井先生の元で勤務した3年間、情報をどのように取り扱えばいいのか、AI、クラウドとはどのようなものなのかを教えられたことは私の原点と言えるかもしれません。先生の勧めで筑波大学大学院に進み、成人教育学とスクールリーダーシップについて専門に学んだ経験も大切な財産です。

お客様の様々な課題をITを通じて解決に導く平塚さん

経験ゼロの人をエキスパートに

〈平塚〉
イーディーエルを創業したのは、ネットコモンズのシステムが子育てや学校に限らず、もっと幅広い分野に活用されると確信を抱いたことがきっかけです。約50名の在宅ワーカーがお互いにルールを共有しながらパソコン上で5教科の採点を請け負うデジタル採点業務はその一つで、約10年間、事業の柱となりました。

しかし、デジタル技術の進歩は目覚ましく、ネットコモンズはやがて開発方針の変更を余儀なくされ、弊社の事業は大きな壁にぶつかってしまいます。そんな時に出合ったのが Google のアプリ群でした。

Gmail は2003年から使っていましたが、研修のご依頼をきっかけに改めてアプリ群全般について勉強することになりました。 Google が推奨する「アプリを組み合わせて皆で使う」方法は必要な相手に必要な時に安全かつ手間なく情報を共有でき、生産性が劇的に向上することに驚かされました。にもかかわらず、せっかくのツールがまだ全く知られていない実情が見えてきました。

これは企業や教育の現場でぜひとも広めるべきだという強い思いが湧き上がり、いまから5年ほど前にIT教育事業へと舵を切りました。

私たちは研修に当たり、Google の細かいアプリの説明や横文字の多用は極力避け、そのツールにどのようなメリットがあり、どのような成果が出せるのかに説明の力点を置くことにしています。企業や学校現場で働く方の中には、ITに苦手意識を持つ方も少なくないからです。

そういう方々を意識して作製したGoogle 完全習得動画「G-COS(ジーコス)」は弊社の主力商品の一つとなっています。経営を軌道に乗せる上で、この動画は大きな役割を果たしてくれました。

また、創業以来2200人以上にIT活用トレーニングを実施し、経験ゼロの主婦を僅か3か月でITエキスパートに育成、多くのメディアに取り上げられたのも自慢です。

パートナー企業としての貢献が認められ、2年連続で Google から楯を贈呈

人間はどこまでもアナログ的存在であり、無理にデジタル化を推し進めれば反対に効率が失われてしまいます。しかし、ITを使いこなすことで10X(テンエックス:10倍の成果)が得られるのも確かなのです。

ITに不慣れだった人たちが「平塚さんにできるよと言われてやってみたら、本当にできた」と満面の笑みで喜ばれる姿を見る時が、私の一番の幸せです。

お客様と共に成功事例を創り上げる

〈平塚〉
ITツールを使ったサポートの一つとして長野県を拠点に給食サービス受託業務をされているミールケア様の事例をご紹介しましょう。

同社は長年、社内の情報共有を一元化し、業務を効率化する方法を模索されていましたが、部署が多く、それぞれが使いやすいツールを使っていたため、弊社の研修を始めるまでに1年近くかかりました。社内で選ばれた約10名のリーダーに先述の「G-COS」という入門動画を見ていただき、そこで学んだ内容を周囲に広めていただいたところ、半年が過ぎる頃から劇的な変化が訪れました。

例えば、Google のフォームアプリと表計算アプリを連携させることで、注文を受けた商品を、いつまでに発送しなくてはいけないということが一目で確認できるようになり、さらにコメント機能を使えばメールを使わず、その情報に対するやり取りをクラウド上で手軽に完結できます。

ミールケア様での研修の様子。ミールケア様成功事例を知りたい方はこちら

馴染みのある Google ですが、これら知られざる活用法が社員さんには驚きであり、そこから生まれる一つひとつの改善の喜びが仕事の効率化やコミュニケーションの深化、さらには社員さんの自主性、組織の強化に繋がっていったのです。

この他にもオンライン会議や在庫管理など Google の持つ可能性は無限で、病院から食品業、運送業、学校まで業種や事業者の規模も多岐に及んでいます。

組織とは、社員がお互いに情報を共有しながら正しく行動し、社長のビジョンを成し遂げていくものです。当社の事業がその一翼を担えているとしたら経営者冥利に尽きます。

私たちが確信を持って Google のクラウド活用をお勧めするのは、海外を含めて成功事例以外にないからです。経営者の中にはIT化は高額な投資が必要と二の足を踏まれる方もいらっしゃることでしょう。しかし、クラウドの活用は文房具を購入するくらいの気軽さでできることであり、各種ツールを使った小さい改善や成功が積み重なり、やがて大きな改善や成功へと繋がっていくのです。これを「dX(スモールDX)」と呼んでいます。

「共創・貢献・誠実」。これは弊社が掲げる企業理念です。主役であるお客様と共に成功事例を創り上げる役割を果たし、誠実な姿勢で共に夢の実現に向かって貢献できる。そんな企業であり続けたいと思っています。

GmailGoogle Forms および Google スプレッドシート はGoogle LLCの商標です


(本記事は月刊『致知』2023年2月号掲載記事を一部編集したものです)

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◇平塚知真子(ひらつか・ちまこ)
早稲田大学第一文学部(教育学専修)卒業。筑波大学大学院教育研究科修了。出版社勤務、専業主婦を経て大学院に進学。在学中にIT教育会社イーディーエル株式会社を起業し、現在に至る。「Google for Education 認定トレーナー」(個人)および「Google Cloud Partner Specialization Education」(法人)の資格を保有。筑波大学大学院非常勤講師。アルマ・クリエイション株式会社主催「クロスセクター・リーダーズサミット」2年連続最優秀MVP(2019年、2020年)など受賞歴多数。NHK教育番組に「クラウドのプロ」として出演。ITスキルを分かりやすく伝えるセミナーなども積極的に開催。著書にGoogle 10X リモート仕事術』(ダイヤモンド社)などがある。

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