五郎丸歩が世界の名将エディー・ジョーンズに学んだ指導者の条件

2015年のラグビーワールドカップで世界の強豪・南アフリカを撃破するなど、日本ラグビー界を牽引してきた五郎丸歩さん。そんな五郎丸さんに、上に立つ者の心得を身を以て示してくれたのが、当時、ラグビー日本代表を率いていた世界の名将エディー・ジョーンズさんだったといいます。
 ※対談のお相手は、柔道家の井上康生さんです

真のリーダーは自分の背中で示す

〈井上〉
当時の日本代表を率いたのは世界的なラグビー指導者であるエディー・ジョーンズさんでしたが、エディーさんから受けた影響も大きかったのではないですか。

〈五郎丸〉
ええ、エディーさんにはものすごく影響を受けました。

例えば、一番早い選手で朝の5時くらいから練習を始めるのですが、エディーさんは朝の3時から一人で自転車を漕いで、筋トレをして、選手たちが来るのを待ち構えているんですよ。私たちが眠たそうに練習に行くと、汗をかいたエディーさんがにっこりして「おはよう」みたいな感じで(笑)。

しかも、エディーさんは我われが寝ている間も、夜中までコーチたちとのやりとりをずっと続けているんです。それだけでも、本当にすごい人だなと思いました。

〈井上〉
なかなかできることではありません。本当に立派な方です。

〈五郎丸〉
また、コミュニケーションをすごく大事にする方で、選手や関係者一人ひとりに、「大丈夫か?」「疲れていないか?」「チームはうまくいっているか?」と、いつも心配して声をかけてくださるんです。

そんなエディーさんの姿に接して、指導者は偉そうにどんと構えているだけでは成功しないんだ、腹を据えると同時に心配なこと、小さなことをきちんと詰めていける人が組織を勝たせ、最後に花を咲かせることができるんだということを教えられました。

〈井上〉
エディーさんから個人的に掛けられた言葉はありますか。

〈五郎丸〉
いや、私のことは心配していなかったのか(笑)、具体的な言葉を掛けられたことはあまりありませんでした。ただ、ちょうど子供が生まれる時期とカナダでの合宿が重なったことがあって、私はチームには何も伝えずに参加したんですね。

結局、合宿中に子供が生まれたのですが、その時にエディーさんから、「おめでとう」とぬいぐるみを渡されたんです。この時は、そこまで気遣ってくれるのかと、本当に感動しました。


(本記事は月刊『致知』2022年8月号 特集「覚悟を決める」掲載の対談を一部抜粋・編集したものです)

◎本記事には、
・「全く新しい世界にチャレンジする」
・「短所でなく長所を伸ばす」
・「自分の道は自分で決める」
・「南アフリカ戦は奇跡ではない」
・「指導者に求められるのは『熱意・誠意・創意』」

 など、世界の舞台で実績を残してこられたお二人に、覚悟を決めて、自らの人生・仕事を力強く切り開いていく要諦がぎっしり詰まっています。

「致知電子版」で全文をお読みいただけます〉

◇井上康生(いのうえ・こうせい)
昭和53年宮崎県生まれ。父親の影響で5歳から柔道を始める。平成9年東海大学入学。11年バーミンガム世界選手権大会100キロ級優勝を皮切りに、12年シドニーオリンピック柔道100キロ級金メダル、13年全日本選手権大会100キロ級で優勝し、22歳にして3冠王者に輝く。同年東海大学卒業。東海大学大学院体育学研究学科体育学専攻修士課程修了後、綜合警備保障入社。20年現役引退。24年11月より史上最年少で全日本柔道男子代表監督に就任。28年リオデジャネイロオリンピック、男子7階級でメダル獲得。令和3年東京オリンピックでは史上最多5個の金メダルに導き、9月末で監督を退任。現在はJOCパリ五輪対策プロジェクトリーダー、全日本柔道連盟の強化委員会副委員長などを務める。

◇五郎丸歩(ごろうまる・あゆむ)
昭和61年福岡県生まれ。両親の影響で3歳からラグビーを始める。平成13年佐賀工業高校入学、3年連続で花園に出場。16年佐賀工業高校卒業。同年早稲田大学入学。1年次時よりレギュラーとして活躍し、3度の日本一を経験。17年、191か月で日本代表初選出。20年早稲田大学卒業。同年トップリーグ所属のヤマハ発動機ジュビロ入団。23年、24年と2年連続でシーズンの得点王&ベストキッカー受賞。27年ラグビーW杯イングランド大会で強豪・南アフリカを破る中心選手として活躍。28年仏RCトゥーロン所属。29年ヤマハ発動機ジュビロ復帰。令和212月現役引退。3年に静岡ブルーレヴズに入社、クラブ・リレーションズ・オフィサー(CRO)を務める。

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