元覚醒剤中毒の経営者がどん底で人生をやり直せた理由

去る9月3日、「第11回社内木鶏全国大会」が京王プラザホテル(東京・新宿)で開催されました〈木鶏会:『致知』をテキストにした勉強会〉。会場には500名、オンラインでは900名と総計1,400名のお申込みをいただき、各地で木鶏会に取り組まれている5社の代表者(社長、社員様)による発表には自然と拍手が沸き起こりました。

毎回参加者の投票によって選ばれる感動大賞に輝いたのは、出所者雇用に積極的に取り組んできた「ドリームジャパン北海道」(運送業)社長・長原和宣さん〈上記写真中央〉と社員代表の吉本晃之さんのご発表でした。本記事では、1,400名を超える参加者に大きな感動を与えた、長原社長の発表文をご紹介いたします。

転げ落ちるばかりだった前半生からの再起

私はスポーツで有名な自樺学園高等学校の創設者・長原林造の孫として、昭和43年4月10日、この世に生を受けました。

恵まれた環境の中で順調に育つものの、中学に入るなり非行へ走り、やがて暴力団にまでいってしまいました。成人してからは覚醒剤で重度の中毒にも陥り、逮捕歴があります。

真面目に人生のやり直しを始めたのは30歳からで、社長を務めるドリームジャパン北海道は平成13年、33歳の時に設立しました。

自分自身の体験から分かったのは、人間は皆平等に能力を持ち合わせており、その気になれば、年齢、性別、環境、学歴、能力、前科に関係なく、必ず人生をやり直せるということです。そのため、弊社では罪を犯した人達を積極的に雇用しており、これまでに50人以上を数えます。

『致知』との出逢い、人生の転機

そんな私が『致知』と出逢ったのは平成20年5月、稲盛和夫塾長の盛和塾に入塾させていただいた時でした。

入塾当初、多くの先輩塾生が『致知』を読まれていることを知り、「自分も読まないとまずい」との感覚で購読を始めました。漢字は読めない、言葉の意味は分からない、「こんな雑誌読めるか!」、それが『致知』の第一印象でした。しかし、言葉の意味を調べながら読み進めていくと、成功している人の苦労話などがすごく勉強になり、励みになり、『致知』を愛読するようになったのです。

『致知』の体験談は嘘がなく全部真実です。これが心地よく最高です。人生を真剣に生きたいと思う人には、内容がす一っと心に入ってくるのが『致知』なのです。

そして自分自身が感銘を受けたからこそ、「こんな素晴らしい内容を社員にも伝えたい」との思いで社内木鶏会を導入しました。平成26年3月18日のことです。以来、ひと月も途切れることなく現在に至り、今月で第103回を迎えます。

何度も倒産の危機に瀕して

しかし、これまで順調に木鶏会をやってこられたわけではありません。つい2年前まで10年間資金繰りに苦労していました。本当にもう来月はダメだということが幾度もありましたが、いつも奇跡、奇跡の連続で倒産だけは免れてきました。その苦しい時でもこの木鶏会だけは1度たりとも止めることはしませんでした。

なぜなら、この木鶏会を継続していくことこそが会社がよくなっていく最大の近道であると信じていたからです。

そもそも弊社は、私が3度と覚醒剤をやらないための手段として設立されました。ですから、経営というものが全く分からず、その時の気分で判断する傲慢な経営を続けていました。社員が粗相を犯すと顔面数センチまで自分の顔を突きつけて大声で怒鳴り散らしていました。

そんな社風で10年過ぎた頃、「自分がこの会社で働きたいと思えるか? 絶対に嫌だ」とふと感じ、不平、不満、愚痴のない会社を本気でつくろうと決意いたしました。

その矢先に『致知』と出逢い、自分の人間力を磨くとともに、木鶏会を通じて人と人が繋がり、心の交流を大事にする社風づくりに取り組んできたのです。

経営者が一番大切にすべきこと

いまでは弊社の社風は、見違えるように変わりました。社員一人ひとりが『致知』に触れ合うことによって、普遍的な生き方の原理原則を学び、それを共通認識にできることが一番の喜びになっております。

そして何と言っても前科のある社員ほど『致知』の学びの吸収力が高いことです。私は、内定通知を出した刑務所や少年院にいる受刑者・少年院生には、即、『致知』を差し入れていますが、刑期を務めている者たちには、ものすごく『致知』が響くようで、『致知』は苦しくつらい状況にある人ほど、勇氣と希望、生きるエネルギーを与えられる凄い本だということが立証されたのです。

会社は売上・利益を追求しなければ成り立ちません。だから、売上・利益を上げていくのは大事ですが、私はそれ以上に、日々、人間として立派な人格を養っていくことが会社経営者には必須だと感じております。

だからこそ私はテクニックよりも、まず人間味溢れる人間創りに重きを置いております。これからも木鶏会を続け、自らの人間力を磨き、社員を幸せにすると共に、ドリームジャパン北海道の全国展開を通じて、社会復帰したい人たちにやり直し・生き直しの支援のお手伝いをしていく。そして、私が重度の覚醒剤中毒で苦しんでいる時、毎日私の前に現れて命を救ってくれた亡き林造おじいちゃんの教育への志を引き継いでいく。

それが私が生かされている意味であり、ミッションだと思っています。

そのミッションを胸に、これからも『致知』に学び、二度とない人生を真剣に生き抜いていく覚悟です。


(本記事は致知出版社の「人間力メルマガ」〈2022.9.29号外〉より抜粋・再編集したものです――本大会の詳細は『致知』2022年11月号の巻頭・巻末グラビアでご紹介しております。ぜひご覧ください!)

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