【特別寄稿】バイデン新大統領誕生へ 超大国・アメリカはどこへ向かうのか——マックス・フォン・シュラ―が読み説く

元海兵隊、歴史家として独自の視点と情報源からアメリカ政治、国際情勢に対する鋭い評論を続けているマックス・フォン・シュラーさん。日本在住の親日家でもあり、日本文化への深い理解から、この激動の時代の中で日本が持つ使命、とるべき具体的な方策も積極的に提言し、YouTube公式チャンネル「軍事歴史がMAXわかる!」でも積極的に情報発信をしてきました。そのシュラー氏に、今回の大統領選挙やアメリカのいまと未来、そして混沌とする国際社会を生き抜くための日本人へのメッセージを寄稿していただきました。

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波乱続きの大統領選

大統領選挙が始まる一か月前、私はWEBchichiへの寄稿文(「トランプか、バイデンか――マックス・フォン・シュラ―が読み説く『アメリカ大統領選挙の行方』」)の中で次のように記しました。

……私はトランプ大統領が勝利する可能性が極めて高いとみています。……しかし、蓋を開けてみるまで結果は分かりません。特に、このコロナ禍の中で行われる今回の選挙は、郵便投票が大幅に増えることで不正リスクも高まります。イギリスの新聞『The Sun』によれば、封入された投票用紙をまとめて預かり、偽造の用紙に差し替えて投函する商売がアメリカで行われているとの指摘がされており、結果の是非を巡って大きな混乱が生じる可能性もあります。
……最後まで波乱が続く大統領選となりそうですが、その間も先述の(右派や急進的左派による)暴動は大規模な内乱に発展する危機を孕んで続いており、トランプ大統領が再選したとしても、バイデン氏が新大統領になったとしても、次期リーダーはその収束にエネルギーの多くを注がなければならないでしょう。

結果的には、バイデン氏がアメリカの新大統領に選出されたものの、予想した通り、今回の大統領選は不正選挙疑惑、右派群衆の連邦議会への乱入事件など、最後の最後まで波乱続きでした。実際、トランプ氏は選挙の無効を裁判所に訴え、いまだ「敗北」という言葉は公式には使っておらず、選挙結果に対して完全に納得しているとは言えない状況です。今後のトランプ氏の動きにも大いに注意を払っておく必要があります。

また、トランプ支持派や右派の中でも、バイデン氏は不正によって当選したのではないかという疑念と不満が根強く残っており、今後、さらに左派勢力との対立、暴動が各地で深刻化する危険性が高まっています。大統領就任式の際、警戒にあたっていた州兵たちが、バイデン大統領が乗った車両に背を向けて抗議の意思を示している映像も出回っています。「無事、新しい大統領が誕生したからよかった」ではなく、むしろこれからがアメリカの試練の時、正念場なのです。

反トランプキャンペーンに見るアメリカの危機

さて、バイデン氏当選という選挙結果を踏まえ、改めて今回の大統領選挙について私の考えを述べておきます。まず前回の寄稿文でも触れた不正選挙疑惑ですが、私はやはり何らかの形で不正が行われたのではないかと見ています。

例えば、ミシガン州やウイスコンシン州では、当初トランプ氏が大きくリードしていたにも拘らず、突如として大量のバイデン票が追加され、逆転されたというケースがありました。これは明らかに不自然な動きです。

確たる証拠はまだ出てきてはいませんが、アメリカで広く導入されている投票集計機が海外のサーバーと繋がっており、海外で組織的に票が操作されたのではないか、あるいは、既に亡くなっている方や老人ホームに入所する高齢者の方になりすまして不正な投票が行われているのを見たなどという情報が飛び交っています。もしそうした不正行為がなかったならば、もし不自然な票の動きがあった州の投票結果が違っていれば、間違いなくトランプ大統領が勝利していたでしょう。

そもそも、今回だけでなく、2000年のジョージ・W・ブッシュ氏とアル・ゴア氏の選挙など、常にアメリカの大統領選挙には不正疑惑がつき纏ってきました。私はアメリカで生まれ育ったのでよく分かるのですが、アメリカ人は日本人ほどきっちりしていません。選挙の投票や集計にもいいかげんなところがあり、不正選挙に関するジョークがあるほどです。これが超大国といわれるアメリカの実情、現実なのです。

また、反トランプを掲げる左派の大手メディア、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアの動きにも異常なものがありました。左派メディアは終始、トランプ氏の言動を厳しく批判する一方、バイデン大統領について回る数々のスキャンダルについて厳しく追及・報道することはありませんでした。フェイスブックやツイッター社はバイデン大統領に不利な情報に目を光らせつつ、トランプ氏のアカウントを停止、凍結したりするなどして情報発信を規制しました。このアカウント凍結に関しては、ヨーロッパの指導者からも「法律に基づくべきだ」との非難の声が上がっていますが、一企業が個人や公人の表現の自由を一方的に制限、規制できる現実、恐ろしさを改めて示しました。

さらに、協調や融和を主張しているはずの民主党は、あと2週間で大統領の任期を終えるトランプ氏に対して、ほとんど審議も討論もないまま弾劾訴追案を下院で可決しました。これも新たな対立と分断の種となる異常な事態です。

トランプ氏のこれまでのどんな言動よりも、私はむしろ、左派メディア、ソーシャルメディア、民主党が一体となって徹底的に推進した「反トランプキャンペーン」にこそ、一方の側を絶対的な悪として糾弾する恐ろしさ、アメリカ社会の危うさを覚えるのです。分断と対立を扇動しているのは左派、民主党のほうであることを私は声を大にして訴えたいと思います。

そして、その民主党内でも足並みが揃っているわけではありません。穏健な現実路線を取る勢力、極端なポリティカル・コレクトネス(人種・宗教・性別などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を使用すること)を推し進める勢力、共産主義革命を掲げる過激派「アンティファ」(Anti-Fascist Actionの略)に近い勢力など様々であり、民主党内でも近いうちに内紛が始まるのではないかと見ています。

特に民主党内の急進的な若手議員は、高齢のバイデン大統領とは世代的にも主義・主張に隔たりがあります。彼らにとってトランプ氏に代わる次なる障害・敵は、実は穏健派のバイデン大統領なのです。加えて、バイデン大統領にはいまだ認知症疑惑(あるいは認知機能の衰え)がついてまわっていますから、案外早い時期に辞任という事態になる可能性もあります。

先にも触れましたが、こうした分断と対立を抱え込んだ状態にあるアメリカでは、今後、予想もしないような混乱、内乱のような事態が次々と起こってくるでしょう。繰り返しになりますが、アメリカの正念場はこれからなのです。この点を日本の方々はしっかり認識しておく必要があります。

日本は激動の時代をどう生き抜くか

以上を踏まえ、日本はこれからアメリカとどう向き合い、厳しさを増す国際社会をどう生き抜いていけばよいのかについて考えてみたいと思います。

まず大前提として、バイデン大統領はしばらくの間、国内の分断と対立、民主党内のごたごた、あるいは中国武漢で発生した新型コロナウイルスの収束に多くの力を使わざるを得ないということです。そのため、アメリカは今後より一層内向きになり、覇権を強める中国、アジア地域に対する関与も弱まってくるでしょう。当然、軍事面においても、犠牲を払ってでも日本を守る余裕はなくなります。

特に懸念されるのが、やはり中国への対応です。複数の情報筋によると、バイデン大統領の息子であるハンター氏は中国の情報機関と深いビジネス関係にあるとされていますから、アメリカ外交は少なからず中国に対して宥和姿勢に傾いていくことが予想されます。また、日本と韓国の歴史問題(慰安婦、徴用工)についても、リベラルな民主党政権はおそらく韓国側に同情的になるのではないかと思われます。オバマ政権の時と同様、日本は韓国との歴史問題でアメリカを頼ることは難しくなるはずです。バイデン政権の誕生で、日本はますます厳しい状況に置かれることは間違いありません。

日本はあらゆる面においてアメリカ依存を脱却し、特にアジア外交、安全保障政策に関して大きな転換が必要になるでしょう。意外に思われるかもしれませんが、日本の国益にとってこれから最も大事になるのは、ロシアとの関係です。広大な大地と食料、天然資源に恵まれたロシアは、強大な権力を持つプーチン大統領のもと、安定した社会状況にあります。中国との関係においても、ロシアは表面的には中国と仲良くしているように見えますが、実際は国境を接する脅威として認識しています。そのロシアと緊密な関係を築くことで、日本はエネルギーや安全保障など様々な面からメリットを得ることができます。

そして、親日国であるベトナム、台湾、フィリピンをはじめとする南方の国々、インドやオーストラリアとの関係を強化することによって、中国包囲網を形成することが不可欠です。アジアの平和、世界の平和を守るためにも、日本がリーダーシップを執ってこうした政策を力強く推進していくことが求められます。そのために日本は世界のため、人類のためという使命感、義務感を持ったリーダーを育てる必要があります。

日本に住んで長くなりますが、これほど勤勉で、真面目で、優しく、一所懸命に働く国民を私は見たことがありません。確かに、バイデン大統領の誕生により、アメリカとの接点が多い日本には厳しい現実が待っていることでしょう。しかし、この苦難と激動の時を乗り越えた先には必ず日本の時代がやってくる、世界が日本を求める時代がやってくることを私は固く信じて疑いません。私もその将来のために努力していきたいと思います。


◇マックス・フォン・シュラ―

1956年アメリカ・シカゴ生まれ。1974年に岩国基地に米軍海兵隊として来日、アメリカ軍の情報局で秘密調査などに従事。退役後は、国際基督教大学、警備会社、役者、ナレーター等、日本国内で幅広く活動する。著書に『アメリカ人が語る 日本人に隠しておけないアメリカの"崩壊"』『日本に迫る統一朝鮮の悪夢』『アメリカ人が語るアメリカが隠しておきたい日本の歴史』(いずれもハート出版)などがある。YouTube公式チャンネル「軍事歴史がMAXわかる!」でも情報発信中。

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