理性型から愛の経営へ——新しい時代に求められる経営、リーダーとは??

歴史的な大転換期を迎えたいま、企業におけるリーダーのあり方も変化を求められている。理性ではなく、人間の心に焦点を当てた感性論哲学の創始者である芳村思風さんは20年以上前、すでにこの流れを予見し、新しいリーダー像を提示していました。芳村さんが説く、新しい時代に求められるトップ、組織とは?

各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。
1年12冊の『致知』ご購読・詳細はこちら※動機詳細は「③HP・WEB chichiを見て」を選択ください

大転換期に求められる経営、リーダーの在り方

〈芳村〉
いまはまさに時代の大転換期です。大転換期には従来のあらゆる仕組み、考え方が根底から覆されていくのが常ですが、いまほどの大転換の時期は、過去の歴史にはなかったのではないでしょうか。

大きな視点で捉えれば、理性や物質文明に象徴される西洋の時代から、感性や精神的な豊かさを重視する東洋の時代への転換、そして近代という古い時代から新しい時代への転換の時を迎えています。

これまで、人間が人間を支配する縦型構造の社会が長く続いてきました。しかし、いまや人間が人間を支配するのは悪であるという倫理観が世界に広まり、結果として横型のフラットな社会が形成されつつあります。

人間観という点でも大きな変化が見られます。人間の本質は理性であると説く西洋的な考えから心、感性であるという東洋的な考えにシフトしてきているのです。

奇しくもこのような変化を強くバックアップしたのが新型コロナウイルスでした。例えば、以前から求められながらなかなか進まなかった働き方改革は、このコロナウイルスをきっかけに著しく進化しました。

Zoomなどのオンラインを使ったリモートワークが瞬く間に定着し、自宅にいながら仕事をするのが当たり前の光景になりました。併せて都会から地方に移り住む人が増えていることで、人口の過密と過疎の解消にも一役買っています。あまりの激変ぶりに、天が私たちに対して新たな働き方、生活を教え導いてくれたのではないかとさえ思うほどです。

新型コロナウイルスは他にも私たちに新たな問題を提起しました。ウイルスはいま世界の貧困層の間で特に拡大を続けています。貧困層をなくさない限りウイルス感染を根本的に抑えられないことを思えば、これは全人類の中産階級化を促す天のメッセージと捉えることができます。低所得者層が中産階級化すれば消費の拡大が進み、国全体が潤います。このように皆で豊かさを共有するという経済に対する感覚の変化がいま生じているのです。

このような歴史的な変化を踏まえると、経営のあり方も自ずと変化させていかなくてはいけないことが分かります。

従来の経営のスタイルは支配・命令・管理に基づく「理性型の経営」でした。つまりリーダーには部下に命令して支配し、管理して率いていくという強力なリーダーシップが求められていました。しかし、こういうリーダーの姿勢はいま厳しく批判されています。地位を笠に着た暴言や暴力はパワーハラスメントとして犯罪と認識されるまでになりました。

理性型の経営に代わる新たなスタイルを私は「愛の経営(感性型の経営)」と呼んでいます。新しい時代には、部下を理不尽に叱ったり批判したり短所をあげつらったりするのではなく、思いやりや心遣いを持って接するリーダーの姿勢が求められます。部下指導は命令から対話へ、マネジメントは管理からパートナーシップへと変化していかなくてはいけません。お互いに認め合い、感謝し合う関係を築き上げ、共に会社を成長させていくのです。

ここで一つ強調しておきたいのは、リーダーはフォロワーと一対の関係にあるということです。つまりリーダーは自分の意見を一方的に押しつけるのではなく、フォロワーが喜んでついていきたくなるような魅力ある存在でなくてはいけません。「All for one, one for all.(皆は一人のために、一人は皆のために)」という空気は、そういうリーダーの下で醸成されていきます。リーダーシップとフォロワーシップが有機的に結びついた時、そこに生まれてくるのが組織力なのです。


(本記事は月刊『致知』2021年1月号 特集「運命をひらく」より一部抜粋・編集したものです)

各界一流プロフェッショナルの体験談を多数掲載、定期購読者数No.1(約11万8,000人)の総合月刊誌『致知』。人間力を高め、学び続ける習慣をお届けします。

◇芳村思風(よしむら・しふう)
昭和17年奈良県生まれ。学習院大学大学院哲学博士課程中退。45年思風庵哲学研究所設立。感性論哲学の創始者。名城大学元講師。著書に『人間の格』、共著に『いまこそ、感性は力』(共に致知出版社)など。

1年間(全12冊)

定価14,400円

11,500

(税込/送料無料)

1冊あたり
約958円

(税込/送料無料)

人間力・仕事力を高める
記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

『致知』には毎号、あなたの人間力を高める記事が掲載されています。
まだお読みでない方は、こちらからお申し込みください。

※お気軽に1年購読 11,500円(1冊あたり958円/税・送料込み)
※おトクな3年購読 31,000円(1冊あたり861円/税・送料込み)

人間学の月刊誌 致知とは

人気ランキング

  1. 【WEB chichi限定記事】

    【取材手記】ふるさと納税受入額で5度の日本一! 宮崎県都城市市長・池田宜永が語った「組織を発展させる秘訣」

  2. 人生

    大谷翔平、菊池雄星を育てた花巻東高校・佐々木洋監督が語った「何をやってもツイてる人、空回りする人の4つの差」

  3. 【WEB chichi限定記事】

    【編集長取材手記】不思議と運命が好転する「一流の人が実践しているちょっとした心の習慣」——増田明美×浅見帆帆子

  4. 【WEB chichi限定記事】

    【取材手記】持って生まれた運命を変えるには!? 稀代の観相家・水野南北が説く〝陰徳〟のすすめ

  5. 子育て・教育

    赤ちゃんは母親を選んで生まれてくる ——「胎内記憶」が私たちに示すもの

  6. 仕事

    リアル“下町ロケット”! 植松電機社長・植松 努の宇宙への挑戦

  7. 注目の一冊

    なぜ若者たちは笑顔で飛び立っていったのか——ある特攻隊員の最期の言葉

  8. 人生

    卵を投げつけられた王貞治が放った驚きのひと言——福岡ソフトバンクホークス監督・小久保裕紀が振り返る

  9. 【WEB chichi限定記事】

    【取材手記】勝利の秘訣は日常にあり——世界チャンピオンが苦節を経て掴んだ勝負哲学〈登坂絵莉〉

  10. 仕事

    「勝負の神は細部に宿る」日本サッカー界を牽引してきた岡田武史監督の勝負哲学

人間力・仕事力を高める
記事をメルマガで受け取る

その他のメルマガご案内はこちら

閉じる