【中村天風の睡眠哲学】「夜の寝ぎわは明るく楽しく積極的なことだけを考えよ」

心の鍛錬法を説き、多くの人々の運命を変えてきた哲人・中村天風(なかむらてんぷう)。その薫陶を受けた京都産業大学名誉教授・沢井淳弘さんのお話には、天風師の哲学が教えるよい眠りを得る方法が説かれています。

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観想の力が一生を左右する

――まずは天風先生との出会いから聞かせてください。

〈沢井〉
お会いしたのは京都大学1年の時です。その頃の私は十二指腸の難病の後、大変苦しんでいました。医者からは治るのに1年くらいかかると言われたんですが、入院したくなかったので自己診断で下剤ばかり飲んで、余計に症状をひどくこじらせたのです。おまけに人生問題に悩んで悲観論に陥っておりましたね。
  
――悲観論に?

〈沢井〉 
要するに「人類はなんのために生存しているのか」「人間はなぜ生まれてきたのか」という疑問がいくら考えても解けない。キリスト教や仏教、哲学の本をいくら読んでも答えは見つからない。それでもう絶望して「俺の人生はなんの意味もないんじゃないか」と思って、廃人みたいに毎日ぶらぶらしながら生きていました。
 
そんな私を、阪急百貨店でデザイナーをやっていた伯母がいたく心配しましてね。「私が尊敬する天風先生の講演をあなたもいっぺん聴きなさい」と。「天風って誰や」「インドの山の中で修行をして悟りを開いて、日本に帰ってきた人や。コロンビア大学で医学も勉強したのよ」「悟り? この現代にそんなことあり得ないよ」。
 
そんな問答のあと、じゃあ1回だけ確かめに行くか、と半信半疑のまま大阪であった講習会に連れて行ってもらったんです。

――実際に天風先生に接して、いかがでしたか。

〈沢井〉
お話を聴くうちに「これはほんまに悟りを開いた人や」と仰天しました。なかなか言葉では表現できませんが、その時、先生は81歳ですよ。老人は老人だけれども、老いてなお矍鑠(かくしゃく)、なんていうものではなかったですね。力むこともなく気楽に話しているだけなのに、喋る声がエネルギーに満ち溢れているというか、物凄く元気でした。
 
しかも、その時話された内容が衝撃的で、私の疑問にぴたっと合致したんですね。

「人間はなんのためにこの世に生まれたか、おまえたちは分かっているか。それは宇宙の進化と向上のためだ。人間はそれを手伝う最高の存在なんだ」
 
先生の言葉は抽象的で、最初は実感として分かりませんでしたが、「この人は人間の存在意義を掴み、私の疑問に答えてくれる人だ」と思い、先生についていこうと決心したんです。

それから昭和43年に92歳で亡くなるまでの12年間、大阪や京都の講習会や修練会には毎回必ず参加して教えを受けていました。
  
――病気は快方に向かったのですか。

〈沢井〉 
ええ。先生の教えをしばらく実践するうちに、腸のほうもノイローゼの状態も驚くほどよくなっていきました。
 
天風哲学の1つに「観念要素の更改」というものがあります。人間は寝る前の意識が無条件に潜在意識に浸透していくので、夜の寝ぎわは明るく楽しく積極的なことだけを考えなさいという教えです。それまでの私は後ろ向き、消極的なことばかり考える習慣がついていましたが、無理してでも楽しいこと、嬉しいことを考える努力をしていくと、自分の感じ方、人生観が逆転していったんです。
 
人間の想念の力というものを感じるようになりました。普段何気なく考えていることや、何気なく発している言葉が、自分の一生を左右するんだな、と。


(本記事は『致知』2014年2月号 特集「一意専心」に掲載された記事の一部を抜粋・編集したものです)

◇沢井淳弘(さわい・あつひろ)
━━━━━━━━━━━━━━━━
昭和14年大阪府生まれ。京都大学英文科卒業後、高校教師を経て京都産業大学で英語を講じる。現在名誉教授。「沢井淳弘 天風塾」を主宰し天風哲学を指導する一方、講演、執筆活動を続ける。著書に『中村天風から教わったやさしい瞑想法』『すべてはよくなる わが師中村天風から教わったことばの自己暗示力』(ともにプレジデント社)。編著に『心を空にする~中村天風「心身統一」の真髄』(財団法人天風会監修、飛鳥新社)。

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