TVでは見られない!? 〝ひふみん〟こと加藤一二三さんが語る「勝利を掴む心構え」

その親しみやすいキャラクターで多くのバラエティ番組に出演、お茶の間にファンを増やした「ひふみん」こと加藤一二三さん。将棋棋士としての実力も折り紙つきで、77歳まで現役で活躍した後、平成30年春の叙勲では旭日小綬章が贈られました。“歴代最多の敗戦記録所持者”としても知られる加藤さんが『致知』で語った、苦節多き棋士人生の中で掴んだ「勝利を掴む一流プロの心構え」をご紹介します。

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負けた直後に自信が生まれて強くなる

最年長棋士として長らく活躍され、昨年惜しまれながら引退。そのユニークなキャラクターが愛され、一躍お茶の間の人気者となった「ひふみん」こと将棋元九段の加藤一二三さん。

加藤さんが将棋の道に分け入ったのは今から64年も前。14歳7ヶ月という史上最年少でプロデビューすると、「神武以来の天才」と呼ばれ、名人位をはじめ数々のタイトルを獲得。将棋界の一つの時代を築きあげられました。

しかし、そんな加藤さんにも苦戦した棋士がいたといいます。その棋士との戦績は8年間で1回も勝てず、タイトル戦で20連敗……。

その棋士は、名人の中原誠さんです。加藤さんが中原名人を破り、タイトルを手にしたのは昭和57年のこと。第40期名人戦で中原名人と相まみえ、10局戦っての勝利に、名人戦史上の名勝負としていまも語り種になっています。

そしてこの時、加藤さんが発したのがこのひと言。

「負けた直後に自信が生まれて強くなる」

負けた時ほど、己と徹底的に向き合うことで、自らの腕を高められる――。加藤さんの強さの秘密は敗北後の思考にあったのです。

〝ひふみん〟が語った信念

――負けて強くなる、というのは長年、将棋に一途に打ち込んでこられたからこその、加藤さんの実感なのでしょうね。

加藤〉
将棋には勝ち負けがつきものですが、私の場合は1000回以上負けているんです。何と言っても負け数1位ですから(笑)。

1000回負けたというと、「そんなに負けて大丈夫なの」と思われるかもしれませんが、プロの将棋界で負け続けると最短13年で引退に追い込まれます。現に将棋界の歴史で1000敗達成者は、私を含めていまだ3人しか存在しません。

別の言い方をすると、たくさん負けるには、それ以上にたくさん勝たなくてはいけない。1000敗というのは、60年以上現役を続ける「強さの証」だと自負しているわけです(笑)。

――負けが続いた時の加藤さんの心の支えは信仰だったのですか。

 〈加藤〉
はい。20代の頃、棋士として鳴かず飛ばずというのか、行き詰まったと思った時期が1年ほど続いて、「将棋と同様、人生においても最善手があるのではないか」と思っていた時に巡り合ったのがキリスト教でした。

人間は誰でも幸せを求めて努力をします。棋士もそうです。ただ、そこに神様からの協力が得られれば、さらに人生は飛躍発展に繋がるというのが私の人生観なんです。

私は最近好きな言葉があって、1つは、

「人は神様から愛されているから存在する」

もう1つは、

「人は無から存在に呼び出された」

人間は必要があって呼び出されたわけだから、呼び出した神様がほったらかしにするはずがない(笑)。しかも、どこまでも愛してくださっているというのですから、こんなに心強いことはありません。

人生には様々な敗北や挫折がありますが、神様から与えられた魂を失わない限り絶望はない。これは私の信念です。


(本記事は月刊『致知』2016年2月号 特集「一生一事一貫」より一部を抜粋・再編集したものです)

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◇加藤一二三(かとう・ひふみ)
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昭和15年福岡県生まれ。29年14歳で四段となり史上最年少記録。18歳でA級八段。大山康晴、中原誠、米長邦雄ら将棋界の実力第一人者を相手にそれぞれ100局以上対局。43年大山十段から初の十段位を奪取。57年に名人となったほか、王位、棋王、王将などのタイトルも獲得した。著書に『負けて強くなる』(宝島社新書)など多数。

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