創業215年の老舗和菓子屋に嫁いだ若女将 V字回復の秘訣は「◯◯」

創業215年を迎える京都老舗和菓子屋「亀屋良長」。その8代目に嫁がれた吉村由依子さんは、ご主人の病気、会社の経営危機と立て続けに困難に遭遇します。度重なる逆境を乗り越える際に支えとなったというヨグマタ・相川圭子さんの教えや、「新しい仕事を呼び込む秘訣」を伺いました。

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アイデアに情熱が伴うと実現化する

もともと和菓子よりも洋菓子やフランス料理に興味があったという吉村さんは、同志社女子大学の栄養科を卒業後、留学してパリのコルドンブルー(世界的に名高い料理学校)に通いました。帰国後に亀屋良長の現・8代目と結婚し、和菓子の世界にも関心を抱くようになったといいます。

しかし、和菓子の奥深さに魅了されていく一方で、業界を知れば知るほど、下降の一途を辿っていることが非常に悲しく、危機感を持つようになりました。このままではだめだと奮起した吉村さんは、アイデア力で万年売り上げ最下位の商品を生まれ変わらせたのでした。

「最初に商品化されたのが2004年に販売開始した“懐中しるこ・宝入船”です。弊社の商品は日持ちの短いものが多かったのですが、その中で“懐中しるこ”というお湯を注ぐだけでおしるこができあがって、日持ちもする商品がありました。味はおいしいのに見た目が地味で、1シーズン約200個と、驚くほど売れていませんでした。

 何か工夫をすれば必ず売れると思っていたところ、外側が餅で覆われて中が見えないという商品の特徴を生かして、おみくじを入れるというアイデアを思いついたんです。様々な形のゼリーをランダムに1つ入れて、その形で運勢が占えるという発想で、既存の商品の中に1つゼリーを加えるだけでできあがります」

既存の商品に少し手を加えるだけで魅力的な商品に生まれ変わらせるアイデアを思いついた吉村さんですが、予想に反して、職人からは賛成の声が聞こえず、賛成してくれるだろうと思っていたご主人までもが乗り気ではなかったというのです。

しかし、ここで吉村さんの「情熱」が勝りました。反対意見に屈することなく、よいと思ったアイデアの実現に向け、行動しました。

「私は“これは売れる!”と確信していたため、諦めずに何度かお願いしたところ、渋々職人さんがつくってくれて、それが何と、若い女性を中心に大ヒットしました。百貨店でも扱っていただけるようになり、1シーズンに2万5千個と、それまでの約125倍も売れるようになったんです」

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相川圭子さんから学んだ「感謝の心」

その後も数々のヒット商品を生み出し、順調に進んでいるかのように思えた矢先、吉村さんに再び試練が押し寄せます。

2008年にご主人の脳腫瘍が発見。入退院を繰り返しながら看病する生活が始まります。翌2009年には、会社の借金が数億円にも膨らみ、会社が危機的状況にあることを知らされたのです。役員、従業員の給料をカットし、商品の見直しや仕事の効率化を図るなど策を講じたものの、数年間は希望の光が見えず、苦しい期間が続いたそうです。

ご主人は藁にもすがる思いで、思想家の中村天風さんや史上初の女性ヒマラヤ大聖者である相川圭子さんの教えを学び始めました。吉村さんはスピリチュアルな世界を信じなかったため、当初は真剣に瞑想をしているご主人のことを疑心暗鬼で見ていましたが、次第にご主人が颯爽とし始めた様子を見て、入門を決意。

「相川先生が繰り返しおっしゃっていたのが、とにかくすべてに“感謝”ですよ、と。世の中には嫌なこと、しんどいこともありますが、すべてに感謝することで人生は好転していくと教えていただきました。

主人が病気になり、経営状態は火の車で、先代との関係もあまりうまくいっていないなど、苦しいことの連続でしたが、瞑想を始め、“感謝”するよう心掛けたことで、不思議なことに、会社の流れが急激に変わり始めたんです」

何事にも「感謝」するようになると、物事がとんとん拍子で進むようになり、伝統にとらわれず、洋菓子の技術や素材を融合させたブランドや健康に配慮したブランドを立ち上げ、いまでは亀屋良長は他業種からも注目を浴びる会社になりました。

 

(本記事は月刊『致知』2018年6月号 連載「第一線で活躍する女性」より一部抜粋したものです) 

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◇吉村由依子(よしむら・ゆいこ)
昭和52年京都府生まれ。同志社女子大学生活科学部食物栄養科卒業後、Le Cordon Bleuパリ校で料理ディプロムを取得し、帰国。平成12年現・亀屋良長8代目の良和氏と結婚。13年から家業の手伝いを開始し、販売や商品企画開発などに携わる。26年女将に就任。

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