2023年2月開講 田口佳史塾(全5講)のご案内

明治の近代化、そして戦後の復興の活力の源泉に、極めて優秀でしかも勤勉な働き手の存在があることは、諸外国の専門家も認めるところです。

こうした勤労観、職業観、人生観の根源に何があるのかを見極めずして、「新しい資本主義」もないのではないでしょうか。

そこで、日本商道の父といわれる「石田梅岩」の人と思想を学び、経済と商業の根幹とは何かを探り、豊かで活力のある経済活動の再興に向けた道筋を考えます。



詳細情報

各講の日程とテーマ

第1講  「石田梅岩の人と思想」

梅岩は商都大阪と政都京都の中間である丹波の農家の次男に生まれました。時に江戸中期最大の繁栄期「元禄」の数年前のことです。当時商業は大阪・京都が本拠地であり、その中で自らも商業人として体験をしながら、「神道、仏教、儒教」を修めて、45歳で講席を開きます。その指導活動は15年と短期間でありましたが、何故梅岩教学が日本商道の基礎といわれるまでになったのかを探り、その本質を学びます。


第2講  「梅岩教学の特長」

梅岩が日本伝統の諸学を懸命に学び、自己の教学をうち立てるまでに、どの様な学習と自己研鑽、それと自己の厳しい視点でピックアップした名教の数々、それをどの様に活学して自己の教学の成立に至ったのかを学びます。更に多くの商道の教えの中でも、何故梅岩教学が多くの商業人の心を捉えたのかについても学びます。


第3講  「梅岩教学の主張」

梅岩教学の主張としては、特に極立った教えとしては何があるのか。「神道を教えたい」とした講席開設の願いから、むしろ朱子学による儒教的合理性と倫理へと進んだその真意はどこにあるのか。また、何故梅岩は、商業を通してこそ、人間の真髄を極めることが出来るとしたのか。商業の驚異的発展にも揺るがぬその教学の強固な説得力は、どこから来るのかを学びます。


第4講  「梅岩を育てた日本思想」

こうして学んで来ると梅岩教学の深さと実効性に驚かされますが、その梅岩を育てた日本思想とは何なのか。その最も梅岩が影響を受けた要点は何なのかを探ります。特に「鈴木正三」の影響は大なるものがあるといわれていますが、正三の教えの何が、どの様に梅岩に伝承されたのか。それを梅岩はどの様に自己の教学に活かしたのかについて、学んでいきます。


第5講  「梅岩教学の発展と貢献」

梅岩教学は、その後「石門心学」として発展し、商業人ばかりでなく一般の人々、そして武士層にも普及しますが、その源泉には何があり、それがどの様に発揮されたのか。更にそればかりではなく、明治の近代化の重要な力の源泉であった「経済活動」の実質的推進理念にもなり、また戦後の復興の理念にも活用された梅岩教学の根幹とは何かについて学び、「まとめ」と致します。



新講座開講に寄せて、
田口佳史先生からのメッセージ

石田梅岩の人物像

石田梅岩のことを、私は「教祖タイプ」の人物であると捉えています。私のいう教祖タイプとは、謹厳実直であり、何事にも正直で誠心誠意である人物を指します。例えば宗教団体の教祖の場合、見かけは立派でも、中身はまったくその反対であることがあったりもします。そういう人物にはがっかりさせられるのすが、石田梅岩は正真正銘教祖タイプの人物であると私は言いたいのです。
人間の評価というものは、その人物の死後に分かることから、梅岩の死後の逸話をご紹介します。梅岩は死後に財産を一切遺すことはなく、その住まいに残っていたのは、茶碗と箸といった日常使うものだけだったそうです。梅岩は妻帯もしておらず、家族もいません。その状況下にあって、梅岩は倹約を旨とし、正直を貫いて生きることで、自ら説くところを徹底的に実践した人物だったのです。
周囲の人たちは、梅岩の死後、どこかに隠し財産があるのではないかとか、女性を囲っていたのではないかと調べたそうですが、一切なにも出てこない。そのことに皆は驚嘆したのです。私はこのような人物が説いてきたものゆえに、その教えが今日に至るまで語り継がれてきたと思うのです。

「石田梅岩の教え」を学ぶ上での3つの要点

日本における経済のあり方は、その大半を中小企業が大きな割合を占めていることから、難解な経営学や経済学によるよりも、日々の経済活動の密接に結びついた商道や経営道といった話のほうが受け入れやすいと言えるでしょう。それゆえに、いま自分たちが行っている仕事に役立つかどうかが重要で、そういう点で「石田梅岩の教え」は経営活動に生かせるという利点があります。
また、「石田梅岩の教え」は日本に古くから蓄積されてきた儒教・仏教・老荘思想・禅・神道という5つの思想哲学に裏打ちされているため、味わい深く、とても奥行の深い教学になっていることも見逃せません。
さらに、今後の日本における新しい資本主義を考える上で、これまで私たちが培ってきた根本思想をズバリ教えてくれる「石田梅岩の教え」は、不易流行の「不易」の部分を再認識するためにも必要不可欠であると思うのです。


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