名僧2人が語る禅の教え

40年にわたり禅の一道を歩んできた横田南嶺(なんれい)老師と、
宗祖伝教大師の法脈を継ぐ天台の名刹を担う阿(おか)純章師。

「歩歩起清風」という禅語を体現したような名僧2人の対談が単行本になりました。

定価=1,650円(税込)

月刊誌『致知』2018年7月号でも話題を読んだ対談を契機に、
4度にわたり禅語について語り合った本書には、
「自分とは何か」「命とは何か」「いかに生くべきか」といった本質的な問いにとどまらず、
「人生の価値はどこにあるか」「イキイキと生きる秘訣」など、
自分の花を咲かせて生きるためのヒントが凝縮されています。

宗派、時代を超え、さまざまなエピソードやたとえ話を交えながら
禅語を紐解かれる両師の言葉を通して、
わかりやすく、かつ深く教えの本質に触れることができるでしょう。

「心こそ 心迷わす心なれ 心に心 心許すな」
という沢庵禅師の言葉にもあるように、
迷いやすい私たちの心に、清々しい風が吹き渡り、
日々を歩むエネルギーが湧き起こる一冊です。


本書を購入する


本書を立ち読みする

自分が自分を自分する

 曹洞宗の僧侶である澤木興道(こうどう)老師は「坐禅というのは自分が自分を自分する」と言われていますね。

横田 そうそう。

 「自分が自分を自分する」とは一体どういう意味なのだろうかとずっと思っていたんです。
普通に考えると、「自分というものをなくせ」というのが禅の教えだと思いますが、自分を捨てて何かを悟れというのではなくて、まず自分を生きなければダメだというわけですね。
つまりこれは、自分の煩悩を引き受けて生きるというのが禅の生き方なんだという意味ではないかと思ったのです。
自分は自分だろう、自分でない理想の仏を求めるのではなく、自分の煩悩を背負って生きなさい、というところにつながってくると思うのです。

横田 「自分する」というのは、考えてみれば今風な表現ですね。澤木老師が活躍し始めたのは昭和の初め頃ですか。

 そうですね。

五目おにぎりのたとえ

横田 これは自分が自分であればいいということなのかなあ。仏教学者の小川隆先生のおにぎりの話はご存じですか?

 存じ上げないです。

横田 煩悩と菩提(悟り)をおにぎりに譬えているんです。

一つは梅干しおにぎりの譬えです。
米が我々の迷いです。梅干しが本来の心、仏心です。迷いを除いていくと、中に梅干しという素晴らしい悟りがあるというのですが、要するに具が仏で米が煩悩や迷いであるというわけですね。こういう考えは仏教には最初からあります。
だから米を食べると梅干しが中に入っているというのはわかりやすいでしょう。

それからもう一つ、小川先生は「禅は五目おにぎりだ」と言われています。
五目おにぎりというのは具が米に混ざっていますから、米だけを食べるわけにはいかないし、具だけ食べるわけにもいかない。
だから混ざり合った全体がおにぎりなんですね。

小川先生がおっしゃるには、北宗の禅は梅干しおにぎりのようなもので、煩悩や迷いをすべて取り去った後に素晴らしい仏がある、言い換えると塵を取り除いて清浄な心になるという考えだったと。
でも、南宗の馬祖道一が出てからの禅は五目おにぎりであって、日常の現実のさまざまな悩み苦しみの中にちゃんと仏の心が混ざっているというわけです(笑)。

目次

まえがき 横田南嶺
第一章 煩悩の中に悟りがある
第二章 自分とは何か
第三章 生きるも死ぬも精一杯
第四章 ただの人になる
あとがき 阿 純章

主な内容

・「平常心」とは当たり前の心が道に適っていくこと
・「普通にしなくては」と努力すると道から離れてしまう
・同じ欲でも意欲はイキイキと生きる原動力になる
・自分を知らなければ人生の根本問題は解決しない
・自分はどこにいるか
・自他の境界線を外したら本当の自分に気づく
・「何が見る」「何を見る」ではなくて「ただ見る」
・一人であることの価値を見直す
・「ありのまま」と「ありのままでいいんだと思う」のは全く違う
・自分がないということは何者にも自由になれるということ
・動きの中にこそ穏やかさがある


本書を購入する


著者プロフィール

横田南嶺(よこた・なんれい)
昭和39年和歌山県生まれ。62年筑波大学卒業。在学中に出家得度し、卒業と同時に京都建仁寺僧堂で修行。平成3年円覚寺僧堂で修行。11年円覚寺僧堂師家。22年臨済宗円覚寺派管長に就任。29年12月花園大学総長に就任。著書に『人生を照らす禅の言葉』『禅が教える人生の大道』『自分を創る禅の教え』など多数。選書に『坂村真民詩集百選 』(以上、いずれも致知出版社)がある。

阿純章(おか・じゅんしょう)
昭和44年東京都生まれ。平成4年早稲田大学卒業。15年同大学大学院文学研究科東洋哲学専攻博士課程退学。大学院在学中、北京大学に中国政府奨学金留学生として留学。帰国後、早稲田大学、専修大学等で非常勤講師を務める。現在は天台宗圓融寺住職、円融寺幼稚園園長。著書に『「迷子」のすすめ』(春秋社)。

閉じる