一歩一歩上がれば何ともない


西洋に禅を伝えた
鈴木大拙という人がいます。

その大拙氏に長く仕えた岡村美穂子さんに
大拙氏の教えを語っていただきました。
対談のお相手は、京都大学名誉教授の
上田閑照さんです。

───────「今日の注目の人」───

岡村 美穂子(大谷大学元講師)
   ×
上田 閑照(京都大学名誉教授)

※『致知』2017年6月号【最新号】
※特集「寧静致遠」P18

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【上田】 
大事なことはやはり
何かに打ち込むことですね。
打ち込むことによって限界にぶつかり、
小さな自分が破られて初めて
広々とした世界が感じ取れるようになる。

打ち込むという経験をしなかったら、
何にもなりません。


【岡村】 
そのように考えると大拙先生は
95歳で亡くなるまで
「願」に生き抜かれた方でした。

「まだまだだぞ」

という言葉を最後の最後まで
使っていらして……。
 
今回のテーマは寧静致遠ということですが、
これを聞いて思い出した話があるんです。

先生が亡くなるまでお住まいになっていた
鎌倉の松ケ岡文庫に行くには
130段の高い石段を
上らなくてはいけません。

先生も90歳を超えられて、
新聞記者の皆さんが見える度に
「大変でしょう」と心配されるんですが、
先生は


「いや、一歩一歩上がれば
 何でもないぞ。
 一歩一歩努力すれば、
 いつの間にか
 高いところでも上がっている」と。


これは無心について
おっしゃった言葉なのですが、
寧静致遠もそういう
意味だと思うんですね。


【上田】 
ああ、一歩一歩進めば、
いつの間にか上まで辿り着いている。

「一歩一歩」と「いつの間にか」、
この両方がともにあるところが
大事なのですね。


【岡村】 
だから、下にいるのに
上のほうばかり眺めてね、
「上るのは難しい」と思って
動かないでいる人と、
大拙先生のように……



※鈴木大拙氏の歩まれた道のりについては
 最新号をお読みください。



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全国の『致知』読者から届いた声
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かかりつけの歯科医で
『致知』と出逢い、心に
火が灯されました。

還暦を過ぎても魂を
磨くのに遅くはない、
との希望とともに
貪るように読んでいます。

  ───長谷川誠さん/神奈川県

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