「本を読む喜び、楽しさ、感動を若い世代に伝えよう」
という想いのもと、今年度も開催された第7回『心に響く小さな5つの物語』感想文コンクール。
おかげさまで、全国から331通ものご応募をいただきました。
これまでの応募総数は3020通にも上ります。
たくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。

受賞者

金賞 長山愛佳さん(神奈川県 学校法人緑ヶ丘学院 緑ヶ丘女子高等学校2年)

銀賞 吉村蒼里さん(宮崎県 学校法人久保学園 都城高等学校1年)

銅賞 今井優花さん(大阪府 大阪学院大学高校1年)

銅賞 久世妃莉さん(岐阜県 岐阜市立岐北中学1年)

審査員総評

鈴木秀子先生(文学博士)

若い人たちが、真剣に自分自身と向き合い、日常の生活を通して、生きる意味を探っている態度がよく伝わってきました。『心に響く小さな5つの物語』から、自分の人生への指針を汲みとる力も見事です。この本との出会いが、一人ひとりをどんなに豊かにしてくれるか、これからが楽しみです。

皆藤 章先生(臨床心理士)

スマホ世代の若者が想像力を失っていることを危ぶんでいましたが、ひとが生きることすなわち人生の答えは、スマホの中にではなく、ひとが生きた物語にこそ潜んでいることを、感想文が教えてくれました。5つの物語が綴る人生とそれを読む若者の人生が、想像力豊かに往還し、いまを認(したた)め未来をまなざし願う若者のこころに響いている。その様子が感想文から受けとれました。まさに物語はこころの琴線に触れ、ひとの人生を耕すのだと、あらためて学びました。

受賞作品

金賞 長山愛佳さん

 この本と出会ったのは、図書委員会の活動日に司書教諭の先生が、第五話「縁を生かす」を朗読して下さったのがきっかけです。みんな真剣に聞き入っていました。私も自分の人生の歩み方について考えさせられました。
 母親が亡くなり、父親から暴力をふるわれ、生きる希望を失っていた少年が、先生に声をかけられたことにより笑顔を取り戻し、数年後には医学部まで行ったのがとても良かったなと思います。先生が母親のように温かく少年を包みこんだことで少年は母親のような存在と思い、自分の結婚式に母親代わりに選んだのだなと思いました。「縁」というものは運命ではなく、自らの強い希望と意志によって生まれるのだと確信しました。他の物語も気になって、借りて帰りすぐ読破しました。

 第一話では、イチロー選手が大リーガーになれた奇跡は、夢の実現のためにはいかなる代償も厭わない強さだというのです。どんな時でも自分を信じ、信念を強く持ち続けたイチロー選手の偉大さに心が高ぶりました。
 第二話は、非行に走って生きてきた少年が奇跡の面会者により、母の真実の愛を知り、立ち直った物語。時間が経っても少年に母の深い愛が伝わった事実に胸が熱くなりました。
 第三話は父親を尊敬して生きてきた女子高生に突然起きた悲劇、交通事故で最愛の父親が亡くなってしまいます。その最期に「おかげさま」と唱えるという遺言を残したのです。
「おかげさま」の意味は、「ありがとう」と同じ意味かなと思いましたが、繰り返し読んでいくうちに、「ありがとう」と同じに相手の行動に感謝しつつも、「私も頑張ります」という意思表示が私には感じられました。彼女の父は、彼女自身を成長させる遺言を残したのだと思いました。
 第四話は、読み始めたとたんに涙が止まりませんでした。少年が一生を懸けて全身で紡いだ詩の一つひとつの言葉は、まるで真珠のように輝いていると思いました。「言葉」で生きていくことができる、「言葉」は祈りであり、愛の絆でもあると体感しました。
 五つの物語を読んで、私の五感がこんなに強く反応するとは自分でも驚きでした。一話ごとに迫って来る思いが重なり共感したり、不思議に思ったり、胸が苦しくなる位悲しくなったり、涙も流しました。しかし本を閉じると、それぞれの物語が温かく丸く心にじんわりともどり、私自身も人生を少し前向きに考えるようになりました。この本に出会えたことが、私の奇跡です。


銀賞 吉村蒼里さん

「大事なのは、与えられた縁をどう生かすかである。」
 この一文を読んで、私は心臓を強く握られたように感じた。私は、縁というものを自ら無駄にしてきたのかもしれないと、その時気付いた。
 私が『心に響く小さな五つの物語』を読んで、最も心を動かされたのは、一巻の第五話「縁を生かす」だった。私は、いつの間にかここに登場する少年と自分とを重ねて読んでいたのだ。昔は明るく、友達に囲まれて幸せそうだった所が、似ていると感じたからだろう。彼と私で違うのは、その後の「出会い」だ。彼は、彼の事を知り、手を差しのべた先生を受け入れ、自信を取り戻し、彼女の存在に支えられながら素晴らしい未来に進んでいく。一方私はどうしてきただろうか。傷付き落ち込んでいた私を心配してくれた家族や友達の手を払い、今も誰かと深く関わらないように生きている。

「なんて愚かなのだろう。」
 と、そう思った。確かにこのような生き方をする人は案外多いのかもしれない。しかし、私も出会ったはずの、この物語の先生のような人の差しのべた手を取り、しっかりと向き合っていたならば、もっと違う人生を歩んでいたかもしれない。今の私のように毎日を無気力に、なんとなく過ごすのではなく、希望に満ちた活力のある毎日を過ごしていたかもしれないのだ。
 また、先生が少年を救ったように誰かを助けられたら、それも喜ばしいことだろう。このまま人と関わらないように生きていたら、私を助けようとしてくれた人が傷付いても、気付けなかっただろう。それどころか、知らないふりをしていたかもしれない。それはとても最低なことだ。だから、このままの私ではいけない、変わらなければならないと思った。
 この物語は、私に大切なことを気付かせてくれた。この本との出会いも縁なのだ。私の考えを、十代という早い時期に変えてくれた物語に感謝したいと思う。過去は変えられないけれど、これからをどう生きるか考えるようにしたい。助け合える仲間との縁を大切に、そして、あの少年のように感謝を忘れずに生きていけるように、私は少しずつ自分を変えていこうと思う。


銅賞 今井優花さん

 喉の奥が詰まった感じがした。この話を読み終えた後、私はこう感じました。大声で泣き叫びたい訳ではなく、無感情でいられる訳でもない。心がぎゅっと縮まり、何かが揺れ動いた感じがして静かに涙が溢れた。私がこの本を読んでいて特に何か感じることが多かったところは二つあります。
 まずイチロー選手の話についてです。この方の小学6年生の作文には自信が満ち溢れています。私は将来の夢について、小学生、中学生の頃はなんとなくで、絶対という気持ちがなかったしなれると信じることができませんでした。しかしこの方はたくさんの経験から自信を得て、自分の夢を信じきった。しかも小学6年生の頃から。天才だと思いました。でも技術だけでなく、誰かに感謝するという心を忘れていなかったから本物の天才になれて、人を感動させることができたと思います。

 次に少年と先生の縁の話です。この話を読んでみると小さな出来事から縁を生かすことができたのがすごいと思います。日常の中で縁は多数転がっていると思います。しかしその縁を生かせることは少ないと思います。最初この先生は少年の表面だけを見ていて偏見があったと思います。しかし小さなところに気付き、その気付きから行動に移した。その行動が少年に自信を与えました。しかもこの少年は感謝の心を忘れなかった。こういう感謝の心が自分を前に進ませ他人を喜ばせる。私はこの二人だったからこの縁を生かすことができたんだと思います。
 最後に全体を通して感じたことがあります。それは誰かの努力は誰かに伝わり、心に光を灯すことができる。それが自分に何らかのかたちで返ってくる、ということです。小さなことでも一歩踏み出して努力することで誰かを救うことができるかもしれません。心に光を灯すことができるかもしれません。私は今まで小さなことに関して表面だけでとらえることが多かったです。しかしそれを1つ1つ深く考えその先を見ることが大切なんだと気付きました。私は今、自分を信じることができていません。なので私は自分を信じることから始め、どんな人にでも感謝の気持ちを忘れずに生活していきたいと思います。そうすればするほど自分の夢へ近づくことを信じ続けます。


銅賞 久世妃莉さん

 この本を読んで、自分自身のおかれている意味を考えさせられました。
 私は、四人兄妹の三番目です。上にお兄ちゃんが二人、下に妹が一人います。
 私は、この本を読むまで、心がとげとげしていました。学校に行っても男子や一部の女子に、宇宙人、キモイ、ウザイと言われて、ついかっとなって言い返したり、毎日イライラしていました。家に帰ってもお兄ちゃんに怒られたり、妹にも馬鹿にされていました。そんな毎日が続いていた時、この本に出合いました。
 喜怒哀楽の人間学を読んでいると、自分の幼少期を思い出し、お母さんに小さい頃の写真に所々書いてあるコメントなどもみせてもらいました。そこにはたくさんの愛にあふれた言葉が書いてあり、お兄ちゃん達と笑顔で写真に写っている私がいました。

 私は、正直自分ばっかり愛されていない、どうせ妹やお兄ちゃん達の方が良いんでしょ。と、お母さんの事が嫌になりかけていました。
 でも、この本をきっかけに、少し考えて物事を見る事が出来たと思います。泣きながら怒られる自分だけでなく、泣きながら怒っているお母さんの思いも、少しだけ考える事が出来るようになった気がします。
 もう一つは、緑の大切さを教えてもらいました。
 私にも、すごく大切な先生がいます。保育園の先生です。いつも、私のそばで、寄りそい、いつも励ましてくれていました。丁度、下の妹が産まれた時だったので、とても不安な気持ちだった時に、小さいながらに、とても印象に残っています。先生が言ってくれた、「ひまちゃんの笑顔は、人を元気にしてくれるパワーがある、だから嫌なことがあってもニコニコパワーでふき飛ばせ。」
 先生の言葉を、この本を読んで思い出す事が出来ました。
 私はまだ、十二年しか生きていません。まだまだこれから、色々な事があると思います。
 今おかれている自分を知り、これから頑張ればまだまだやれる事は無限です。
 この本を知る事が出来たのも、何かの縁ですし、自分を知るきっかけにもなりました。
 これから、私自身が心を響かせてもらったように、私も誰かの心に響くように、とげとげ心を、優しいふわふわ心になるように、生活していきたいです。
 すばらしい物語をありがとうございました。


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