「本を読む喜び、楽しさ、感動を若い世代に伝えよう」
という想いのもと、今年度も開催された第12回『心に響く小さな5つの物語』読書感想文コンクール。
おかげさまで、全国から736通ものご応募をいただきました。
これまでの応募総数は5225通にも上ります。
たくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。

受賞者

金賞 六車日鞠さん(東京都 東京都立小平南高等学校1年)

銀賞 渡邉彩加さん(熊本県 熊本県立球磨中央高等学校2年)

銅賞 見野全都さん(北海道 札幌日本大学高等学校2年)

佳作 江口茉莉さん(東京都 クラーク記念国際高等学校 東京キャンパス1年)

社長特別賞 塩田こさちさん(千葉県 松戸市立横須賀小学校1年)

審査員総評

鈴木秀子先生(文学博士)

今年も7歳から18歳までの736名の真剣な感想文が寄せられました。年齢を問わず、どの人も本の心髄を読み取ろうとし、それを手がかりに自分の生き方を正直に見つめ、人間的な成長を遂げる力としておられます。素晴らしい本を読み、読み取ったものを自分なりに表現することが、一人ひとりの人生にどんなに大きな影響力を与えるか、改めて考えさせられたコンクールでした。

皆藤 章先生(臨床心理士)

物語が読者のこころに波紋を投げかけ、その波紋に揺れながら思いが綴られる。素晴らしい感想文に多く接し、わたしも生きる勇気をいただきました。
なかでも、「この本は、私の心に寄り添い、生きることの切なくも温かい美しさを教えてくれた」という感想には、強くこころ打たれました。本書の真髄を伝えることばだと思います。

受賞作品

金賞 六車日鞠さん

 この本の言葉の一つ一つが、心にのしかかってくるような重みを持っていた。ページをめくる手は震え、読了した後はあらゆる感情の波が押しよせ、しばらく呆然としてしまった。
 第一話では、小学生の頃のイチローの練習量に驚いた。何かを得るためには何かを捨てなければならないが、それをいとわずに出来る人だけが夢を実現することができる。私が遊んでいる時間にも、成功者と呼ばれる人たちは努力を積み重ねてきたのだ。私も夢のために、ひたむきに努力を重ねていこうと思った。
 第二話では、母親の痛いほどの自己犠牲に、胸が詰まった。私なら、自分の死後残される人の気持ちを考え、その人のために自分の気持ちを押し殺して嫌われる選択をするなど絶対にできないと思う。人を思う行動と自分のための行動。この二つがイコールで結ばれないときでも、常に他者を思って行動できるように、喜怒哀楽の向こうにあるものを見つめていきたい。

 第三話では、希望の温かさを知った。希望があれば、人はどんな逆境に立たされても力強く生き抜くことができる。相手を思う言葉が、ひたむきな行動が、誰かの心を温めるのならば、私は思いやりを持ち、自分に出来る事を精一杯行い、たくさんの人の心を明るく照らしていこうと思う。
 第四話では、数秒間、思考が止まった。「ぼくが生まれてごめんなさい」のひとことに、どれだけの葛藤が込められているのだろうか。この子が背負うにはあまりにも重い運命に、胸が苦しくなった。私は今生きている。会話もできる。彼が伝えられなかった分まで、私がたくさんの感謝を言葉にして、多くの人に届けていこうと思う。
 第五話では、人生の変え方を学んだ。与えられた環境は、変えることはできない。大切なことは、その環境の中で得たものをどう生かすかだ。一度しかない人生、置かれた環境を嘆くより、その中で自分はどう生きるかを考え、人との縁を大切にし、一日一日を充実したものにしていきたい。
 この本は、私の心に寄り添い、生きることの切なくも温かい美しさを教えてくれた。これからの生き方は、私が選ぶことができる。私はこの本を読んで感じた思いを忘れずに、自分が納得できるような生き方を、この長い人生をかけて少しずつ見つけていこうと思った。


銀賞 渡邉彩加さん

この本は、最近、部活動をサボりがちになり、自分の情熱を見失っていた私にとって、まるで灯台のようでした。
 第一話では、夢を実現する上で大切な三つのことを教えてもらいました。一つ目は、夢に対して本気、本腰であること。二つ目は、自分の夢に対して代償を進んで支払おうとする気持ちが強いこと。三つ目は、報恩の心を持っているということです。私は、イチロー選手が決して諦めず努力を続けた結果、夢を叶えられた姿に自分の目標を見つめ直す勇気をもらいました。
 第二話では、家族の大切さを教えてもらいました。幼い頃に肉親を二人も亡くしてしまうのはとても哀しいことだと思いました。また自分の利益よりも息子のことを優先する母の姿に感動しました。今、両親が傍にいることは当たり前のことでないことに気づきました。検定に合格すると自分のことのように大喜びしてくれる両親の笑顔を見るため部活を頑張ろうと思いました。

第三話では、言葉が持つ力の大きさを教えてもらいました。私の口癖は「どうせ―」や「まぁいっか」だった。「どうせ自習だし」「家で勉強したらまぁいっか」などと自分に言い聞かせて部活をサボっていた。しかし、このままではダメだと思いました。これからは「頑張ろう!」「応援してる」など人の心や自分の心に光を灯す言葉を口癖にしたいと強く感じました。
 第四話では、人生のテーマを考えるきっかけをもらいました。十五歳の少年が命を絞るようにして書き残した詩。私は、大粒の涙を流して何度も繰り返し読んでいた。少年の母への気持ちに切なくも温かくなりました。
 第五話では、たった一年間の担任の先生との縁。その縁に少年は無限の光を見い出し、それを拠り所として、それからの人生を生きた。大事なのは与えられた縁をどう生かすかということを知りました。お弁当を一緒に食べてくれる友達、クラスメイトや同じ部活動で切磋琢磨できる仲間、授業してくださる先生方と出逢えたご縁を大切にして生きたいと思いました。
 これらの物語を通じて私は自分の選択を見つめ直し、再び部活に真剣に取り組みたいと感じました。この本に背中を押してもらい今私は新たな気持ちで前に進んでいます。


銅賞 見野全都さん

 「感謝」「怒り」「辛さ」「悲しみ」「虚しさ」「恥」「憧れ」この本を読んだ時あらゆる感情が私の心をがんじがらめに巻き付けた。
 第一話「夢を実現する」この作文を読み、多くのイチロー選手の強みが感じられた。夢に対しての迷いがないこと、そして夢のために激しい練習など代償を厭わないこと、そしてお世話になった人に恩返しをするという目的。どれを見ても本当に小学六年生が書いたのかと目を疑う内容だった。果たして高校二年生である私はこれほどにも夢に対して、そのものに対して深く考えたことがあるだろうか。素直に鈴木一郎という一人の人間に憧れを感じさせられたそんな一話だった。
 第二話「喜怒哀楽の人間学」母親がなぜ鬼となって息子に対してあるまじき行為を取ったのかを知ったとき心が深く握られるような感覚になった。自分が息子にどう思われようとも、息子の幸せのために手段を選ばない母の苦悩を考えるだけで胸が苦しくなる。消し去ることのできない辛さ、それに加えて正しいと思ったことを貫く母の芯の強さを感じた一話だった。

 第三話「人の心に光を灯す」父からもらったおかげさまのお守り。おかげさまという単なる一つの言葉、だがこの言葉には計り知れないほどの父からの想いとこれからを生き抜いていけるだけの強さが込められている。改めて関わっていく無数の言葉の一つ一つを大切にしていきたい、そう感じた一話だった。
 第四話「人生のテーマ」15歳の脳性マヒの少年が書いた一つの詩。母親にとてつもない苦労をかけていることや冷たい視線に晒されることへの申し訳なさ、そして人の生き方を教えてくれたことへの感謝。拭いきれぬ虚しさを感じた一話だった。
 第五話「縁を生かす」与えられた縁に価値が見出されていくのではなく、自ら価値を見い出していく。少年のそんな姿に驚かされたそんな一話だった。
 この本一つ一つの話が私に突きあげてくるものは非常に重い。夢への覚悟、貫く芯の強さ、言葉の氣力、周りの環境への感謝、縁に価値を見い出していくこと、どれもこれからの人生を歩んでいく中で道しるべとなって後押ししてくれるだろう。大切なのは一日一日、一歩一歩前に進んでいくことではないか。その一歩一歩が私を強くさせてくれることを信じている。


佳作 江口茉莉さん

 この「心に響く小さな5つの物語」を読んで、私は心が温まるとはどういうことなのか理解できた気がする。
 第一話では、夢を実現するために大事なことを述べている。第一に夢に対して本気、本腰であること。次に自らの夢に対して代償を進んで支払おうとする気持ちが強いこと、最後にお世話になった人に対して報いるという報恩の心を持っているということだ。イチローはこの3つの大事なことを小学6年生の時から持っていたことに気づき驚いた。私は、夢を実現するために友達との時間を減らしてまで、激しい練習をしようとは思わない。夢に向って本気で努力をしていて本当にすごいと思った。私には将来の夢がまだない、やりたいと思っても、私にはむりかもと思ってしまう。でもイチローはそんな夢を素直に信じていて、私も夢に本気になれるようになりたいと思った。
 第二話では、喜怒哀楽の表面だけ救い取り受け止めるのではなく、その向こうにあるものにも思いを馳せるべきだと述べられている。私は今家族がいることのありがたみを知った。そして作中の母親が死ぬ前に子供に辛く当たっていたのもある種の優しさだと思う。厳しさの中に優しさが存在しているのだと改めて理解することができた。

 第三話では、人への感謝をすると巡り巡って自分に返ってくる。そのため人への感謝を忘れてはならないと再確認できた。そしてその感謝が人との良縁を作ってくれるのだと気づいた。
 第四話では、重度の脳性マヒという重病を患ってしまっていることについて母への申し訳なさや感謝を書いてある詩である。私なら「なんで自分が」と嘆いてしまうが、そうならずに、母への感謝をしていることがすごいと思った。
 第五話を読んで、第二・三・四・とは違う微笑ましい話だと思った。人は無数の縁に育まれ、その人生を開花させていく。大切なのは、与えられた縁をどう生かすかである。と述べられている。これを読んで私は今までどんな縁を作り結び、どう生かしてきたのだろうか。これからは、縁に感謝し、自分から繋がりを作っていけるようにしたい。
 この本の内容は題名の通り心にとても響く話だった。この本のおかげで自分を見つめ直す機会をもらえたと思う。私はこれからの人生をもっと大切にしながら生きていきたいと思った。


社長特別賞 塩田こさちさん

私は七才です。だから、七年間生きています。ママにさいしょに出会ってからつぎにパパに出会って、それから沢山の人に出あいました。この本には、人との出会が大切だと言うお話が沢山書いてありました。
中でも『縁を生かす』は、服装が不潔でだらしない少年が五年の時の先生と、出会って本当のことをわかってもらえてどんどん幸せになって行く話でした。私はクリスマスに少年がわたしたママのこうすいを先生があとからつけて少年の家に行った時「あぁ、お母さんの匂い!きょうはすてきなクリスマスだ」と、言うシーンできっとママにあえたみたいにうれしかったと思いました。だから十年してから先生をけっこんしきに、母のせきにすわってくださいとカードをかいたんだな。先生も幸せだろうと思いました。
『喜怒哀楽の人間学』は、私がとても沢山泣いてしまったお話です。大好きなママがきゅうに来るなと鬼のようになってしまって、その後に死んでしまったら私ならママにきらわれちゃったと思ってずっとないていると思います。それからずっとかなしいまま生きていた十三才の時、ママからあいされていたことをしって、大好きなママを大好きにもどれて本当の本当によかったなと思いました。

『人生のテーマ』に出てくる重いびょうきの少年は、自分のいのちがきえる前に生んでくれたママにありがとうをつたえていました。自分がつらい時にだれかのためにできるのは、とてもすごいしママのことが大好きなのがわかりました。私だったらできるかな。ママのことをかんがえたらできるきがします。
『夢を実現する』自分がやりたいことをなりたい夢をまよわないですすんで行く人を私は、かっこいいと思います。私は保育園の時からずっと夢があります。だからまよわないでがんばってすすもうと本をよんで思いました。
『人の心に光を灯す』“おかげさま”は、人にかんしゃをするきもちだと思います。ありがとうのかんしゃのきもちは、人と人をつなぐ言葉だと本をよんで思いました。
 この本をよんでわかったことは、2つあります。
 一つめは、人と人の出会いは、大切です。
 二つめは、命を一しょうけんめいに生きる人は、だれかの心をうごかすと言うことです。
 私は、5つの物語の人たちのように、いっしょうけんめいに生きようと思いました。よんで良かったです。


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