致知出版社|人間学を探求して36年

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第二回入賞作品


小学生~高校生部門

金賞 山崎瑞季さん(中学3年)

心が温まるとはこういうことなのかと私は実感した。
目頭が熱くなって、色々な感情がぐるぐると渦巻いている。
本が好きでよく読書をする私だが、こんな気持ちになる本は初めてかもしれない。
先生の紹介で出会った五つの物語が、私にたくさんのヒントを与えてくれた。
自分に足りていなかったものが見出せた気がする。
今中三で、将来や人間関係などで悩んでいる自分は、これからどうしていくべきなのか。
小さな物語が教えてくれたのは、大切なことに違いない。
一話目では、「努力を惜しまない心」を、二話目では、「母の想い」を、
三話目では、「人の心を動かす生き方」を、四話目では、「自分が進むべき道」を、
そして五話目では、「縁の可能性」を…。

どの物語からも大きなものを得たが、中でも印象的だったのが二つある。
一つは、第二話の「喜怒哀楽の人間学」である。
死ぬまで子を愛していた母の姿に感動した。
私はいわゆる反抗期であり、親との会話はかなり少ない。
母がたくさん喋り掛けてくれても、なぜかうるさく感じてしまう。
普通に言葉を返すだけなのに…と後になって思う。
だから、この話を読んでよかったと心から思った。
きっとこの話に出会わなければ、ずっと私は変わらなかっただろう。
今まで母は、どれほど愛をくれたのか。
どんな時も味方で、体調を気にしてくれて、私がそっけなくても笑顔でいる母の優しさ。
私はこの「母の想い」を忘れてしまうところだった。
 
もう一つは、第四話の「人生のテーマ」だ。
「ぼくが生まれて ごめんなさい」。この言葉に私は涙した。
こんなに重い言葉を誰もが言えるわけではないだろう。
母を愛していたから、報いたいという強い気持ちがあったから、
少年は詩を作り上げたのだと思う。
少年は自分の人生のテーマを生き抜いた。
私は、これから何をしていけば良いのだろうか。
私の人生のテーマは何か。まだ、定まっていない。
しかし、「自分の進むべき道」は何となく見えている。
やりたいことをさせてくれた親に感謝して、
自分がやりたいことを将来に繋げていきたい。

もっと早く気付くべきだったと思う部分が何個もあった。
全て読み終え本を閉じてもなお、
涙はとめどなくあふれ出た。
悩みはまだあるが、得たヒントをもとに力強く前進したい。
この涙が、先へと導く糧になると、私は信じている。



銀賞 大島由宇輔さん(中学1年)

僕は、この『5つの物語』を読んで、
どの話にも共通して描かれているのは、
人生を逞しく大切に生きる人たちの姿だと思った。
限られた人生でも時間や場、環境を上手に使えば、
人生を有意義に過ごせることをこの物語は教えてくれている。

第一話で僕の心に残ったのは、イチローの夢への意気込みの強さだ。
毎日、辛い練習をすることは、
松下幸之助氏が言われるように「重荷を背負う」ことだ。
イチローと松下氏には共通点がある。
それは何か。それは二人とも重荷を背負ったことで夢を実現し、
それぞれの業界の第一線で活躍するようになったことだ。
僕には外交官という夢があるため、
二人の生きかたを心の中に入れて頑張りたい。

第二話で僕が感動したことは、母の子への愛情の深さだ。
僕は反抗期であるため、優しかった母に
ものを投げつけられたときの憤りはよくわかる。
でも、この話を読み進め、投げつけられたのは、
ものではなく母の愛情のかたまりだったということに気付き、胸が熱くなった。
激しい喜怒哀楽があるのが人生だが
物事をしっかり考えて行動しようと思った。

第三話で僕の心に残ったのは、
父が娘に送った「おかげさま」が娘のお守りとして彼女を支えたことだ。
「おかげさま」は話すときによく使う。
だが、口に出さなくても心の中で手を合わせれば
相手に通じるものだとわかった。
なぜなら、「おかげさま」は心の中にあるお守りだからだ。
僕は、心に光を灯せるこの言葉はまさにお守りそのものだと思った。

第四話で僕の心に残ったのは、
短い人生でも人生のテーマを決めて達成することができるということだ。
僕は山田君の詩の中で
「お母さんがいるかぎりぼくは生きていくのです」の一節が目に留まった。
山田君の人生のテーマ「母に報いたい」という気持ちがよく表れていると思った。
この詩には題名がない。
僕は、母に自分が「報いたい」という強い気持ちを
心からわかってほしいと願う山田君の思いからではないかと思った。

第五話で感動したことは二つある。
一つ目は縁についてだ。主人公は成人しても恩師との関係を続けている。
僕も人との関係を大事にし、よい人間関係を築きたい。
二つ目は先生が児童の心労に気付き、心のケアをしてあげたことだ。
一人で悩み、自殺する人が多い現代で、
先生のような行動は大切だと思った。
これら五つの話が、今後の自分の人生に役立つように、日々、精進していきたい。



佳作 藤原綾輝さん(小学6年)

この物語は、一つ一つがとても短かくて、
読みやすい物語でしたが、感動がたくさんつまった物語でした。
読み終えたときに心があったかくなりました。

5つの物語に出てくる人たちは、
ぼくには考えられないような大変な人生の中で生きていました。
でもみんな一つの目標や夢や出会いをきっかけにして
自分で大変なことをのりきっていました。
ぼくは、ふだん大変なことがあると、
いつもだれかにたよってしまいます。
「無理」と、よく言うこともあります。

一話目に、イチロー選手がぼくと同じ
六年生の時に書いた作文があったけど、
全力で夢に向かっていて「無理」と言う自分がはずかしかったです。
そして作文の中に、プロ野球選手になったら、
けい約金が一億円を目標にしていることが、
全国大会に行ってほかの選手を見て
自分がナンバーワン選手と確信できている所は
それだけ自分が努力しているから
自信を持って言えるんだなーと思って
また自分がはずかしかったです。

イチロー選手の作文について、
「お世話になった人に対して報いるという報恩の心を持っている」と、書いていました。
六年生でまわりの人達のおかげで、
がんばれているとかんじているところが
イチロー選手のすごさなんだと思いました。
自分だったら、もしテストでいい点がとれても
「自分ががんばったからだ」と、思ってしまうけど、
本当は勉強を教えてくれる先生や
おうえんしてくれるお父さんやお母さんがいてくれるおかげなんだと
初めて気が付きました。

これからは自分のことだけ考えずに
かんしゃの気持ちをわすれないように
「ありがとう」を、言っていこうと思います。

この本を読んで努力する大切さや
かんしゃすることの大切さや
お母さんが子どもを思う気持ちや
まわりの人を大切にしていくことを教えてもらいました。
この物語でぼくはこれからの人生にとって
大切なことをたくさん教えてもらいました。



佳作 応武弘規さん(中学1年)

「五つの物語」を読んで、
どの物語にも共通して思ったことは、
「信念と愛情」があるということです。
人や自分を信じて、思いやり、愛情をもって接していけば、
必ず相手に想いが届く。
そういう希望や力がわいてくるような物語でした。

今、自分の生活する日々は、
この本の物語の人達のようにとても厳しい環境とは違い、
毎日、「あたりまえ」に学校へ行き、
「あたりまえ」に食事を摂り、
「あたりまえ」に暮らせるという、
本当に幸せな環境である事を、改めて感じさせてくれました。

「あたりまえ」の毎日に感謝すると共に、
時間の大切さと向き合わなければならないと思うようになりました。
物語のテーマは「夢を実現する」ために努力を惜しまないこと。
「母の愛」「父の祈り」「人生を活きる」「縁を活かす」と、
様々ですが、ぼくにはどのお話も心に響くものがありました。
ぼくの家族は「ありがとう」という感謝の言葉を沢山使います。
何かしてもらった時はもちろん、
なんでもない日常の中でも「ありがとう」のシャワーを浴びています。
母は、「魔法の言葉」と言って、相手に気持ちを伝える大切さを教えてくれます。
心の中の言葉を素直に口から発信することは、
本当にむずかしい時もありますが、
何事も前向きに行う勇気をもちたいと思っています。
物語と同じ境遇ではありませんが、
ぼくの置かれた立場を、「あたりまえ」だと思わずに、
これからも母に教えてもらった
「ありがとう」という感謝の気持ちを忘れずに
生きていきたいと思いました。


成人部門

金賞 加藤正雄さん

校長になって四年目の全校集会が今でも忘れることができない。
私が勤めた小学校は毎週、全校集会があり、
その中に「校長先生のお話」という時間があった。
私は毎週子どもたちに何を話そうかと一週間前から考え、原稿を書いた。
  全校集会での「校長の話」は、校長が全校児童に行う授業だと思っていた。
だから毎週趣向を凝らし工夫した。
『心に響く小さな5つの物語』にある『縁を生かす』を読んで、
私はたいへん感動した。
「そうだ、この話を子どもたちに読み聞かせよう」

ある全校集会の日、私は一冊の本を持って、
ステージに上がり、演壇の前に立つと、
キラキラと目を輝かせている子どもたちに言った。

「きょうは校長先生が大変感動した本を持って来ました。
この本の中の一つの話をみなさんに読みます」

私はゆっくりと『縁を生かす』を読み出した。
子どもたちは全員すわって聞いていた。
全員の目は私に向けられていた。
読み進めるうちにこどもたちの表情が変わってきた。

「そして一年。届いたカードは結婚式の招待状だった。
『母の席に座ってください』と一行、書き添えられていた」

すべてを読み終えた瞬間、
全校児童が水を打ったように静かになり、
すすり泣く声も聞こえてきた。
職員も皆、黙ってしまい、泣いている。
私は読み終えると、
ただ「これで終わります」と言うだけで精一杯であった。
子どもたちが下を向いて
涙を流している姿をまともに見ることができなかった。
私がステージから降りても、
子どもたちはしばらくの間、誰一人身動きひとつしなかった。
こんなに子どもたちを感動させた
「校長の話」は初めてである。
忘れることができない全校集会になった。
全校集会が終わって子どもたちが体育館から退場する時、
ある1年生の子が目を真っ赤にして私に言った。

「校長先生、きょうの話良かったね。忘れないよ」
今日の授業は大成功だったと自分を褒めた。



銀賞 辻宏康さん

親孝行であった幕末の指導者吉田松陰が
「親思う 心にまさる 親心」という句を残しましたが、
近年、身近にそのような親子愛に触れる機会が
少なくなってきたように思います。 『心に響く小さな5つの物語』では、
喜怒哀楽の向こうにある母の愛、
お父さんからもらった「おかげさま」のお守り、
重度脳性マヒの少年が残した母への感謝の詩など、
言葉では言い尽くせない親と子の愛に触れることができました。

私は父の生前中、父とあまりいい関係ではありませんでした。
いつも妹や弟をかわいがり、
三人兄弟の長男である私にやさしさを示すことは、
あまり無かったからです。
就職に反対、結婚に反対、起業に反対、
私がしようとすることすべてに反対する父でした。
ぶつかり合いの繰り返しでしたが、私も父に屈することなく、
自分のやりたいことを押し通してきたので、
いつまでたってもいい親子関係を築けませんでした。

そんな父の本心に触れたのは、
私が薬局経営で失敗し店が他人の手に渡ろうとした時です。
父にそのことを話すと「お父ちゃん、お前の店こうたる。
その金で支払して、もう一遍死ぬ気で頑張れ」と。
結局、父にお金を出してもらうには至らず、
父の言葉で気持ちを持ち直し、一心不乱に働いて
何とか店を立て直すことができました。

その後、私が市議会議員に立候補を決意した時も、
いつも通り絶対反対と、私が応援をお願いに行った先々に、
後から行って息子を応援してくれるなと横槍を入れる有様で、
周りからは親にも応援してもらえない
泡まつ候補としか見てもらえませんでした。
それでも最後はしぶしぶではありましたが、
多くの方々と共に応援してくれたので、何とか当選できました。
しかし4年たった2期目の選挙を終えた20日後に、父は他界しました。
他界するまでの数年間、
父とはいい親子関係だったように思います。

『心に響く小さな5つの物語』を読み終え、
父との思い出を振り返りながら、
いつも私の障害となった父の存在が、
いかに自分の成長にとって大切だったかを実感しています。
今、私の前に立ち塞がる父はいません。
しかし父から身をもって教えられた体験があったからこそ、
市政運営を任される市長という立場をいただいた今も
「事興るは逆境にあり」の座右の銘の下、
逆境や困難を市勢発展のチャンスと捉えて
頑張れるのだと感謝いたしております。



佳作 久富雅美さん

「大事なのは、与えられた縁をどう生かすかである」。
この一文を読み終えた時、頭から冷や水を浴びせられたような心持ちがし、
しばらくこの一文から目を離すことができなかった。
今まで与えられるだけ与えてもらった縁を全く生かす気がない、
それどころか恩義もすぐに忘れてしまう我が身が情けなく恥ずかしくなった。

この少年はこの一年の縁を恩と為し、
今後の人生で片時も忘れていないのだ。
  私は二十歳の時に母親を亡くしたが、あまり悲しくなかった。
脳出血による突然の呼吸停止だったが、
母の生命力は私に一週間の猶予をくれた。
しかし、私はその残された時間を全く母と向き合わず、
現実感を持って生きなかった。
意識が戻ることなく母は逝ったが、
母との最期の時間を浪費した後悔すら、当時の私にはなかった。

持病のアトピーが悪化し、就活にも失敗した私を見かねて、
叔母が、叔母とその友人が指導する
盆踊りチーム「スターダスト河内」に誘ってくれたことがきっかけで
私の人生は一変した。
誰かに助けられながら人は生きていくという意識すらなかった私に、
チームメンバーは様々なことを教えてくれた。
人は一人では生きられないことを、
生まれて初めて身をもって知った。

盆踊りの活動の中で、見えないご縁・目に見えるご縁、
様々な縁を目の当たりにし、
今までの人生で凝り固まった価値観が崩れていった。
母が死ぬ前に残してくれた時間が
どれほど貴重なものだったかを思い知った。

思えば、母が亡くなるまでの一週間、
母は私にありったけの縁を
かき集めてくれていたのかもしれない。
それくらい、スターダスト河内に入って、
自他ともに認める程、私は変わった。
しかし、その縁を生かして周囲に返すことを全くしていない。
少年が先生から受けた縁を生かして
その後の人生を歩んでいったのと大違いである。
人生を左右するほどの縁と恩を受けているにもかかわらず、
その上にあぐらをかき、傲慢になっている我が身が
この話の少年と比べあまりにも卑しく、恥ずかしくなった。
この身にあり余るほどの縁を受け、どう生かしていくか、
私の人生の課題である。
筆舌に尽くし難い愛情と、
恩情をいただいた叔母とその友人、
チームメンバーに恩返しをし、
最期には母に報告できるよう、自分に厳しく精進するのみである。



致知出版社社長賞

今野華都子さん

私が本を読む理由は、
自分の与えられた運命を積極的に切り拓いて行く時、
生きる為に必要な言葉に出会うためです。

萎れた花に水と光が必要なように、
生きる方向性を確認し、
力が湧き出る生き様に出会いたいと思うときがあります。

この本を手にしたとき、本の佇まいや
鶴太郎さんの表紙の絵に心踊りました。

5編の物語の中「人の心に光を灯す」には、
誠実に暮らしている父親が事故で亡くなる寸前に、
高校生の娘に残した言葉がでてきました。

「これからはお前一人になる。すまんなあ、、、」
そして、こう続けた

「いいか、これからは"おかげさま、おかげさま"と心で唱えて生きていけ。
そうすると必ずみんなが助けてくれる。
おかげさまをお守りにして生きていけ」

親ならば一人前になるまで見守ってあげたい、
しかしそれが叶わない人生もある。
そのとき、娘がみんなから自然と愛され幸せになっていく
"おかげさま"の言葉を一生の「おまもり」として残して逝く。

彼女はその言葉を実行し、
村人から優しく助けられて行く。
父の最期の言葉が娘の心に光を灯し、
その光が村人の心の光となり、
さらに照り返して彼女の生きる力になっていく。
父からもらった"おかげさまの"お守りは、
彼女を一生守る父の生き様でもあります。
自身が、積極的に明るく感謝の心で生きることが
自分を豊かに幸せにし、誰かの灯明となっているという。
ことさら誰かのためになど思わなくても、
自分に与えられた人生を、悲しみに囚われ過ぎず、
人に優しくし、見えない"おかげさま"を言葉に生き続けること。
この本を読み進めていくうち、
月刊誌致知の中から選りすぐられた真実の言葉は、
私の心の中に光の粒の様に溜まりました。
自分は何を難しいことを考えていたのだろう!
「誰かが悪い、私には出来ない」
自分の中に淀んでいた感情が涙となって
いっきに流されていきました。まるで洪水にあったようでした。

そこにあったのは植物が光の方向へのびるように、
素直に良い方向へ生きようとする心でした、
本来持っている力を洗い出し照らし強くしてもらいました。

「人の心に光を灯す それは自分の心に光を灯すこと」
この先も何度でも読み返して、これからの人生でもこの思いを忘れないように生きていきます。


 

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