年間4億本以上売れる「ガリガリ君」はなぜ生まれたか——マーケティングの極意|鈴木政次×小林正典

年間販売数が4憶本を超える氷菓子「ガリガリ君」。世界売り上げナンバーワン(部門別)としてギネス記録に認定されたチョコレート菓子「ポッキー」。それぞれの生みの親である赤城乳業元常務の鈴木政次さんと、江崎グリコ チョコレート・ビスケットマーケティング部部長の小林正典さんに、ロングセラー商品を生み出す極意を語り合っていただきました。

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大ヒット商品はピンチの中から生まれた

〈鈴木〉
私は1年目に商品開発部に配属されて以降、退職するまでに1000個以上の新商品をつくってきました。いまも世の中に残っているのはガリガリ君以外にチョコアイスの「BLACK」やみかんを凍らせた「ガツン、とみかん」など30商品くらいあります。

〈小林〉
30種類もですか。それはすごい。

チョコレート菓子の市場だけでも毎年約1000種類の新商品が生み出され、大半が1年以内に市場から姿を消すといわれていますから、どれだけ大変なことかがよく分かります。

〈鈴木〉
時代がよかったんですよ。ただ、先ほどもお伝えした通り、オイルショックの頃に会社が倒産の危機に直面しました。材料費の高騰により売れば売れるほど赤字になるので、やむなく値上げしたところ今度は全く売れなくなり、二進(にっち)も三進(さっち)もいかなくなりました。

1979年、当時商品開発部のリーダーだった私に、このピンチを打開するべく「赤城しぐれに匹敵する会社の柱になる新商品を開発せよ」との指令が下りました。それで2年がかりでつくったのがガリガリ君なんです。

〈小林〉
ああ、逆境の中からあの大ヒットが生み出されたのですね。

〈鈴木〉
その頃、ファストフードが次々に日本に入ってきた頃だったので、ワンハンドで気軽に食べられるアイスにしようというコンセプトだけはありました。

ただ、それまでカップだった商品をバーにしただけだったら、問屋さんから安売りしろと値切られるのがオチですので、当初から既存の売れ筋フレーバーは絶対に使わないと自分の心に誓っていました。

それでどうなったかというと、残っているのは売れない味ばかりですので、味が決まらず悩みに悩んで円形脱毛症になり、自殺寸前にまで陥りました。人間っておかしなもので、追いつめられると逆に頭が冴えてくるんです。

その時も自分の中にいるもう一人の自分が、「おまえは自分の業界しか見ていないじゃないか」って言うんですよ。それで冷静になってアイス業界以外に目を向けると、飲料業界で不滅のナンバー1商品があったんです。それがサイダーとかラムネでした。そこから着想を得て、ガリガリ君のソーダ味が誕生したんです。

〈小林〉
追い詰められた先に閃(ひらめ)きが得られるということですね。

〈鈴木〉
ネーミングに関しても、「赤城しぐれ」を木のスプーンで削った時のガリガリという音を商品名にしたいということは決まっていました。

しかし、いまいちピンとこず悩んでいると、当時まだ専務だった井上秀樹会長が「〝君〟をつければ?」とさらっとおっしゃったんです。それでガリガリ君となりましたが、君をつけたことで愛着が湧いて多くの人に商品を認知してもらえるようになっただけでなく、口コミで広がっていく要因にもなりました。

〈小林〉
ガリガリ君という名前は一度聞いたら忘れられません。

〈鈴木〉
1981年に商品化され、おかげさまで昨年40周年を迎えました。現在は年間4億本以上販売されていて、ガリガリ君のおかげで赤城乳業は倒産の危機から脱することができたんです。


(本記事は月刊『致知』2022年5月号 特集「挑戦と創造」より一部を抜粋・編集したものです)

★『致知』2022年5月号 特集「挑戦と創造」には、ロングセラー商品「ガリガリ君」「ポッキー」を生み出した赤城乳業元常務・鈴木政次さんと、江崎グリコ チョコレートマーケティング部部長・小林正典さんの対談を掲載。ロングセラー商品を生み出す極意を、様々な事例、ご体験談を交えて語り尽くします。ぜひご覧ください。詳細はこちら(全文は電子版でもお読みいただけます)

◇鈴木政次(すずき・まさつぐ)
昭和21年茨城県出身。45年東京農業大学卒業後、赤城乳業株式会社に入社。1年目から商品開発部に配属される。その後一貫して商品開発、営業に携わり、「ガリガリ君」「ガツン、とみかん」「ワッフルコーン」「BLACK」など数々のヒット商品を生み出し、国民的ロングセラーに育て上げた。現在、講演活動も幅広く展開し、「講演依頼.com」の依頼ランキングで殿堂入りを果たす。著書に『スーさんの「ガリガリ君」ヒット術』(ワニブックス)がある。

◇小林正典(こばやし・まさのり)
昭和46年大阪府生まれ。平成6年新卒で江崎グリコに入社。9年間営業職に従事後、マーケティング職へ異動。3年後に「おつまみスナック」という新ジャンルを生み出す。チョコレート部門に異動後は、売り上げが横ばいだった定番商品「ポッキー」の売り上げを5年間で50億円伸ばした他、数々のヒット商品を手掛けた。著書に『結果を出すのに必要なまわりを巻き込む技術』(ポプラ社)がある。

『致知』2022年6月号では「伝承する」をテーマに、各界プロの体験談を掘り下げました。
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