2022年度受験者数No.1(大阪府)。箕面自由学園・田中良樹校長の〝生徒愛〟

1926年創立、大阪府箕面(みのお)市の箕面自由学園中学校高等学校。2021年に受験者数で府内ナンバーワンを獲得、続く今年も2位以下を大きく離し、再びの頂点に輝きました。しかし、その立役者である田中良樹校長が就任した当初、学園全体に「現状維持に甘んじている雰囲気」があったといいます。そこから生徒が殺到する学園をつくるまでに、どのような道を歩んできたのでしょうか。お相手は岐阜県で教員の就職率ナンバーワンを誇る聖徳学園の杉山元彦理事長です

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大阪府内受験者数No.1への道のり

〈杉山〉
学園は改革が必要な状況だったのですか?

〈田中〉
その逆で、もともと大阪府内ではある程度のレベルがある中堅校だったのです。しかし、学園全体に現状維持に甘んじているような雰囲気がありました。少子化によりマーケットが縮小していく中で、現状維持は衰退を意味します。校長に就任して、私が行ったことは大きく2つあります。

まず、私学ですから生徒が来てくれなければ潰れてしまうので、生徒募集に力を入れました。大学のように全国区ではないので、大阪府内の公立中学を中心に「高校受験をすること」というテーマで講演をスタートしました。箕面自由学園の単なるPRではなく、純粋にこれまでの現場経験から中学生に伝えたい思いを話しています。

〈杉山〉
田中先生自らが講演に回られたのですか。

〈田中〉
はい。「新しい学校づくりが始まっている」ことを受験生をはじめ、外部に周知する役割を誰かが担わなければならないとしたら、校長自ら率先垂範するのがいいだろうと。日頃の本校の教育力には素晴らしいものがあり、それをもっと世間に知ってほしいと思えば、トップセールスしかありません。

塾やPTA行事などで保護者向けに話すこともありますし、それ以外に学校説明会を少なくとも年4~50回は行っています。1日に3回実施する場合もありますが、私の背後には志を同じくする熱心な教師陣がついていますので、自信を持って希望溢れる未来の学校像を語ることができています。

その次に力を入れたのが入学者の満足度を高めることでした。うちに入学してくる子は、残念ながら半分くらいは第一志望の公立高校に失敗した生徒たちです。その生徒たちに、「案外来てみたらよかった!」と思ってもらうことが、学校全体の魅力の向上に繋がると考えました。

校長である私が一人ひとりの子どもと真剣に向き合うために、毎年高校1年生に校長講話とモチベーションアップ講座を行っています。そこでは人生は二度とないこと、人から受けた恩の大切さなど、当たり前のことですが、私がこれまで生きてきた中で「人として」大切だと思うことを話しています。

そして終わったら必ず感想文をA4用紙一枚にまとめてもらい、私がそのすべてに目を通してコメントを書いて返却しています。実は、今朝もコメントを書いていたので、ここに持ってきています。

〈杉山〉
これはすごいですね。生徒さんは何名いるのですか。

〈田中〉
今年の1年生は765名です。それを年2回やっていますし、外部の生徒向け講演でも感想文を書いてもらってコメントをつけているので、年間3,000枚以上に書いていると思います。

一日に何枚も書くとコメントの内容が同じになってしまうので、一度に20枚程度と決め、早朝に1時間コメントを書くのが日課です。そしてその感想文は学級担任に返して、一度読んでから生徒たちに戻すように伝えています。

そこには生徒の素直な感想が書かれており、悩みや日頃の思い、担任の先生への感謝、学校への要望がぎっしり書かれているのです。これを読めば、学校の進むべき道が自ずと見えてくる気がします。

〈杉山〉
いやー素晴らしいです。なかなかできることではありません。

〈田中〉
これが私流の生徒とのキャッチボールで、もはや最大の趣味と言ってもいいかもしれません。

▲田中校長の講演を聞き、生徒が書いた感想文。
校長自らが一枚一枚丁寧にコメントを添えている

〈杉山〉
高校受験者数が2021年に大阪府一番になったと聞いていましたが、そうした地道な努力があったことに感動しました。

〈田中〉
赴任1年目から積極的に講演を行っていたので、受験者数はぐんと伸ばすことができましたが、本当に学校が変わったと感じたのは3年ほど経った頃でした。

もっと端的に言うと、学校の向かおうとしている方向性が社会に浸透してきた頃でしょうか。箕面自由学園でこんなことをしたいと目的意識を持って入学してくる生徒が増えた結果ですが、進学実績や受験者数など数字として目に見える成果を出せたことで、「箕面自由学園は変わってきている」と認めていただけるようになりつつあります。

すべての答えは生徒の中にある

〈田中〉
話は変わりますが、私が教師になったばかりの頃に読んで、いまでもとても大切にしている本があります。それが、戦後の国語教育の礎を築いた大村はま先生の『教えるということ』です。

半世紀以上教壇に立ち続けた大村先生が、プロの教師としてあるべき姿、教育に懸ける姿勢について、若い先生向けに厳しくも愛のある言葉で綴った本です。

「あなたは先生と呼ばれるに足る人間か?」
「専門職としての実力を蓄えるための自己研鑽に抜かりはないか?」、

など自省を促される言葉ばかりで、この本は私の教師としての原点です。

特に「先生と呼ばれるに足る人間か?」という問いは、迷いがある度、また困難な事象に出合った時、何度も何度も自問自答してきました。教師になって30年以上経ちますが、未だに私は先生と呼ばれることにものすごく抵抗があります。先生と呼ばれようと思ったら、もっともっと日々やるべきことがあるように思います。

「すべての答えは生徒の中にある」。

教師は生徒から学ぶことが多いです。本校には日々頑張っているクラブがたくさんあるのですが、とりわけ全国優勝常連校のチアリーダー部は常に「日本一」を目指し、チーム一丸となってひたむきに努力をしています。

その「ひたむきさ」そして、「心を一つにして一点突破する」という姿を見る度に、「私にもまだまだできることがある」と気づかされます。こんな生徒たちから「校長先生」と呼ばれるに足る努力をこれからも続けていこうと思います。


(本記事は月刊『致知』2022年2月号 特集「百万の典経 日下の燈」より一部を抜粋・編集したものです)

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◇田中良樹(たなか・よしき)
昭和38年兵庫県生まれ。大学院を卒業後、通信教育で教員資格を取得し、27歳から教壇に立つ。大阪桐蔭高等学校に14年、近畿大学附属高等学校に11年務める。平成26年から箕面自由学園高等学校の副校長に着任し、翌年校長に。令和3年学園長を兼務。

◇杉山元彦(すぎやま・もとひこ)
昭和34年岐阜県生まれ。57年愛知大学法経学部卒業後、父親が創業したパール化成品入社。63年、29歳の時に社長に就任。翌年聖徳学園評議員に。平成23年理事長就任。

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