人生は必ずやり直せる。受刑者専門求人誌『Chance!!』に懸けて(三宅晶子)

日本での前科者に対する風当たりは強く、社会での活躍はおろか就労にすら難儀する現状があります。そんな中、2018年3月に日本初となる受刑者専門求人誌『Chance!!』がスタート。創刊者の三宅晶子さん(ヒューマン・コメディ社長)は、日本のこうした風潮に「このままだと日本が滅びてしまう」と語ります。その真意とは何か。自身も道を踏み外しかけたという若き日を含めて語っていただきました。

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過去を〝ネタ〟に変える生き方を

――使命感を持って打ち込まれているのですね。

〈三宅〉
というのも、私自身が若い頃にレールを踏み外して再び社会に受け入れてもらった経験があるので、一度過ちを犯した人に対して、あまり優しくない現状の社会を変えられたらと思うのです。

お恥ずかしい話ですが、私は中学校に上がるとすぐにヤンキーブームにかこつけてお酒やたばこに手を出し、無免許でバイクを乗り回して喧嘩に明け暮れる日々を過ごすようになりました。

そもそも両親がちょっと変わった人たちで、共に新潟の地方銀行員でしたが、父は定年制延長について、母は男女差別について、銀行相手に裁判を起こしていたのです。

それは困っている人がいるからという強い使命感からの行動だったものの、当時小学校低学年だった私は、多忙な両親が自分の話を聞いてくれない不満を常に抱え、立派過ぎる両親と比べて劣等感も抱いてしまっていたんです。

――それで非行に走ってしまった。

〈三宅〉
悪いことをすればするほど仲間から賞賛が得られるので、一所懸命悪くなろうと。そんな生活を送っていたため、高校1年の夏休み明けに退学処分になりました。

ちょうどその頃、母親が大きな交通事故を起こして入院しており、父と一緒に退学の報告に行きましたが、あんなに重い報告は後にも先にもありません。病室のベッドの上で母親が泣いている姿を見て猛省しましたし、なぜか真っ黒な人生グラフのようなものが見えて、自分の人生がストーンと急降下しているのが分かったんです。

その時にふと、「このままではいけない。いつかこれを絶対にネタに変えよう」という思いが込み上げてきました。人前で講演をしたり、本を出版したり……と自分の将来が鮮明にイメージできたのです。

そこから無意識に、自分で自分の人生をプロデュースする作業が始まったように感じます。

――具体的にはどのように道を切りひらいていかれましたか?

〈三宅〉
お好み焼き屋さんに就職して働いていた時、何かの用事で訪れた父に新潟一おいしいといわれるお寿司屋に連れて行ってもらい、帰り道に「これ、読んでみな」と、デカルトの『方法序説』を手渡されたんです。

そこで翌日から読み始めてみたものの全く歯が立たない。辞書を片手に読んでも、注釈すら分からず、その悔しさから大学に行こうと発心しました。高校に通い直して23歳の時に早稲田大学に入学し、卒業後は一部上場企業で働くようになりました。

「人間には笑う人と笑わない人がいる」

――この仕事を続ける上で大切にしていることはありますか?

〈三宅〉
現在の日本には、一度失敗した人を排除しようとする風潮がどこかにあり、このままだと日本が滅びてしまうのではないかとさえ感じます。ですので、取材や講演の機会をいただいた際に「想像力が大事」と伝えています。

自分が彼らと同じ境遇になったらどうするか。どんな背景や理由があって起きた出来事なのかに思いを馳せるだけでも、いいと思うんです。

といっても、自分が体験していないことを想像するのは難しいですから、最近は

「当たり前のことに感謝ができているでしょうか」

と問い掛けています。犯罪をしなくても済む恵まれた環境に生きていることへの感謝と謙虚さがあれば、そうでない人をむやみに攻撃することはないのではないかと。

――感謝と謙虚さが大事だと。

〈三宅〉
実は、ヒューマン・コメディの社長を務めてはいるものの、当社からは報酬をもらっていません。私は納棺師として収入を得ているのです。

その納棺の世界へ私を導いてくださった先生から、

「人間には笑う人と笑わない人がいる」

と教わりました。亡くなった後お顔を整える時、眠っているように安らかな表情をされる方と、苦しそうな表情のままの方がいるんです。

「笑う方」の周りは、ご遺族が泣いたり笑ったり、思い出話をしたりと温かい雰囲気であることが多いんです。一方、「笑わない方」の場合は、ご遺族が大勢いても誰も口を開かなかったり、あまりご遺体に触れようとしなかったりと、よそよそしく冷たい雰囲気のことがよくあるんです。

そうした場を見ながら、死ぬ時に笑う方は、生前目の前の人たちをたくさん喜ばせて、笑顔にした方なのではないかと感じています。

――多くの人を笑顔にした人が、笑って亡くなっていく。

〈三宅〉
この活動の根底にも、皆に笑って死んでいける人生を送ってほしいという願いがあります。

過去に失敗や間違いをしてしまったとしても、それをネタにして、笑って死ねるように生きる。中には、ネタにしてはいけないような過ちを犯した方もいると思いますが、出所後に目の前の人を喜ばせるよう一所懸命生きて、最期に笑って死ねたら、それは喜劇になると思うんです。そういう願いを込めてつけたのが、ヒューマン・コメディという社名です。

人生は必ずやり直せる。すべての人は過去を価値に変えることができる。そう信じています。


(本記事は『致知』2020年12月号 連載「第一線で活躍する女性」より一部を抜粋・編集したものです)


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◇三宅晶子(みやけ・あきこ)
昭和46年新潟県生まれ。中学時代から非行を繰り返し、高校を半年で退学。早稲田大学卒業後、一般企業で働く。平成27年ヒューマン・コメディ創業。30年に受刑者専用求人誌『Chance!!』を創刊。アンガーマネジメントファシリテーター。依存症予防教育アドバイザー。

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