経営に革新を起こすために大事なこと 澤田秀雄×北尾吉孝

SBIホールディングスCEOとして金融業界に革命を起こしてきた北尾吉孝さん。格安航空券の販売や航空会社の設立、ハウステンボスの再建など、様々な事業を発展させてきた澤田秀雄さん。常に新たなチャンレンジをしてきたお二人に、急激な変化の時代に対応し、事業を発展に導くヒント、リーダーのあり方について語り合っていただきました。

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経営の新たな地平を拓く

(北尾) 

澤田さんはHISの時もそうですが、スカイマーク(エアラインズ)を立ち上げられた時にも、ずいぶんと話題を呼びましたね。

(澤田) 

いや、欧米だと航空会社をつくることなんて訳ないんですよ。実は私もあんなに大騒ぎになるとは思っていなかったんです(笑)。

平成8年当時、国内の航空会社にはJAL、ANA、JASの三社があって、料金が高止まりでほとんど変わらなかったんですね。海外には何十社も航空会社があるため、自由競争が働くんですが、日本では2社か3社が話し合えばそこで料金は下がらないんです。

海外を見てみますと、まさにローコストキャリア(格安航空会社)の時代を迎えようとしていた時ですから、日本でもその態勢を早くつくらないことには、いずれJALやANAも辛い思いをするだろうと。そのためにはまず航空会社をつくらなければ安くならないはずと考えて動き出したんですが、これは本当に苦労しましたね。

(北尾) 

しかし航空会社をつくるとなると半端な資本金じゃないでしょう。

(澤田) 

機体は一機で110億か120億円。それに、当時の日本にはいろいろと規制がありましてね。外国人パイロットはダメだとか、料金は自由に決められないだとか。

で、実際に競争してみたら大変なことになりました。相手はいわば大群で、こちらはわずか数機。勝てるものは料金かサービスしかないと、我々は大手の半額にして飛行機を飛ばしたんです。すると話題性もあり料金も半額にしましたから、多くの方に使っていただけたんですよ。稼働率は当初、80%から90%ありました。

JAL、ANAはしばらく様子を見ていたんですが、数か月後にはもう一気に値段を荒らされましたね。あちら側も半額にしてきたために、稼働率がどーんと下がって30%から40%になり、3年間は何十億もの赤字でした。

(北尾) 

よく持ち堪えられましたね。

(澤田)

継続は力ですから(笑)。我々も対抗して正月もお盆も全部半額にしたんですが、大手が同じ値段にするとブランドの安心感があってそっちへ行っちゃうんですね。

そこで我々も方針を変え、夏の期間やお正月をちょっと高くさせていただくなど「イールド・コントロール」というものを行って、なんとか黒字にしたんです。

(北尾) 

どれくらいで安定しました。

(澤田) 

大体4、5年かかりました。

ところがその後、また次のチャレンジがありましてね。山一證券の子会社で、9年間ずっと赤字の証券会社の支援を頼まれたんですが、最初はお断りしていたんです。旅行業とは全然違いますからね。役員会でも全員が反対でした。

だけど3回も頼まれるとなかなかノーとは言えない質で(笑)、じゃ受けましょうとなったんですが、正直なところ、やらなかったほうがよかったかと思ったくらい辛い思いもしました。これも3、4年で上場させることができましたが。

(北尾) 

大したものですね。

(澤田) 

いやいや……、だけど継続は本当に力だと思いますね。どんな事業であれ、お客様の目線で物事を考え、本当にいいサービス、いいクオリティー、いい値段をきちんと提供していければ、大概黒字にはなると思うんです。

(北尾) 

しかし澤田さんのお話にもあったように、日本ではあらゆることに規制がかかっていて、ベンチャー企業が参入しづらく、育ちにくい環境にある。それはあらゆる業界に存在していて航空業界なんかはまさにそれなんでしょうね。

(澤田) 

だからその分日本は後れを取りましたよね。結果としてJALがああいう形になってしまった。

(北尾) 

えぇ。世界はどんどん動いていっているのに、日本だけが旧態依然としたまま、それを維持しようとしたって無理ですよ。

そしてそれだけに、当時澤田さんがされたのは大変なことなんです。誰もやらなかったことをやった。その勇気というか、チャレンジスピリットには敬服します。

金融の世界でもそうですが、日本での新商品の開発は本当に遅れているんです。ソフトバンクも元々はコンピュータソフトの卸の会社ですが、孫さんはそれをアメリカを見てつくったんですね。それもある種の先見性で、世界を見て、日本に必要だと思うサービスを連れてくる。そうすればこれだけ規制の多い国ですから、まだまだチャンスはあると思いますよ。

考え方のバックボーンが大事

(北尾) 

澤田さんは非常に早い段階でモンゴルにも出て行かれて、向こうの銀行を買収されましたよね。あれもいまは順調なんでしょう?

(澤田) 

はい、いまやモンゴル一の銀行になりました。買収したのは7、8年前のことでしたが、当時のモンゴルは辺境の地で、日本では誰も見向きもしない国でした。

初めて東京からモンゴルへ直行便が就航したのが、ちょうど社会主義から資本主義に移っていく時期で、元々国営だった銀行が全部払い下げになったんです。その時にある人から、銀行を入札してはどうかと言われたんですが、私は「そんな危ない国に投資するわけがないでしょう」と断りました。すると、値段が安くてモンゴル人も親日的だと言うので、マーケティングをしてみたんです。 

するともの凄く豊富な鉱物資源があることが分かり、この国は将来化けるかなと感じたことと、資本主義の中枢は金融にありますから、5年後、10年後にチャンスが巡ってくるかもしれないと考えて我々が入札したんです。 

結果的に、当時4番目で赤字だったその銀行は、いまモンゴル一になって、預金量が毎年40~50%増えています。モンゴルの経済にも寄与して喜んでいただいているんじゃないかと思いますね。 

(北尾) 

当時、モンゴルの銀行なんて誰も考えていませんでしたからね。やっぱり目の付けどころですよ。グローバルな視野を持ち、この先どんな事業が伸びるかをきちっと押さえておられる。いまの例のように、この国には資源がある、資源があればいずれ金融が伸びてくるという、そういう見方ですね。

(澤田) 

私はいろんなベンチャー企業に支援をしていて思うのですが、やはりしっかりとした思想や志がある起業家は、長く成功する確率が高いと思いますね。たまたま何かが当たったとかで短期間で成長しても、考え方のバックボーンがきちっとしていないと長続きしないと思うんです。

(本記事は『致知』2011年5月号「新たな地平を拓く」から一部抜粋・編集したものです。あなたの人生や経営、仕事の糧になる教え、ヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら

◇澤田秀雄(さわだ・ひでお)

昭和26年大阪府生まれ。48年旧西ドイツ・マインツ大学留学。55年インターナショナルツアーズ(現エイチ・アイ・エス)設立。平成7年店頭公開。8年航空会社スカイマークエアラインズ設立。11年協立証券(現エイチ・エス証券)代表取締役。15年モンゴルAG銀行(現ハーン銀行)会長。22年ハウステンボス社長。著書に『HIS 机二つ、電話一本からの冒険』(日本経済新聞社)『旅行ビジネスという名の冒険』(ダイヤモンド社)『思う、動く、叶う!』(サンマーク出版)がある。

◇北尾吉孝(きたお・よしたか )

昭和26年兵庫県生まれ。49年慶應義塾大学卒業、野村證券入社。53年英国ケンブリッジ大学卒業。平成4年野村證券事業法人三部長。7年ソフトバンク入社、常務取締役。11年ソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディングス)社長。12年SBIイー・トレード証券会長。著書に『何のために働くのか』『君子を目指せ小人になるな』『安岡正篤ノート』など多数。最新刊に『森信三に学ぶ人間力』(いずれも致知出版社)。

【北尾氏から寄せられた推薦の言葉】

北尾吉孝 氏(SBIホールディングスCEO)

41年という長きに亘る人間学の啓蒙活動に深甚の敬意を表したい。致知出版社の出版物のほとんどの書物と毎月刊行される雑誌『致知』から小生は今日までどれだけ多くのことを学ばせて戴いたかを考えると感謝に堪えない。これからも我が人生の指南書となって導いてくれると信じ、頼りにしている。

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