渦の中心になれ——稲盛和夫に学んだリーダーの心構え 大田嘉仁×森島朋三

稀代の名経営者・稲盛和夫さんの側近中の側近として破綻した日本航空の再建に尽力した大田嘉仁さん。来年創立120年を迎える京都私学の雄・立命館の理事長として様々な改革に取り組んできた森島朋三さん。ともに稲盛和夫さんを師と仰ぐお二人に、これから求められるリーダーの心構えを語り合っていただきました。

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いま求められるリーダーのあり方

(大田) 

ある意味、森島さんのこれまでの歩みも大学教育の常識、枠を打ち破ってきたと言えますね。

(森島) 

私は「思い切って理想像を描こう」ということをやり続けていくことが重要だと思うんです。世の中の変化は本当に早く、時代を読み切れない面がありますよね。そのような時こそ、「バックキャスト思考」が求められていると思います。

ですから、日々の社会的な動向ではなく、いまはできそうもないことでも、立命館はどうあるべきなのか、どうありたいのか、思い切って理想像を描くことが大事だと。しかも、それは立命館のためだけではなく、教育全体に意味があるものでなくてはいけない。大義ある理想像を掲げていけば自然に立命館が行くべき道も決まってくる。そう思ってきたんです。

(大田) 

なるほど。思い切って理想像を描く。大事なことですね。

(森島) 

そして、そのために考えに考えていくと、脳の中にアイデアが出てきて、壁を突破するヒントが見つかるんです。

リーダーは、その組織の中で最も考える人でなければなりません。稲盛さんもJALの再建だけではなく、第二電電などをつくる際にも、考えに考えた上に理想像というもの、人々のためになるという大義が自分の中に落ちてきたから、実現に向けてがむしゃらに進んだのだと思うんです。

誰よりも考える、それがいまも昔も変わらないリーダーの条件ではないでしょうか。

(大田) 

おっしゃる通りですね。

(森島) 

あと、最近はコミュニケーションが大事だなと強く感じています。組織においては、ディスコミュニケーションが原因で不信感が生まれたり、不満が起きたりするわけです。私の経験でも、コミュニケーションがなかったために大きな問題に発展したということがありました。ですから、風通しのよい組織をつくることは、リーダーの1つの大きな責任だと思います。

私は40代の時、50代前半の時、そして56歳で理事長になった時の3回、それぞれ別の方から「『貞観政要』を読みなさい」と言われました。『貞観政要』は簡明かつ本質的なことを説いているんですね。要は上に立つ人間は周りと部下を信用してコミュニケーションをきちんと図ることが大事なんだよと。

(大田) 

確かに人は上に立つと独善的になりやすく、自分では一所懸命善いことをしていると思っていても、周りから見たら独りよがりに思われていることがよくあります。そこは最後は自分自身で戒めていくしかないのですね。稲盛さんも反省の日々を送ることで、自分を律するんだと、その大切さを説いています。

(森島) 

いかに自分を律していけるか。リーダーは常に肝に銘じておかなければいけませんね。

(大田) 

枠を破るということでいえば、稲盛さんに「渦の中心になる」という考え方があるんです。

これは特に若い方には参考になると思うんですが、何か問題が見つかれば、自分がリーダーとなって、皆を巻き込み、渦を起こし、解決しなくてはならない。渦の周辺にいるより真ん中にいるほうがやりがいがあるんだと。

しかし、これを稲盛さんがJALの幹部に話したら、「皆自分の仕事が忙しいので、なかなか渦の中心になるのは難しいのではないか」と質問した人がいました。

すると稲盛さんは、「自分のA課だけでなく、BやCの課にも協力してもらわないと解決できない問題があったとする。それに取り組むのは確かにしんどいが、自分の枠を超えた問題に取り組もうと思わない限り、成長はできないし、本当のリーダーにはなれないんだ」とおっしゃったんです。

普通は、与えられた仕事以上のことをやろうとすると、負担も大きいし、周りからはおせっかいと思われ、自分が損するからと躊躇すると思うんです。

でも、稲盛さんの考え方は違う。それは自分が成長するチャンスでもあると前向きに考える。そして、B課もC課にも協力してもらい、会社のためにこの問題を解決しようじゃないかと、渦の中心になっていく。そうすることで初めて枠を超えた大きな仕事ができるようになり、またリーダーとして成長もできるんだと。

(本記事は月刊『致知』2019年5月号「枠を破る」から一部抜粋・編集したものです。各界一流の方々のご体験談を多数紹介。あなたの人生、経営・仕事の糧になる教え、ヒントが見つかる月刊『致知』の詳細・購読はこちら

◇大田嘉仁(おおた・よしひと)
━━━━━━━━━━━━━━━━             昭和29年鹿児島県生まれ。53年立命館大学卒業後、京セラ入社。平成2年米国ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール修了(MBA取得)。秘書室長、取締役執行役員常務などを経て、22年12月日本航空専務執行役員に就任(25年3月退任)。27年12月京セラコミュニケーションシステム代表取締役会長に就任、29年4月顧問(30年3月退任)。現職は、稲盛財団監事、学校法人立命館評議員、日本産業推進機構特別顧問。著書に『JALの奇跡』(致知出版社)がある。

◇森島朋三(もりしま・ともみ)
━━━━━━━━━━━━━━━━             昭和36年大阪府生まれ。61年立命館大学産業社会学部卒業後、京都・大学センター(現・公益財団法人大学コンソーシアム京都)などを経て、学校法人立命館に入職。平成8年から16年まで京都・大学センターに出向。その後、総務部長、常務理事、専務理事等を経て、29年7月より現職。

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