五木寛之×稲盛和夫 日常生活の中で自分を磨き高める秘訣

 

同じ昭和7年に生まれ、片や経営者、片や作家として異なる道を歩んできた稲盛和夫さんと五木寛之さん。活躍する分野は違えど、ともに生と死に真摯に向き合ってきたお二人に、日常生活の中で自分を磨き高める秘訣について語っていただきました。

教えと実践は重なっていなければならない

(稲盛)
白隠禅師は『坐禅和讃』の中で、坐禅をして悟りを開くことも大事だけれども、お布施をしたり念仏を唱えたり懺悔をしたり、日常生活の中でそういう諸善行に勤めることも悟りに近づくもとなんだと説いていますね。
 
六波羅蜜という仏の教えがありますね。布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧、これを実践するだけでいいと私は思っているのです。つまり布施は、人様のために一所懸命奉仕をすること。持戒は、人間としてやってはならないこと、人様が不愉快に思うことをしないこと。

忍辱は、人生における様々な困難を耐え忍ぶこと。精進は、一所懸命働くこと。禅定は心を静かに保つこと。そういうことを地道に続けていけば、魂が磨かれ、心がきれいになり、智慧という悟りの境地にまで達することができるということです。
 
いまお話しになった新しい平成の仏典を通じて、せめてそういうことを多くの人が理解するようになれば、と思います。

(五木) 
おっしゃる通りだと思います。そういうものは道徳であって、仏教というのはもっと高遠なものを求めるんだと考えられがちですが、僕はやっぱり教えと実践は重なっていなければいけないと思いますね。ブッダの生涯そのものがそうでした。
 
いまお話しになった布施の中には、「無財の七施」(眼施、和顔施、言辞施、身施、心施、床座施、房舎施の七つの施し)というのがあって、僕は大好きなんですけれども、眼施、つまり優しい眼差しで相手をじっと見つめるということも一つの大きな布施ですから。

和顔施、通りすがりにニッコリ笑って、相手の心を春風が吹いたような気持ちにしてあげることだって大きな布施でしょう。

そういうことをお坊さんが分かりやすく語って広く理解されるようになり、様々な分野に導入されていけば、世の中も随分変わってくると思います。

◇五木 寛之(いつき・ひろゆき) 
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昭和7年福岡県生まれ。25年早稲田大学文学部露文科中退後、放送作家などを経て41年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞を受賞。以後、『青春の門』『朱鷺の墓』『戒厳令の夜』など数々のミリオンセラーを生む。56年より休筆、京都の龍谷大学で仏教史を学び、60年から執筆を再開。小説のほか、音楽、美術、歴史、仏教など多岐にわたる文明批評的活動が注目されている。

◇稲盛 和夫(いなもり・かずお) 
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昭和7年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。34年京都セラミック(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、平成9年より名誉会長。昭和59年には第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任、平成13年より最高顧問。22年には日本航空会長に就任し、27年より名誉顧問。昭和59年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。また、若手経営者のための経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。著書に『人生と経営』『「成功」と「失敗」の法則』『成功の要諦』(いずれも致知出版社)など。

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