ビートたけしの類い稀なる才能を育んだ母の教育法とは

「笑いの天才」「映画の天才」と呼ばれ、芸能界を代表するタレントであるとともに、映画監督としても世界にその名を轟かせている北野武(ビートたけし)さん。その成功の影には、深い愛と熱心な教育で北野さんを育て見守り続けた偉大なお母さんの存在があったといいます。そんな北野さんのお母さんを巡るエピソードをご紹介いたします。

北野武の才能を育んだ教育

北野武は東京都の足立区で、父・菊次郎と母・さきの間に五男として生まれます。彼の本名である「武」という名前は、竹のようにどんなものにも耐えて、すくすく伸びてほしいとの願いを込めて命名されました。

武の母・さきは独自の教育論を持ち、教育を第一に考える女性でした。若い頃から頭の回転の速い女性だった彼女は、子どもたちの教育と成長を何よりも大切に考え、そのためには寸暇を惜しまず手を貸しました。さきは子どもたちが10歳になるまでは、毎晩欠かさず鉛筆を削り、ノートにきちんと学習の後が記されているかを確認していました。子どもたちが登校した後も、彼女は休まず子どものことを考えます。朝10時になると、学校へ足を運び、教室の窓から子どもたちが勉強する様子を見守っていたというのです。それほどに彼女は教育熱心な女性でした。

こんな彼女の熱心な教育が北野武のような奇才を育てたのです。

貧しかった北野家では、小さな裸電球の下のみかん箱のような机で、子どもたちが勉強をしていました。しかし、父・菊次郎が帰ってくると電球が明るくて眠れないと怒鳴ります。そこでさきがどうしたかと言うと、大きな懐中電灯と塩むすびを携えて、近所の街灯の下へ出かけていくのです。そこでしゃがんで本を読む子どもたちを、ずっと懐中電灯で照らしてたというのだから驚きです。教育熱心だった彼女のエピソードは他にも多く残っています。

武は高校卒業後、明治大学に入学しますが、次第に自分にしかできないものに挑戦したいと考えるようになり、大学を中退します。その後の彼はお母さんの期待をはるかに上回るような活躍を繰り広げていくのです。

武が幼少期に教育熱心な母に教えられて蓄えた教養や考える力は、タレント、映画監督、作家、教授など様々な分野にわたる活躍の礎となりました。母の存在があったからこそ、武の才能が育まれたのです。

30歳を過ぎて親を許せない奴はバカだ

そんな母・さきですが、武が「ツービート」として有名になり始めた頃から、お金を母に納めるよう、しつこく訴えるようになりました。武は母も金の亡者になってしまったのかと半分あきれていたそうです。しかし、後になって真実が明らかになります。

さきが亡くなる数か月前のことでした。武は軽井沢に母をお見舞いに行き、その帰り際に姉から包みを受け取ります。さきからだというのです。堤を開けた武は息を呑みました。それは彼名義の郵便貯金通帳と印鑑だったのです。

さきが武から小遣いとしてねだり受け取っていたお金は一銭も使うことなく、すべて彼のために貯金されていたのです。その総額は1千万円近くにも達していたそうです。さきはいつも、「芸人はいつ落ち目になるかわからない」と彼を案じていました。彼の人気がなくなっても困らないようにと、お金を貯めておいたのです。
 
彼はこの包みを握りしめ、涙が止まらなかったといいます。 武は自ら母のことが大好きだと公言しています。

「30歳を過ぎて親を許せない奴はバカだ」とも言っています。
 
自分に愛情と熱心な教育を与えた母の影響力は彼にとって、とてつもなく大きなものだったのでしょう。さきが入院しているときには頻繁に病室を訪れ、母の身を労ったといいます。

1999年8月、さきが亡くなったお通夜の記者会見で、武は「かあちゃん……」と絶句し、体躯をふるわせて涙を流しました。カメラや人目をはばからずに泣き崩れる彼の姿に、インタビュアーや視聴者ももらい泣きせずにはいられませんでした。
 
いかに彼の心の中で母の存在が大きかったかがよくわかる出来事でした。このように海よりも深い愛情と熱心な教育、心を尽くした母・さきの子育ては北野武の心に大きな影響を与え、類まれなる才能を育てたのです。


<本記事は『偉人を育てた母の言葉』(著・大坪信之/致知出版社刊)より一部抜粋したものです。『致知』には人間力・仕事力を高める記事が満載!詳しくはこちら

◇大坪信之(おおつぼ・のぶゆき)
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昭和38年福岡県生まれ。日本アイ・ビー・エム株式会社を経て、平成6年徳育教室(現・コペル)を設立。心の教育を志し、全国各地で子育てセミナーや子供の潜在能力を引き出すための教育活動、良好な親子関係を構築するファミリーダイアログなど、多様なオリジナルプログラムを開発実施。全国30教室、ゼロ歳から12歳まで約1000名の子が通う。福岡大学人間関係論非常勤講師、一般社団法人徳育学会会長、日本メンタルヘルス協会公認カウンセラー。

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