キッコーマン・茂木友三郎が心を鼓舞されてきた名言

 

醤油の国内トップメーカー・キッコーマン。世界100か国以上で販売され、中でもアメリカにおけるシェアは50%を超えるといいます。その躍進の牽引役となったのが、現・名誉会長の茂木友三郎さんです。茂木さんが次世代を担う若者たちに向けて語ったメッセ―ジとはいかなるものでしょうか。

仕事の原点は〝とことん惚れ込む〟

私の経営者としての人生が始まった原点は20代にある。

新卒でキッコーマンに入社し、24歳からアメリカのビジネススクールで2年間勉強したこと、29歳の時、希望していた醤油の国際化の仕事に携わる契機を得たこと、とりわけこの2つが中心的な存在となった。

留学当初、私はそのままアメリカの企業に就職するのも悪くないなと考えていた。いくつか誘いもあり、その気になればそれも可能なことだった。しかし、1961年の6月にMBAの学位を取得すると、帰国の途に就いた。これには1つ大きな転機があった。

渡米する前年にキッコーマンの販売会社がアメリカに設立されており、私は留学中の夏休みにスーパーマーケットで実演販売を手伝った。肉を醤油で味つけして焼き、それを小さく切って楊枝に刺し、試食してもらう。これがアメリカ人にとても評判がよかった。

私自身、それまでは醤油をバカにしていたというか、斜に構えて見ていた節があったのだが、ひと月以上毎日店頭に立つうちにその思いは一変し、醤油に惚れ込んでしまったのである。醤油は実に面白い商品だ。国際的に通用する可能性を秘めている。醤油を世界に広めていく仕事がしたい、と。

自分の担当している商品にとことん惚れ込む。これはどんな業界業種にも通底する仕事の原点ではなかろうか。

仕事のプロになるために大切なこと

「20代のうちに1つはスペシャリティー、強みを持つ」

これは私の経験を踏まえて、20代の皆さんにぜひお伝えしたいことである。噛み砕いて言えば、「あそこの会社には素晴らしい社員がいる」「あなたが欲しい」と市場価値がつき、他社からスカウトされるような存在になれ、ということだ。

では、スペシャリティーを身につけるために何が大切か。

いま目の前に与えられた仕事を一所懸命やる。これ以外にはない。どうしても合わないと思ったら、部署を替えてもらう、あるいは転職することもあり得るだろう。

しかし、移っても代わり映えしないことが大概だ。ゆえに、好き嫌いなどという私情を挟まず、与えられた自分の仕事に全力を注ぎ、超一流になろうと努力すべきである。

また、スペシャリスト、すなわち専門家になる上でもう1つ大切なのは、自分で勉強することだ。本を読むもよし、セミナーに行くもよし、それらの教えや周りの人からのアドバイスを素直に聴き、実践し、自分の仕事のツボは何かを早く気づくことが必要だと思う。

最後に、私自身が若い頃から心を鼓舞されてきた言葉を贈る。

「名を成すは毎(つね)に窮苦(きゅうく)の日に在り。事に敗(やぶ)るは多く得意の時に因(よ)る」

これは『酔古堂剣掃(すいこどうけんすい)』という古典金言集に出てくる一節。立派な仕事はいつも困難な状況の中から生まれてくる。逆に、いい気になった時に往々にして失敗する。

苦しい時に諦めたり、自暴自棄になったりするのは簡単だろう。しかし、苦しい時こそチャンスであり、そこで徹底的に努力を重ねていけば成功への道が開けることを忘れないでいただきたい。

☆本記事は月刊『致知』2018年7月号連載「20代をどう生きるか」を一部抜粋したものです。

☆月刊『致知』の好評連載「20代をどう生きるか」では、各界一流の方々の飛躍の原点といえる20代の頃の貴重な体験談と共に、次世代を担う若者たちへ勇気と希望溢れるメッセージ、人生や仕事に生かせる考え方・心構えなどを語っていただいています!

☆これまでにご登場いただいた主な方々 ※肩書は掲載当時

・鈴木茂晴(日本証券業協会会長)

・吉田忠裕(YKK会長CEO)

・葛西敬之(JR東海名誉会長)

・越智直正(タビオ会長)

・髙田明(ジャパネットたかた創業者)

・鳥羽博道(ドトールコーヒー名誉会長)

・加藤照和(ツムラ社長)

・道場六三郎(銀座ろくさん亭主人)

・大橋洋治(ANAホールディングス相談役)

・石原慎太郎(作家)

・宮本洋一(清水建設社長)

・堀義人(グロービス社長)

・清原當博(ホテルオークラ東京会長)

・大地康雄(俳優)

・兒玉圭司(スヴェンソン社長)

・島田精一(日本ユニシス相談役)

・牛尾治朗(ウシオ電機会長)

・童門冬二(作家)

・桜井正光(リコー会長)

・桜井章一(雀鬼)

・正田正治(商船三井最高顧問)

・北尾吉孝(SBIホールディングス社長) など

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