除草剤100万本ヒットを生んだアース製薬社長の決断力

国内虫ケア用品(殺虫剤)市場でトップシェアを誇るアース製薬社長に、42歳の若さで就任した川端克宜さん。入社した頃からトップ営業を走り続けていた川端さんは、2013年に存続の危機にあったガーデニング事業部を託され、見事再生へと導いた。そのヒット商品の一つが除草剤「おうちの草コロリ」で、いまでは累計100万本を超える同社の基幹商品となっている。川端さんは、危機に瀕した組織にどのように活を入れ、ヒット商品を生み出していったのか――。

社長の心意気に応えたい

川端さんは入社以来トップ営業を続け、35歳の時に最年少で広島支店長に抜擢、2011年には役員待遇大阪支店長に就任します。しかし「大阪の次は、東京支店長かな」と思っていた矢先、「会社のお荷物」と言われていたガーデニング事業部への転勤を告げられるのです。

左遷のような人事に、川端さんは当初「最悪だ」「どうしよう」と落ち込みますが、その気持ちを切り替えることができたのは、当時の大塚達也社長の次の言葉があったからだといいます。

「私はガーデニング事業を何とか会社の次の柱にしたいと思っている。しかしどうにもうまくいっていない。そこで川端にすべてを任せる。社内からも優秀な人材を集める。それでもうまくいかなかったら、事業を畳んでもいい」

その大塚社長の言葉に奮起した川端さんは、「社長はガーデニング事業を諦めてはいない、どうでもいいとも思っていない」「その社長の心意気に応えたい、せっかく縁あって入社した会社なのだから、自分が何とかしたい」と、ガーデニング事業部の立て直しに全力で取り組んでいくことになります。

反対するところに成功あり

川端さんが最初に取り組んだのは、園芸分野で一番大きな市場である除草剤でした。

除草剤は農耕地で使う農薬として登録しなければならないのが当時の業界の常識だったのですが、むしろ川端さんは子供やペットがいる家庭では農薬を使わない除草剤のほうが求められているのではないかと逆の発想をし、食品成分生まれの除草剤「おうちの草コロリ」の開発・販売を決めました。

ところが、ほとんどの社員が川端さんの提案に大反対。その時、川端さんは次のように考え、除草剤「おうちの草コロリ」の開発・販売を決断するのです。

「社員皆が『絶対売れない!』と反対でした。ただ、これまでこの業界で仕事をしてきた勘、手応えはありましたし、『反対するところに成功あり』といいますか、むしろ全員が賛成することのほうが、あまりうまくいかないという感覚があったのです。

 ですから、リーダーの自分が決意したことは言い切る、責任を取る、という思いで実行していきました」

そして、結果的に除草剤「おうちの草コロリ」はヒットし、予想を超える売り上げを記録。現在ではアース製薬の基幹商品となっています。

川端さんの決断から、リーダーとして自らの信じるところを最後まで貫くことの大切さを教えられます。


(本記事は月刊『致知』2018年5月号 特集「利他に生きる」の記事を再編集したものです)

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◇川端克宜(かわばた・かつのり)
昭和46年兵庫県生まれ。平成6年近畿大学卒業後、アース製薬入社。18年広島支店長、23年役員待遇大阪支店長。25年取締役ガーデニング戦略本部長として当時業績が低迷していたガーデニング事業の立て直しに尽力する。26年より現職。

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